軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

499.新海域とセイレーン

海に出た海賊船の一行、メイたち、そしてエルダーブリテンから追って来たプレイヤーの一団。

集まった船が向かうのは、前人未到の新海域だ。

「聞いた話では、エルダーブリテン関連のお宝へ向かうクエストって話だ」

「それってもしかして……」

「【エクスカリバー】とかの可能性もあるぽよか!?」

「何せあのメイちゃんたちだからな! あり得るぞ!」

「すごいことになりそうですね。い、いざとなったら私も操舵を――」

「「「やめとけー!」」」

追って来たプレイヤー船も、迷子ちゃんを引き留めつつ船を進める面々。

新海域へと続く道の途中、最初に気づいたのはやはりメイだった。

「何か聞こえる……これ、歌声だよっ!」

そして、異変が起こり始める。

「なんだ……急に眠くなってきたぞ」

「しまった、もうやつらの生息地か!」

「落ち着け! 気を……しっかり……持って……」

強烈な眠気に、バタバタと倒れ伏していく海賊たち。

【睡眠】の効果は視覚と聴覚が停止し、ダメージを受けるまで起きられないというもの。

そうなれば当然、船の操縦もできなくなってしまう。

「セイレーンの声量とんでもないわね。この辺の海域全部に届いてるんじゃないの?」

「【海鳴りの耳当て】を使いましょう」

メイたちはすぐに、手に入れたばかりの【海鳴りの耳当て】を装着。

「まさかあれ、セイレーンか?」

見えてきたのは、海上に突き出た岩。

そこに集って歌うのは、上半身が美女、下半身魚の魔物が五体ほど。

「ヤバい! 視界が閉じてくぞ!」

「睡眠か! ここで眠っちゃうのはさすがにマズいぞ!」

後追いのプレイヤー陣も、急激な状態変化に慌てふためき出す。

「お、おい待て! これ耳を塞げば歌の効果を軽減できるぞ!」

「ナイスぽよ!」

「これならどうにか進めそうじゃないか」

「でも……それならどうしてここから先に進めてなかったんだろう」

「分かった! 耳をふさいだままだと、戦えないからだッ!」

「「「うおおッ!?」」」

一帯に集まって来たのは、魚人の化物たち。

船の上に飛び上がってきたマーマンは、手にした古槍で襲い掛かる。

「「「うおおおおーっ!?」」」

その一撃は強力で、すでにかなりの人数が眠りに落ちている海賊たちは次々に落船。

「ぽよ!」

耳を塞いでいる風の形状になったスライム。

その状況でもタックルは可能なことに気づいて、【砲弾跳躍】でマーマンを弾き飛ばす。

「いけ管狐たち! ここは従魔に任せるのが一番なんだろうけど……こいつら結構強いぞ……っ」

同じく耳を塞いでいても戦える従魔士も、炎を操る狐たちを使って応戦するが形勢は不利。

「うおおっ!?」

船を超える大ジャンプを見せたマーメイドが、水の弾丸魔法を叩き込んで海中へと消えていく。

「なんて恐ろしい海域だ!」

「ここが通れない理由はこれか……っ!」

両耳をふさいだままではとても対応しきれない敵のコンビネーションを前に、海賊もプレイヤー組も苦渋の表情を見せる。

だが、これだけでは終わらない。

「……それだけじゃ、ないみたいだぞ」

「マジかよ……」

遠く見えるのは、巨大なウミヘビ。

シーサーペントの登場に、プレイヤー船はいよいよ愕然とする。

「【加速】【リブースト】! 【電光石火】!」

そんな危機的状況の中で、いつもの豪快な戦いを見せるのはメイたち。

サビた槍の攻撃をすり抜け、ツバメが斬撃を叩き込む。

その隙を狙って海から飛び上がり、今まさに船に乗り込もうとしたマーマンを――。

「【フルスイング】!」

メイがそのまま海中に叩き込む。

「むははははっ! バレーのブロックのような豪快さだったな!」

「もう一回! そーれっ!」

「……その掛け声はサーブ」

再びマーマンを海に叩き返したメイが、笑いながらアルトリッテの背を指させば――。

「【ホーリーロール】!」

