作品タイトル不明
579.街を駆け抜けますっ!
「……チッ、誰が来たのかと思えば」
強盗を繰り返す武術家集団を、スキル武器で楽しく倒したメイたち。
そこにやってきたのは、白とマゼンタピンクの混じった長い髪を結んだ、鋭い目つきの女性。
「姉弟子……もうこんなことやめてください」
どうやらここは、シオン兵長の先輩が開いた道場のようだ。
「相変わらず腑抜けたこと言ってやがんなぁ。アタシを止めたいなら……実力でやってみな!」
そう言って、早い踏み込みでシオンに迫る豪華な黒拳法着の女。
「くっ!」
拳打から繰り出す鋭い蹴りが『気』を放ち、シオンを大きく後退させる。
「どうしたシオン! ご自慢の拳を見せてみなァァァァ!」
吠える女は、守りに回るシオンに拳を浴びせ続ける。
そしてシオンが足を二歩ほどフラつかせたところで、拳に強い気をまとわせた。
「【覇道突拳】!」
しかしシオンも、この瞬間を待っていたとばかりに早い踏み込みを見せる。
「【八卦錬掌】!」
軸をずらして直撃を防ぎつつ、叩き込む掌底から放つ気の爆発。
「ぐっ……!」
「ああああああ――――っ!!」
シオンはその場にヒザ突き倒れ、女は道場の壁に叩きつけられた。
戦いは相討ちに終わったかのように思われた。しかし。
「そいつを持っていきな! 絶対に取られんじゃないよ!」
「はっ!」
駆け込んで来た一人の男が、白虎像を抱えて道場の外へ走り出した。
どうやらここからは奪還クエストになるようだ。
男はそのまま屋根に飛び乗り逃げていく。
「追いかけましょう!」
「……す、すまない。今の戦いで身体が動かない……後を頼みます!」
シオンは後を追って走れる状態ではないらしく、ここからがプレイヤーの挑戦となる。
「りょうかいですっ! 【バンビステップ】!」
「【加速】」
念のため武器が持ち出せないことを確認したレンも、【浮遊】で後を追う。
メイたちが屋根に上がると、男はすでに街中へと差し掛かっていた。
「お前ら! こいつらを足止めしろ!」
「「「はっ!」」」
男は見事な跳躍を繰り返して、建物がひしめく街の中へ。
すると、ならず者武闘家たちが屋根へと上がってきた。
「ここで時間を取られちゃうと、追跡失敗になるだろうから気を付けていきましょう!」
「りょうかいですっ!」
そんなレンの言葉を受け、メイは三階建て民家の物干しざおに手を伸ばした。
そして屋根を駆けて来る男たちに向けて、大きく踏み込み一回転。
「【フルスイング】!」
「「「うおおおおおお――――っ!?」」」
狙い通り、まとめて全員を屋根から叩き落した。
武闘家たちは二階の物干しざおに引っかかったり、一階飲食店のテーブルに落ちたりと散々な状態でリタイアとなる。
「なんだあれ、すげえ!」
「あのクエストってHP減だけじゃなくて、落としてもいいのか!」
それを見かけたプレイヤーたちが、早くも歓喜の声を上げる。
「ッ!?」
少し離れた四階建ての建物の上から放たれた【気弾】に気づき、回避するメイ。
「高速【誘導弾】【フリーズボルト】!」
しっかりレンが仕留めて、笑みを一つ。
「【加速】」
ここで入れ替わるように前に出たツバメは、続けざまにやってきた男たちを引き付ける。
「【紫電】! メイさんお願いしますっ!」
「せーのっ! 【フルスイング】っ!」
「「「うわああああああ――――っ!!」」」
ツバメが真上に跳んだところで、再びメイが物干しざおの振り払いで男たちを豪快に払いのける。
「もう一回【跳躍】!」
ツバメは着地と同時に再ジャンプ。
「それぇぇぇぇーっ!」
ならず者の第三陣も、二回転の振り払いでまとめて排除。
「すっげー! やれやれメイちゃん!」
「楽しそうだなおい!」
そんなとっさのコンビネーションに、観戦プレイヤーたちが拳を突き上げた。
連携が見事に決まって笑い合ったメイとツバメは、逃げる男を追いかける。
