軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

574.ウーバーメイちゃん

「ありがとう! キミたちのおかげで無事ピークタイムを乗り越えられたよ!」

全てのオーダーをミスなく高速で片付けたメイたち。

さらに店主のミスまでカバーした三人に、感謝の声をあげる。

「さてピークも終わったし、後は配達を……しまった! 店員が足りないということは配達員も足りないんだ!」

大げさに頭を抱える店主に、笑うメイたち。

どうやらクエストはまだ続きそうだ。

「さすがだなぁ。外配達は成績上位だけだよな?」

続く展開に、感嘆する観客たち。

「先日までカフェ店員、その前は三日月島のダイニングバー、さらにメイドもやってたものね」

「おてのものですっ」

給仕コンビネーションのでき上がっているメイたちに、死角なし。

「すまない。点心の配達を頼めないだろうか」

「構わないわ」

「はいっ」

「街を見るチャンスですね」

そんな追加クエストも、もちろん即受諾だ。

「行き先は三か所。持って行ってもらう蒸籠の数は計100個だ!」

「おまかせくださいっ!」

赤の組ひもで結んだ髪が、元気よく揺れる。

「どれも熱々の内に頼むよ!」

パーティの人数に対して割と厳しい量を要求されるこのクエストは、時間制限もあり。

本来、何度も店と配達先を往復して時間と戦うことになるのだが――。

「マジか……」

「こんなの初めて見るぞ」

ざわつき出す観客たち。

「それでは行ってきます!」

メイが持った蒸籠は、なんと左右の手に30段ずつの計60段。

可愛いチャイナドレス少女が、見上げるほどの蒸籠を持って走り出す姿にあっという間に視線が集まる。

「【ラビットジャンプ】!」

行き先は視界にアイコンで表示済み、メイはさっそく屋根の上へ。

高すぎる【腕力】とバランスを取る【技量】で、蒸籠を崩すことなく駆けていく。

「……ん?」

鮮やかな鳳の街。

緑の瓦の並んだ屋根に上がり、落ち着いたと思ったところに見えたのは、空に散らばる無数の斑点。

「と、と、鳥だぁぁぁぁ――――っ!!」

点心を狙いに迫る大量の鳥たち。

野生剥き出しで、いっせいに蒸籠に集りだす。

「うわっ! うわわっ!」

容赦のない特攻を見せる鳥たち。

「待ってー! これはお客さんのところに届けないといけないんだよーっ!」

ピタリと止まる。

その光景に「あれが野生児ちゃんの力か……」と、追って来た観客たちが驚きの声を上げる。

だが、これだけでは終わらない。

「いや、まだ終わってないぞ!」

聞こえた声に視線を上げると、迫り来る鳥型のモンスター。

どうやらまとめて持っていくタイプのプレイヤーを叩くために、付近を周回していたようだ。

両手がふさがり屋根の上。

実は蒸籠を置いてもいいのだが、屋根と言えど足元に置くのはなんとなく「悪いな」と思ったメイ。

モンスターが滑空してきたところを、しっかり待って回避。

さらに旋回して戻ってきたところをバックステップでかわす。

「「「お、おおおおっ」」」

その度に揺れる蒸籠塔に、思わず声をあげてしまう観客。

だがメイは、ただモンスターの接近を避けていたわけではない。

三度目の旋回攻撃は、翼を広げた『攻撃』だ。

ここで反撃を狙う。

「いーちゃん! お願いしますっ!」

メイの肩口に現れた白のイタチが、放つ突風。

その威力は高く、飛び込んで来たモンスターは飛行の軌道を強制変更。

体勢を直すことができず、そのまま付近の四階建ての壁にめり込んだ。

「えへへっ、ありがと」

肩に戻ってきたいーちゃんと共に、メイは五重塔のような建物の屋根を飛び上がる。

「お待たせいたしましたーっ!」

そしてなんと、そのまま屋根から蒸籠を受け渡し。