それが『背後に迫る敵アリ』の合図と気づき、放つ回転撃がマーマン二体を消し飛ばす。

そんな船での近接戦をあざ笑うように、海から飛び出し魔法を放って帰っていくマーメイド。

「高速【誘導弾】【連続魔法】【ファイアボルト】!」

「……【霊鳥乱舞】」

逃がさない。

誘導のかかった炎弾がマーメイドに炸裂し、霊鳥たちが範囲攻撃で一網打尽にする。

「「「うわああああああ――――っ!!」」」

上がった大きな悲鳴は、海賊船団から。

シーサーペントの長い尾が一隻の眠れる海賊船を叩き割り、余波を受けた付近の船の海賊たちが海に落ちる。

眠りこけている海賊の船はもはや、ただの的だ。

巨大ウミヘビは海上に顔を出すと、大きく身をのけ反らせた。

「あれ、絶対に私たちを狙って来る!」

レンは即座に舵を取り、回避に動き出す。

吐き出された猛烈な水の砲弾を、早い舵取りで掻い潜った。

「レンちゃんナイスーっ!」

「お見事です!」

悪徳貴族船はきっちりノーダメージ。

三人はいつものように安堵の笑みを向け合う。

一方水弾を喰らった海賊船は半壊し、プレイヤー船はマストを一本へし折られた。

「ちくしょうマストが! それじゃなくても海の戦いは制限が多くて不利なのに、あんなのとまでどう戦えって言うんだよ!」

「この海域が今まで誰にも通過できなかったのは、こういう事だったんだな……!」

「メイ、お返しはお願いね」

「りょうかいですっ!」

悲鳴をあげる後追いプレイヤーたち。

一方マーメイドの強烈な水弾をかわしたメイは、船に上がってきたマーマンを木彫りのブーメランで叩き、叩き、叩いてから三回転。

「せぇぇぇぇの! それぇぇぇぇぇぇ――――っ!!」

巨大なブーメランが、海上を一直線に飛んで行く。

「な、なんだあれ……」

海の王者のような巨大な敵に木彫りのブーメランで挑むメイを見て、唖然とするプレイヤー一同。

「ギャアアアアアアアア――――ッ!!」

その一撃でシーサーペントが、飛沫をあげながら倒れてさらに呆然。

「す、すげえ……」

「メイちゃんが、デカい木彫りのブーメランでウミヘビを」

「見るぽよ! メイさんがとんでもない攻撃をしてるぽよ!」

「ううーん、メイさぁん……」

スヤスヤの迷子ちゃんを揺り動かしながら、跳ねるスライム。

「このままセイレーンもお願いできる?」

「おまかせくださいっ!」

元気に応えて船を飛び降りたメイは、そのまま海面に。

「【アメンボステップ】!」

飛沫をあげながら、余裕の様を見せつけているセイレーンのもとへと駆けていく。

「【ラビットジャンプ】!」

そして岩島に腰を下ろしたまま歌うセイレーンたちの頭上に高く飛び上がった。

「【装備変更】!」

装備を【猫耳】から【狐耳】に交換。

「いきますっ! ジャンピング【ソードバッシュ】! ――――エクスプロード!」

吹き上がる猛烈な衝撃波を追うようにして、燃え上がる青の炎が岩島を焼き尽くす。

これまでただの一度もダメージを受けることなく、多くの新海域挑戦プレイヤーを沈めてきた海の悪魔。

余裕の様を崩さずにいたセイレーンたちを、メイが一撃で撃ち倒した。

「この地獄を……メイちゃんは本当にすげえな……」

「さすがメイさんぽよーっ!」

戦いにくい海というフィールド。

さらに近接のマーマンと海に潜ってしまうマーメイドが怒涛の攻勢を見せ、シーサーペントによって船が沈むという地獄の海域。

「よし、あとはマーマンたちの相手をしながらこの海域を抜けるだけだ!」

「船のダメージは大きいけど、なんとか乗り切ろう!」

半壊の船の上で、思わず歓声をあげてしまうプレイヤー船の面々。

「あの子は……」

そんな中、船に駆け戻っていくメイの目に映ったのは、大型海賊船の甲板にいる一頭の巨大な白象。

海賊に命令されるまま、マーメイドに向けて鼻から水砲弾を放っている。

「どうしたのかな」

白金の牙を持つ美しい象を気にしながら、メイは船へと戻っていく。

この海域を抜けてしまえばもう、アヴァロニアは目の前だ。