軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

477.メイドさんになります!

「準備ができたようですね」

メイド服に着替えたメイたちが控室を出ると、さっそくメイド長がやって来た。

「ここからは働き次第で、新たな仕事を任せるか否かを決めていきます。グレイシア家のメイドに相応しくないと判断した時点で仕事は終了。そのレベルに合わせた報酬をお渡しいたします」

「前回はどんな報酬をもらったの?」

「【毒消し薬】だ……」

「色々と、うかがい知れる感じね」

悔しそうに拳を震わせるアルトリッテに、苦笑いのレン。

「まずは基本である、片付けをお願いいたします。二階奥の図書室にある本。棚やデスク、チェア、そして外した魔法灯などの家具を一階の倉庫に運んでいただきます」

「荷物運びなら問題ありませんね」

これまでの経験からも、苦労しそうな感じはない。

緊張がゆるむ感覚。しかし。

「……ここからが本題」

マリーカが注意を促す。

「この程度の仕事にダラダラ時間を使ってもらっては困りますので、制限時間は15分とさせていただきます」

「なるほど、時間制限があるのですね」

「そして、これから一階の廊下には様々な来客がおとずれます。お客様の前ではあくまで優雅に。グレイシア家のメイドは『はしたない』などと言われることがないように」

「これがネックなのだ! 時間制限があるくせに走れば『優雅度』が下がってしまうのだーっ!」

「ゆうがど?」

メイが首と尻尾を傾げる。

「バタバタ駆け回って荷物を運ぶと、優雅でないと思われてポイントが下がるという恐ろしいシステムだ!」

「急ぎながら、かつ客前での行動は忙しなくならないようにってことなのね。確かに簡単じゃなさそうだわ」

「難しいお仕事なんだね」

「張り切っていきましょう」

「……リベンジ」

「皆さんの仕事ぶりはしっかりと拝見させていただきますので、くれぐれも無様な姿を見せたりしないよう気を付けて下さい」

そう言ってメイド長は、踵を返した。

「それではさっそく、いってみましょう!」

メイは両手をまくる仕草から、両腕に力こぶを作るような動きで気合を入れる。

図書室は二階。

部屋に進んだメイたちが扉を開けると、そこには並んだ本棚と、収められた無数の本。

テーブルやイス、そして飾り付けられていた紋章入りの盾や、鎧などもある。

どうやら、大きな書斎と言った方が良さそうな雰囲気だ。

「五人になって、物も増えているな」

「……これは大変」

アルトリッテとマリーカは、大量の荷物に息を飲む。

「私はこのデスクを運ぼう!」

【腕力】高めのアルトリッテはさっそく、木製の重厚なデスクに手を伸ばす。

「メイはどうする? メイもデスクか? 鎧セットか?」

「本棚にしますっ!」

「……助かる」

それなら本を抜き出そうと、動き出すアルトリッテとマリーカ。

「よいしょっ」

「「……え?」」

メイ、本が入ったままの本棚を持ち上げる。

「いきましょう!」

「お、おいメイ! 大丈夫か?」

「そっか! 時間がないんだよね!」

そう言ってメイ、本棚を肩に担いだ状態でデスクにも手を伸ばす。

「ちちち違う違う! そういう意味ではなーい!」

「大丈夫じゃない? メイ、バランスは取れそう?」

「だいじょうぶだよっ!」

「大丈夫なのか……」

「……メイは底が知れない」

「それじゃあ各自、荷物を持って一階倉庫に向かいましょう」

「はいっ」

まずは第一陣。

流れの確認も含めて、五人並んで倉庫へ向かう。

「……身体に荷物のサイズがあってない」

本人の体は大きいが【知力】型のマリーカが、ティーセットをフラフラしながら運ぶのを見て、頬を緩めるツバメ。

こちらも一番仕事しそうなレンが、小さめのイスを両手で持っている姿はなんだかほほ笑ましい。

「それにしてもメイは、とんでもない【腕力】を持っているんだなー」

「いえいえー」

メイは一応尻尾でも本棚を支えながら、先頭に立って階段を降りていく。

「だが私も二回目のクエストだからな! ここはメイドの先輩として――えっ?」

一方執務用の重厚なデスクを抱えたアルトリッテは、足元があまり見えていない。

「ぬはーっ!」

そのせいで思いっきり階段から足を踏み外した。

階段で大物を落とす流れは、『破損』で減点される上に『大音量』で優雅度も大きく下がる、クエスト最大の禁忌だ。

アルトリッテは、半泣きで目を閉じるが――。

「…………あれ?」

転がり落ちない。

デスクがお腹につっかえるような形で、アルトリッテを支え止めていた。

見れば右肩に本棚を乗せたメイが、左手だけでデスクを押さえていた。

見事な手助けだ。

「待って! まだ終わってないっ!」

しかしデスクの上に乗せていたデスクライトは、放物線を描いて宙を舞う。

そしてそのまま、階段の角にぶつかろうとしたその瞬間。

「よいしょっと!」

さらにメイは、伸ばした尻尾にデスクライトを引っ掛けた。

「……すごい」

「アルトちゃんだいじょうぶー?」

「メ、メイぃぃぃぃー! 助かったぞー!」

体勢を立て直したアルトリッテは、颯爽と気合を入れ直し――。

「……もう一度転ぶ流れ」

「うっ」

マリーカの的確なツッコミに、そーっと階段を降りるのだった。

「うーむ、メイの【腕力】は一体どうなっているんだ……これなら本当にメイド長に認められ、エクスカリバーへの道を開くこともできそうだなっ!」

「うおおー!」と目を輝かせるアルトリッテ。

メイたちは倉庫に荷物を置いて、流れを確認。

二周目からは、各自の最速で動く形になる。

「まあまあやるようですね。ですがここからは来客もございます。くれぐれも、はしたないマネはしないように」

そしてここからは、時間制限も含めた片付け勝負。

メイド長は丸メガネをクイっとさせると、その目を厳しく輝かせた。