軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

529.神官と夜の聖教都市

「高名な魔法剣士に悪霊が憑りつくという最悪の状態を、無事乗り越えてみせるとは……」

悪霊に憑りつかれた神殿騎士を無傷で解放。

さらにシスターまでノーダメージで守り切ってみせたメイたちに、悪魔祓いは驚きの声を上げた。

「助かった。あの恐ろしい悪霊を片付けてしまうとは、なんと強靭な冒険者たちなんだ……!」

立ち上がった神殿騎士も、喜びと共に感謝を告げる。

「まあ、途中から悪霊よりも恐ろしいアサシンとの戦いになっていたけどね」

「ツバメちゃん、速かったねぇ」

高速アサシンの動きを思いだして、二人は苦笑い。

「ご迷惑をおかけしました。身体は動かず、NPCゆえに動きは大雑把。やきもきしてしまいました」

「……あれで雑だったって言うの?」

【リブースト】の超加速と迫る【雷光閃火】の鋭さは、本来もっと苛烈。

ツバメに狙われる側の脅威は、かなりのものだ。

「これだけの力量を持つ冒険者……皆さんを神官様に紹介させていただけないだろうか」

「それは良いな。神官様はずっと力のある者を探していた。これだけの方々なら間違いないだろう」

「悪霊クエストの結果次第で、続く展開でしょうか」

シスターが無事かつ、神殿騎士も無事。

仮に生き残ったとしても、重症の場合はケガの治癒が優先となり始まらない展開。

実はかなり、難易度の高いシナリオだ。

「それでは私は夕食の用意をして、雨漏りを直して、カーテンの補修をして、イスとデスクの修理をしなくてはっ。皆さん、ありがとうございましたーっ」

そう言ってシスターは頭を下げると、忙しそうに教会へと戻っていく。

「我々はさっそく、神官様のもとに向かいましょう」

「これだけの力量を持った冒険者たちだ。神官様も驚かれるだろうな」

メイたちは神殿騎士と悪魔祓いに連れられて、神殿内の二階へと向かう。

アルティシア聖教の紋章である、先割れの十字架を中心に作られた祭壇。

その左右には、鮮やかな紋様の描かれた垂れ幕が飾られている。

祈りをささげているのは、白のローブに豪華な肩掛けをし、縦に長い金の冠を載せた中年の男。

銀色のくるくるとした髪に、飾りの美しい黄金の杖を手にしている。

「神官様」

「おお、無事だったのですね! これは良かった! この危機に何かできないかと、私も武器を探していたところです」

振り返った神官は、神殿騎士を見て安堵の息をついた。

「神殿騎士の中でも特攻隊長と呼ばれるほどの剣士である貴方が悪霊に憑かれたと聞き、犠牲も止むを得ない状況になってしまうのではないかと危惧していたのですが……」

「はい。私も厳しい状況を覚悟しておりました。ですがこの強き冒険者たちが悲惨な状況を救ってくれたのです」

悪魔祓いがそう言うと、神殿騎士が続く。

「私の剣をさばき、悪霊を見事に押さえ切ってみせた素晴らしき才を持つ戦士たちです。そこでぜひ、神官様にお力を貸して欲しいとお願いしていたところでございます」

「なんと。神殿騎士の中でも高い能力を持つ貴方の剣技を押さえてみせたと……これは頼もしい」

神官は「ありがたいことです」と、大きくうなずいた。

「私はアルティシア聖教の神官を務めている、ザケルドと申します」

「メイですっ!」

「悪霊事件の解決は本当に助かりました。ですがアルティシアには他にも様々な危機の気配があるのです。ぜひともそのお力を貸してはいただけませんでしょうか」

進み出した新たな展開に、うなずく三人。

「どのような問題が起きているのですか?」

真剣な神官の顔に、ツバメが問いかける。

「――――サバトです」

そしてレンが白目をむく。

「さばと?」

「メイさんが言うとなんだか可愛い感じになりますね。要は悪魔を崇拝したり、妖しい儀式を行う集会です」

「なるほどー」

「先日街で魔法陣が見つかりまして、どうやら一部の魔導士が召喚の儀式を行っているようなのですが……」

「やっかいなものを召喚されてしまう前に、潰しておきたいってところかしら」

「そうなります。彼らがどのような悪事を行い、またどのような形で障害となるか分かりません。魔法陣の大きさや術式を見ても、侮れないレベルとなってきているのです」

「舞台は当然、夜になるわね……」

「はい。彼らは夜な夜な街の中で儀式を行っているようです。お願いしたいのはその解散。もし邪悪なるものが召喚されてしまった時は、討伐をお願いします」

「りょうかいですっ!」

元気に応えるメイ。

そしてアルティシアに、夜がやって来た。

聖教都市アルティシアの夜。

各所に置かれた石柱に灯る炎が、神殿の街を照らし出す。

「きれいだねぇー」

神秘的な雰囲気に様相を変えた街を見ながら、大通りを進む三人。

ゲームの特性上、夜になったからと店を閉めるわけにはいかない。

そのためランタンを置き仕事を続ける武器店などは、濃い橙の光に照らし出されている。

この街を拠点にしているプレイヤーも、そんな世界観に魅せられているのだろう。

皆とても楽しそうだ。

「現代では遺跡になってしまっているような神殿も、当時はこんな感じだったのでしょうか」

「そう考えるとロマンあるわね」

「本当だねぇ。こんな世界でレンちゃんが戦う姿はカッコイイだろうなぁ」

「間違いなく、数か月前だったら燃えていたでしょうね……しかも街を闇に落とす側で」

苦笑いを浮かべながら歩く神殿の街。

輝く炎によって照らされた部分は、とても魅力的に見える。

だが当然、光が届かない場所には闇が生まれる。

「……ん?」

そんな暗闇の中に潜む異変も、【夜目】は見落とさない。

メイはさっそく、手掛かりに気づいたようだ。