軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

700.始まる最後の戦い

星屑フェス最後の大型クエストとなるレイドボス戦の会場は、ラフテリア西部に作られた特設会場。

広い草原には、たくさんの参加者たちが集まっている。

「この度は、レイドバトルにお集まりいただきありがとうございます!」

そこに現れたのは、運営の担当者。

大きな身振りと声で、参加者たちの視線を集める。

「星屑フェスのラストを飾るこの戦いは、閉会式までの時間での勝利が必須となります。生配信付きバトルの相手となるのは、こちらの――」

そう言って運営が、高く右手を振り上げた瞬間。

「「「ッ!?」」」

突然、爆破魔法に消し飛ばされた。

転がり倒れ、消えていく運営という予想もしない展開に、さすがに驚く参加者たち。

「む、あれは!」

アルトリッテが指を差す。

魔法で運営を消し飛ばしたのはなんと、オープニングで出て来た魔導士だった。

「ふふふふふ……はははははっ! 今度こそ私は、かの者の召喚に成功した……っ! 終わりだ! ようやくこの世界に終末がおとずれるのだぁぁぁぁ!!」

どうやら『かの者』の復活のため行動を続けた魔導士は、ついにその召喚を行える状況になったようだ。

「さあ、おいでください……っ! 黙示録の獣よ! そしてこの醜い世界に浄化の光を――――っ!」

魔導士の叫びと共に、足元に描かれる巨大な魔法陣。

噴き出す闇が広がり、ラフテリア西部を包む夜となる。

妖しく輝き出した魔法陣から、ゆっくりとせり上がってくのは巨大な四足の赤い竜。

七つの頭に王冠を乗せた異様は、見れば即座に大物であることが分かる。

魔導士はその恐ろしい姿に見惚れながら、プレイヤーたちに狂った目を向ける。

「まず貴様らからだ! 消え失せろ醜き人間どもォォォォォ――――ッ!!」

「ギャオオオオオオオオオオ――――ッ!!」

黙示録の獣が、身体を震わせるほどの咆哮を上げる。

「「いくぞ!」」

重なるグラムたちの声。

そして、星屑フェスの最後を飾る戦いが始まった。

「【ソニックドライブ】!」

「【ペガサス】!」

最前を取ったのはやはり、グラムとアルトリッテの二人。

【天馬靴】から生える光の翼で、地上を滑るような動きで進みそのまま跳躍。

「【ホーリーロール】!」

豪快な光の回転斬撃を、獣の胸元に叩き込む。

「【雷煌砲】!」

直後、迫り来る二つの頭を狙って放つ轟雷。

硬直する獣に対し、二人は一気呵成に出る。

「解放剣技【エクスクルセイド】!」

黄金の輝きをまといながら、アルトリッテが放つ聖なる光の刃。

地面から突き上がった聖光が、大きな爆発を巻き起こす。

「ゆくぞ! 【クインビー・アサルト】!」

七頭の獣が体勢を崩したところに、迫るのはグラム。

砂煙を上げながら放つシンプルな突きは、穂先から放たれた閃光が炸裂し、猛烈な衝撃を放つ。

速い二人が、見事に連撃を決めた。

「【ギガントハンマー】!」

ここに続くのは金糸雀。

手にしたハンマーが巨大化し、衝撃波と共に地を割るほどの一撃を叩きつける。

大きく弾かれた黙示録の獣。

反撃は大きな炎弾の三連発。

「【大車輪】!」

槍を回転させると、炎はかき消される。

「きたっ! 【セイントシールド】!」

続く尾の振り払いは、物理攻撃と派生スキルを大きくカットする防御スキルで対応。

二人は見事な防御を見せるが、大きく後退させられた。

しかし両者の間に生まれた隙は、前後を入れ替えることで埋める。

「いっくよー!」

元気に手を上げて、走り出すのはココ。

【ブーストブーツ】の速く長いステップによって、高速接近を図る。

「出番ですな! スワローちゃん!」

合わせて動き出すのは、錬金術師なーにゃの作り出したツバメ似のドール。

「【加速】」

その速度は素晴らしく、敏捷型のトップ勢にも追いつこうかというほど。

「【宙返り】【二連空閃】!」

跳躍から放つ二刀流の連撃は空刃を生み、獣の首元に斬撃を叩き込んだ。

「【アサシンダンス】!」

このドールもしっかり、前線で戦えるレベルまで仕上げているようだ。

着地から回転しながらの三連撃を決めたところで――。

「ココちゃん、頼みます!」

「おまかせあれ! 【ギガ・インパクト】――ッ!」

突き出された右の手甲から生まれた爆発が、付近の空気を揺らがせるほどの衝撃を生み出し、黙示録の獣を弾き飛ばす。

まだ、これだけでは終わらない。

「【打撃強化】」

再び体勢を崩された獣に駆け込んで行くのはシオール。

腕力系スキルの次撃威力を向上させる補助を自らに施し、メイスを振り上げる。

「【振り降ろし】です!」

基礎スキルのシンプルな叩きつけは、獣の頭の一つを叩きつけた。

最後のシオールの一撃はどうしても踏み込みが必要なため、下がるための時間が必要となる。

ここで活きるのがローチェだ。

「【サンダーウィップ・スプレッド】!」

振り降ろしたムチが雷を帯び、電撃を叩きつけにいく。

直後、豪快な雷光が辺り一面を駆け抜けていった。

これによってシオールは、下がって体勢を立て直すことに成功。

しかも打ち合わせることなく一か所を集中して狙っており、最後の電撃ムチで頭の一つを消し飛ばしてみせた。

「さっすがローチェちゃん! われながらお見事っ!」

あざといウィンクを決めるローチェ。