見事に配達を成功させたのだった。

一方その頃、10段の蒸籠を片手で持って配達に向かっていたレンは、盗賊たちに追われていた。

「……わ、私だけシューティングなんだけどっ!?」

鳳の南西部はやや治安が悪い。

蒸籠を持って駆けるレンを見つけた五人組の盗賊が、差し出すよう要求。

レンは追って来る早い盗賊たちの投げナイフ攻撃を、【低空高速飛行】でかわしつつ移動する。

「【連続魔法】【ファイアボルト】!」

【夜風のローブ】によって、飛行しながら空いた手で魔法を放つ。

「当たるかっ!」

しかし敵も動きの速い盗賊たち。

「「【乱投擲】!」」

これをかわしての反撃は、ランダムな方向へのナイフ一斉投擲。

「っと!」

二人がかりの【乱投擲】で飛び交うナイフを、必死に避ける。

「【ファイアウォール】!」

すぐに道を炎の壁で塞ぎ、そのまま高く浮遊。

こうなればもう、あとは一方的。

「せっかくだし、【ヘクセンナハト】の試し打ちをさせてもらうわ!」

レンは新装備の杖を取り出して振りかぶる。

「【フレアストライク】!」

「「「うおおおおおお――――っ!?」」」

十字の閃きと共に、放たれる魔法。

盗賊たちのど真ん中に向けて放った炎砲弾は火力を大きく向上し、灼熱の豪炎弾に変わった。

「……すごいわね。シューティングならボムって感じの威力だわ」

炸裂と同時に巻き上がる盛大な爆炎。

全員まとめて吹き飛ばされた盗賊たちに「いけるわ、これ」と歓喜の笑みを見せ、レンはそのまま空を行く。

無事たどり着いた配達先。

その家の敷地に入ったところで――。

「そいつを寄こせーっ!!」

待ち伏せていた最後の盗賊が飛び掛かってきた。

「っ!?」

突然のことに、レンは慌ててバックステップ。

「【ファイアボルト】!」

飛び掛かりをどうにかかわして反撃に出るが、盗賊も負けじとこれを回避。

一気に距離を詰めてくる。

「ああもうっ!」

その詰めは早く、ここからの魔法は間に合わない。

するとここでレンは、スキルでも何でもない【蹴り】を選択。

「ぐっ」

振り上げた足が見事に盗賊のあごに直撃。

HP自体はかなり低く設定されていたようで、一撃必殺となった。

「「「おおーっ!」」」

黒のチャイナドレス。

その長い裾と深いスリットのせいで異様にカッコよく決まり、あがる歓声。

「これはこれで……ちょっと恥ずかしいわね」

こうしてちょっと照れながら、レンも無事に配達を終えたのだった。

一方ツバメは、白の漆喰で作られた壁に木の柱。

吊り下げられた提灯が雰囲気を醸し出す街の中を進んでいく。

左右合計30段の蒸籠は、なかなかに大変だ。

「ッ!!」

木製の橋を渡っている際に向けられた視線を感じ、即座に辺りに視線を走らせるツバメ。

本気で駆ければ、追いつけるものなどいない。

そんな超加速アサシンの前に現れたのは――――子猫を抱えた一人の少女。

子猫は足元に「ちょうだい」とやって来て、少女はお腹を鳴らしている。

「こ、このやり方はズルくありませんか……?」

ツバメだけ急に『精神攻撃』を喰らって、蒸籠ではなく心が大きく揺らぐ。

少女から向けられる、哀し気な視線。

懸命に鳴く子猫の、うるんだ瞳。

「ですが、私は負けません」

しかしそこは冷徹にして職務第一のアサシン。

蒸籠の点心には、一切触れさせない。

欄干にそっと蒸籠を置いたツバメは、どこかで休憩時間でもあった際にと買っておいたゴマ団子を取り出す。

予想通り、ここは代用のアイテムがあれば問題ないようだ。

そのままクールに去ろうとして、やっぱり戻ってきて子猫をひとしきり撫で、少女もひとしきり撫でた後、満足そうに配達へ戻る。

こうして三人は見事、ノーミスかつ最短で配達クエストを一発攻略したのだった。