軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

487.潜入するメイドたち

「それでは、潜入開始といこうではないか!」

「どうして四人全員が私の後ろに隠れるのよ」

危険な場所へのドアを開けるのならと、すぐにレンの腕にしがみついたメイとツバメ。

するとそれを見たアルトリッテとマリーカも、レンの背後に身を隠す。

「それじゃ、開けるわよ」

見張りたちを打ち倒し、倉庫内部への侵入を果たすメイドたち。

悪徳貴族の持つ、『王錫の宝玉』目指して先を行く。

内部は薄暗く、各所に置かれた魔法石灯と小型の魔法陣がほのかな明かりを灯している。

並んだ立方体の木製コンテナ。

その隙間が道になっており、そこを進んで行く形になるようだ。

つながっていない隙間は、身を隠す壁にするためのものだろう。

道は正面に続くものと、右に曲がって行くものの二つ。

見る限り、右に曲がる方が近道ではありそうだ。

「……近づいてきてる足音があるよ」

さっそくメイが、【聴覚向上】で危険を察知する。

やはり内部にも、見張りがうろついているようだ。

「様子を見にいきましょうか?」

「それがいいわね、お願いできる?」

「【隠密】【忍び足】」

ツバメはスッと姿を消し、音もなく正面の道を確認に行く。

「おおっ、足音も消せるようになったのか」

「……すごい」

これには二人も感嘆の声をもらす。

ツバメは姿を消したまま道を進み、突き当りを左折。

見えたのは、こちらに向かって来る用心棒の男と、その奥の角に立って見張りをする男。

見張りの男は、一定の間隔で視線の方向を切り替えている。

「今です」

ツバメはその『間隔』を確認し、見張りの目が離れた瞬間――。

「【アサシンピアス】」

歩いてきた用心棒の弱点を突き、静かにアサシンを遂行した。

「増援を呼ばれないよう、あの見張りも倒しておきましょう」

【忍び足】の効果もあり、見張りはまだこちらに気づかない。

ツバメはコンテナの隙間に身を隠し、倒れた用心棒の異変を確認しにくるであろう見張りを待つことにした。

「右側の道からも誰か来るよ。しかも二人バラバラだ」

「時間差なの?」

こくりとうなずくメイ。

「……一人が遅れてくるというのは良くない」

手前の敵を倒す間に、もう一人に見つかってしまうことが確実の状況。

そして手前の用心棒は戦士型。

盾を構えた状態でやって来る。

倒しにくい盾持ちから数メートル遅れて、侵入者警報の鐘を持った見張りの男もやってくる。

やっかいな組み合わせの右側通路は、『高難易度の近道』になっているようだ。

「あれ?」

するとメイの肩に光球が現れ、いーちゃんが飛び出してくる。

使い魔いーちゃんは「まかせろっ」と胸を叩くと、角を曲がって走り出す。

「ん? なんだこいつ」

「動物が入り込んでんのか?」

いーちゃんはそのまま用心棒たちの足元を駆け抜けて、鐘を持つ男の背後に回り込んだ。そして。

「うおおっ!?」

放つ風の弾丸で、鐘の男を転倒に追い込んだ。

男たちの視線が、同時にいーちゃんに集まる。

振り向いてしまったことで、盾の男も背中ががら空きになった。

「【バンビステップ】!」

メイはここで、一気に距離を詰めにいく。

「【キャットパンチ】パンチパンチパンチ!」

そして手前の盾の男に、青く燃える猫パンチを叩き込んだ。

「お願いマリーカ」

「【霊鳥】」

レンの言葉に、マリーカが放つ魔法。

魔力光の鳥が一羽、見張りの男に向けて真っすぐに飛んで行く。

そのまま進めば、メイに当たってしまう角度だが――。

「【アクロバット】」

バク宙で見事に直撃を回避。

「なっ!?」

通り過ぎた魔力鳥は、見張りの男に直撃して弾けた。

いーちゃんから始まった見事な連携で、高難易度の通路を問題なく切り開いてみせた。

「いーちゃんないすーっ!」

「メイたちはまた、優秀な仲間を増やしたのだな」

「……かわいい」

メイの肩に戻ってきたいーちゃんを、さっそく撫でるアルトリッテとマリーカ。