「さすがトップだな!」

「すげーっ! これは完璧だ!」

二つの前衛組が交代で前に出て戦う形式は、見事な連携を見せた。しかし。

「……減りが、少ない」

ローランはいぶかしむ。

トップたちの攻撃が連続して入ったにしては、ダメージは1割どころか5%に届く否かといったところ。

さらに機能しなくなった頭の一つが、あっという間に回復していく。

その目は今まさに攻撃を終えたばかりの前衛チームに向かい、七つの頭が同時にその口を開いた。

「「「ッ!!」」」

放たれるのは、3連発の炎砲弾。

しかし7つの頭が行えばそれは21連発となる。

一つ一つが自動車ほどのサイズを誇る炎砲弾を、各頭が狙いを定めて放つ。

トップの面々はこれをしっかり回避するが、獣は距離を詰めてくる。

「くるぞっ!」

アルトリッテの叫びの直後、7つの頭が喰らいつきにくる。

「【ペガサス】!」

「【ソニックドライブ】!」

先頭二人が、これを引き付け回避。

しかし獣はそのまま尾を輝かせ、振り払いへ移行。

「くっ!」

尾に灯る輝きにも判定あり。

これを金糸雀、シオール、アルトリッテは防御で対応。

各自2割前後のダメージを受ける。

獣は止まらない。

プレイヤー側が『引き』の状態になるや否や、三つの頭が同時にブレスを放つ。

混ざり合ったブレスの範囲はとにかく広く、中距離にいたローチェですら大慌てで回避にさがるほど。

「まずいかもっ!」

ココの嫌な予感は的中。

広がる猛烈な火炎がココ、シオール、スワローをかばったなーにゃのHPを3割ほど削り取った。

七つの頭の連携によって、攻撃を仕掛けるタイプの敵。

一体だが、攻撃は七回。

なかなか経験しない戦闘方式だ。

「……今度は、七つ」

マリーカの言葉に、ローランがハッとする。

先ほどのブレスと似たモーションで、今度は七つの頭全てがその口内に炎を輝かせ始める。

このままではダメージを受けたばかりのココたちは、回避が間に合いそうにない。

「前衛組は下がって! 遠距離組は徹底して攻撃を!」

「アビヤードちゃん! 【極天白雪砲】!」

「イフリート、【フレイムキャノン】!」

「……【霊鳥鳳火】!」

「【裂空一矢】【バーストアロー】!」

キュービィの白竜が白氷の波動砲を、アトラクナイアのイフリートが巨大な炎球を放つ。

さらにローランの矢が刺さり炸裂。

「いけいけ! 俺たちも続くんだ!」

ここに参加者たちの【槍投擲】などが突き刺さる。

中遠距離組の一斉攻撃でどうにか獣の体勢を崩し、ギリギリで七体ブレスのせき止めに成功。

「今のうちに後退を!」

生み出した時間でどうにか、なーにゃたちが後退を開始する。しかし。

消し飛ばされた運営が立っていた半壊のステージに現れた魔導士が、杖を掲げる。

すると中距離付近に生まれた無数の魔法陣から、現れるキングオーガと子分のオーガたち。

「中ボス級の増援までやってくるのですな……!」

「【聖刃乱舞】!」

下がって来たばかりのシオールが、メイスを輝かせる。

7連の光の輪による攻撃で、どうにか道を作ったところで――。

「中ボス級は、俺たちで片付けるんだ!」

「了解っ! 【挑発】!」

参加者の重戦士がキングオーガたちを呼びつけ、獣との戦いに紛れ込んでしまわないよう誘導。

「【アクアストライク】!」

「【フレイムシェル】!」

「【ライン・エクスプロード】!」

そこに闇の使徒応募勢と黒少女が、一斉に魔法を叩き込む。

こうして隙ができれば、あとは近接プレイヤーたちが攻勢をかけるだけ。

見事に敵を引き付け、戦線の崩壊を防いでみせた。

「【グングニル】!」

ここで反撃の先手を打ったのはグラム。

投じた神槍は空を裂き、そのまま獣の足先に刺さり炸裂。

「【ソニックドライブ】! 【雷光震砲】!」

隙を作ったところに駆け込むと、弾けるほどのエネルギーを収束させた手を突き出す。

轟雷が放つ猛烈な輝きが、獣を弾き飛ばした。

「【ペガサス】! 【グランドクロス】!」

さらにグラムを跳び越えたアルトリッテの足元から立ち昇る、黄金の輝き。

天を焦がすほどの巨大な十字聖光が、突き上がって獣を焼き尽くす。

「……これ、HPとんでもないことになってるよ。間違いない……っ!」

高火力のスキルを連続で叩き込んだにもかかわらず、これまでの全てでようやく1割程度という耐久性に、唖然とするローラン。

「「「ッ!?」」」

「ガアアアアアアアア――――ッ!」

直後、獣は残像を残す高速移動から、すさまじい咆哮を放った。

そして広範囲硬直スキルが決まった直後。

「お、おいっ……!!」

聞こえてくる、激しい水音。

「「「うわああああああああ――――っ!!」」」

草原に生まれた濁流が、いまだ身動きの取れないプレイヤーの一部をまとめて洗い流した。

「こいつ……相当強いぞ!」

「どういうことだ! これまでのレイド系クエストでも見たことのないレベルではないか!」

グラムとアルトリッテが、驚きの声をあげる。

参加者たちが見事な戦いを見せ、トップ勢まで集まっていてもなお厳しい相手。

「……押されてる」

ローランにして、不利を感じるほどのレイドボス。

「これは、さすがに強すぎじゃないか?」

つぶやくプレイヤーの声がきこえてくる。

驚異的なHPに7つの復活する頭を用いた連携、そして広範囲高火力の攻撃。

どうやら『黙示録の獣』は、かつてない強敵のようだ。