見えたのは、木製の外付け階段を昇ってくる男たち。
「【ゴリラアーム】!」
メイは屋上に並んだ水瓶を抱えると、ボーリングの要領で全力投擲。
「それーっ!」
「「「オオオオオオオ――ッ!?」」」
水瓶にぶち当たった男たちは、階段を転がり落ちていく。
そのまま階段からはみ出して、地面にバラバラと落下した。
メイたちは川を挟んだ二つの建物の間にかけられた橋の、狭い屋根の上を駆ける。
そこに立ちふさがる形で現れた二人の男は、これまでとはタイプが違う。
速い踏み込みで、いきなり槍を突き出してきた。
「おっと!」
男は長槍を突き、突き、振り回す。
「うわっうわっうわわっ!」
狭い橋の上で使う長物は、やはりやっかいだ。
「せいっ! 【旋回撃】!」
大きな踏み出しから放つ、大きな薙ぎ払い。
その軌跡を光が追いかけ、攻撃判定を生み出す。
「【跳躍】」
「【アクロバット】!」
明らかにプレイヤーの落下を狙った攻撃を、二人はジャンプで回避。
男は「もらった!」とばかりに槍を引く。しかし。
「【投擲】」
「ぐああっ!?」
狭い場所ゆえに横への回避もできず、【雷ダガー】が直撃。
痺れた男はその場に硬直する。
「【フルスイング】!」
「うああああーっ!」
続くメイの一撃に男は弾き飛ばされ、川の水面を三回跳ねてダウン。
「ここは通さねえぞ!」
槍使いの背後にいた男が持つのは大盾。
その姿勢を見るに、防御で時間を稼ぐタイプのようだが――。
「【カンガルーキック】」
「なっ!?」
それをあざ笑うかのような前蹴りで、防御を崩す。
「【四連剣舞】!」
続くツバメの放つ剣舞は、なんと五連発。
四発の剣撃の後に【隠し腕】が【アクアエッジ】で放った水の刃が、盾の男を弾き飛ばす。
「うあああ――ッ!!」
転がった盾男はそのまま屋根から落下して、路上点心屋の蒸籠を派手に弾き飛ばした。
「【隠し腕】、やはりスキル武器も使えるようです」
「……すっげー! 何だよこのアクション!」
「最高じゃねえか!」
「四連とは一体……」
大迫力のアクションに、いよいよ盛り上がるプレイヤーたち。
何事かと駆けつけてきた者たちも、鳳国に隠されていた『アクション要素』に夢中になり始める。
「ちょうどいい!」
白虎像を抱えて、男は逃げる。
するとその下に一台の馬車がやってきた。
「はあっ!」
男はそのまま、黒塗りの木材を編むようにして作られた幌に飛び乗る。
どうやら、道場仲間の馬車のようだ。
見れば近くに馬を貸すための厩舎があり、ここからはさらに馬で追いかけろということのようだが――。
「はいそこまで! 【氷塊落とし】!」
レンは動き出そうとする馬車を、一時的に足止め。
「メイ、おねがいっ!」
「りょうかいですっ! 【バンビステップ】からの【ラビットジャンプ】!」
後を追いかけてきたメイは三階料理店の壊れた看板をつかみ、屋根の上から大ジャンプ。
「【アクロバット】!」
そのまま空中で華麗に回転すると、看板を力強く振り上げる。
「からの――――っ! 【フルスイング】だあああ――――ッ!!」
「なにィィィィ――ッ!? うおおおおっ!?」
メイの一撃は荷台を叩き割り、馬は大慌てで逃げ出していく。
「ちくしょう……っ! 覚えとけよ!」
地を派手に転がった男も、白虎像を残して逃げ去って行ったのだった。
「「「うおおおおおおおお――――っ!!」」」
「ちょっと待て! ここのクエストってこんなにすごいのか!?」
「なんだよこれ! めちゃくちゃ面白いじゃねえか!」
鳳に隠されていたダイナミックアクションに、盛り上がるプレイヤーたち。
実は他にもこの手の類のクエストはあり、思い当たる鳳住人たちが早くも乗り気になる。
こうしてメイたちはその圧倒的なアクションで、クエストを無事クリア。
鳳国に、新たな流行を生み出してしまったのだった。