「ここは不用意に右の道を行くと、敵を引き連れたまま猛ダッシュするはめになるんでしょうね」

スニークアクションあるあるを思い出して、フフッと笑うレン。

その予想は正解だ。

右の通路は、盾持ちの用心棒に時間を取られている間に見張りが鐘を鳴らす。

すると正面の道にいた二人も、追手になって事態が悪化してしまう。

かといって正面の道でモタモタしていても、右通路の盾の男に背後を取られることになる。

メイたちは見事に乗り越えたが、追加ミッションの難易度はやはり高い。

「こちらは片付きましたが、少し遠回りになりそうです」

正面の道はやや難易度が低いが、面倒な手順を何度も踏んで進まなくてはならない。

戻ってきたツバメによる報告で、レンはここからの進路を『右』に決める。

「いいわ、ここは任せて」

取り出した【変化の杖】で黒猫に化け、先行する作戦を採択。

「……レンが、猫になった」

「おおっ! これは面白いアイテムだな!」

思わず目を輝かせるマリーカたち。

さっそくなでなでされたレンが先行し、状況に合わせてツバメの【隠密】や、マリーカの【霊鳥】使用を指示。

黒猫レンが敵の注意を引いている隙に、敵の背後を通り抜けることまでできるようになった。

「こんなにスムーズにたどり着けるとは……」

アルトリッテが驚きの声をあげる。

倉庫の最奥には、魔法陣罠の張られた扉が一つ。

「【罠解除】」

ツバメが陣に触れて、魔法陣を解きにかかる。

「……ここに待ち時間があるのは、趣味が悪い」

「力任せの攻略は絶対に許さない、運営の意図を感じるな」

見張りを突っ切る形の全力疾走は、ここで手間を取られて捕まるようになっているようだ。

敵にバレて慌てて全力疾走ということが割とあるアルトリッテたちは、思わず苦笑い。

「魔法陣罠、解除できました」

「…………い、一応、使い勝手の確認は必要よね」

漂う戦闘の気配。

レンはそう言って、複雑そうな顔で【常闇の眼帯】を装備する。

「……カッコいい」

「かっこいいー!」

「ほう、カッコイイではないか!」

「私を見ないで」

レンは赤くなった顔を背けつつ、扉を開く。

そこにいたのは、20人ほどの用心棒たち。

「なんで、こんなところにメイドが!?」

「武装メイドが踏み込んできやがった!」

「メイド強盗だと!?」

「すごい言われようです」

「だ、誰であろうと踏み込んできた以上関係ねえ! やっちまえ!」

用心棒たちは各々の武器を手に取り、駆けつけてくる。

「……こういう状況は都合がいい【霊鳥乱舞】」

「「「うおおおおおお――っ!?」」」

放たれた輝く鳥の群れが、一斉に用心棒たちを撃ち倒す。

高火力にもかかわらず、数も多い。

『不動のマリーカ』らしい広範囲殲滅魔法が決まり、一気に数を減らす用心棒たち。

これで残りはわずか3人。

「レン! 私にも後ろから撃つやつを頼む!」

「分かったわ!」

「【ホーリーロール】!」

聖なる大剣【エクスブレード】で、残りの用心棒を斬り伏せるとそのまま【ペガサス】で跳躍。

「【フレアストライク】!」

するとその直後、飛び上がったアルトリッテの足元を炎砲弾が飛んで行く。

「うわああああああ――――っ!」

炸裂し、大きく燃え上がる炎がトドメ。

倒れる用心棒たちを前に見事な着地を決めたアルトリッテは、「むふん」と鼻を鳴らす。

「オマエら……グレイシア家のメイドじゃねえか」

背後の部屋から現れたのは、見覚えのある一人の男。

悪徳貴族は驚くように目を見開いた後、ニヤリと笑う。

「『王家の杖』とまで言われたグレイシアの事だ。どうせ狙いは『こいつ』だろ?」

そう言って取り出したのは、紫色の宝珠。

それは王家に代々伝わる宝の一つだ。

「茶会では、ずいぶんと世話んなったよなぁ……」

悪徳貴族がそう言って腕をあげると、木製コンテナの中から現れたのは黒の魔犬ガイトラッシュ。

そして一人の妖しい男が、背後の陰から現れた。

「生きて帰れると思うなよメイドども! ここがテメエらの墓場だぁ!」

悪徳貴族の咆哮と共に、メイドたちの戦いが始まった。