作品タイトル不明
474.イベントの終わりと再会と
「…………」
広報誌を何度も見返しては、頬を緩めるツバメ。
「なにやってるの?」
「ふああっ!?」
レンに声をかけられて、思わず声を上げる。
「あら、広報誌じゃない。その表紙ちょっとカッコいいわよね」
「今回はグラムさんたちとも一緒の一枚だったので……仲間たちと一緒というのがうれしいです」
そう言ってもう一度、ツバメは表紙を見返す。
六人が並んだ姿。
その中心にはやる気十分のメイと、ボスのような笑みを浮かべるグラム。
メイの隣には静かに目を閉じているレンと、静謐を感じさせるツバメが続く。
そしてグラムの隣には爽やかな笑みのローランと、戦いが楽しみで仕方ないのか、強気の笑みを浮かべる金糸雀。
篝火の光に照らされ、戦いに挑む六人の姿がカッコよく映し出されている。
「思わず待ち受けに設定してしまいました。複数人一緒の写真で、しっかり写っているものは貴重なので……」
集合写真ですら、前の人の陰になって見切れたりしているツバメ。
貴重な一枚がうれしかったようだ。
「一人でイベントに参加していた頃からは考えられません」
「最後のメイがコーギーを抱きしめてるのもいいわよね」
「あれは最高です!」
ブンブンと大きくうなずくツバメ。
もちろんその一枚も、プリントアウトして部屋に飾っている。
「レンちゃんツバメちゃーんっ!」
するとそこに、ちょうどメイが駆けつけてきた。
「広報誌できてたわよ」
「本当っ!?」
さっそく受け取って中身を確認。
「表紙カッコいいーっ! みんな一緒に写ってるんだね!」
開けばそこには、動物や魔獣の姿もある。
フロンテラ出航からジャングルへと、移っていく舞台に則った構成だ。
「……野生児の日常」
ページをめくりながら、メイがつぶやく。
「これ、野生児の日常だよーっ!」
湖で釣りをして、陸ガメの背に乗って移動、鳥を先頭に密林を駆け、月に向けて遠吠えし、ヘビや豹と一緒に戦う。
そして極めつけは、【野生回帰】で密林を駆け抜けるメイの姿。
ものすごくカッコいいシーンだが、唯一メイだけが「ああーっ!」となっている姿に、レンはくすくす笑う。
今日はイベント終わりということで、待ち合わせはテーラの集落前。
集合時間30分前には集まってしまうのも、すっかり相変わらずだ。
「さすがジャングルね」
メイがやって来ると、待ってましたとばかりに草から顔を出すイタチ。
スッと姿を現すカメレオンに、相変わらずなんとなくいる陸ガメ。
動物たちも、その様子を見に集まって来る。
「それじゃあそろそろ、イベント報酬をもらいに行きましょうか」
「りょうかいですっ!」
「行きましょう」
イベント報酬は、各陣営とも本拠地にて。
三人は、テーラ集落の村長のもとへ。
イタチはメイの肩にスルッと登り、動物たちも後に続く。
「おお、テーラの英雄殿!」
「よく来てくれた。実は君たちに受け取って欲しいものがあるんだ」
「こちらへどうぞ!」
『巫女』の少女に引かれる形で長老宅へ入ると、そこには三つの宝箱。
「集落の倉庫に眠っていた品々だ。君たちなら有効に使ってくれると思ってな」
「ありがとうございますっ!」
並んだ三つの宝箱。
さっそくレンが中身を確認する。
【常闇の眼帯】:中級魔法スキルを指定して装着することで溜め時間が始まり、その長さによって一定数までの同時発射が可能になる。また【宵闇の包帯】と同時使用することで、上級『大弾』魔法も四連発の使用が可能となる。
「……そ、そろった」
組み合わせることで火力を上げるという、一風変わった装備品。
まさかの中二病装備コンプリートに、白目をむくレン。
続いてツバメが宝箱を開く。
【分身Ⅰ】:攻撃判定を持たない分身を一体生成する、敵の攻撃を受けることで消滅する。
「ツバメは面白そうなスキルをもらったわね……」
「は、はい」
白目のままうなずくレンに、ツバメが思わず噛む。
進化するタイプの新スキルには、期待が持てそうだ。
そして最後はメイ。
宝箱の前に立つと、ついて来ていたイタチも興味深そうに宝箱をのぞく。
【ドラミングⅠ】:高威力の攻撃を受けても動かず、その場にとどまることが可能。受けきれる回数、威力は【耐久】に依存する。
「またゴリラのヤツだああああ――っ!」
メイ、思わずスキルブックを掲げて叫ぶ。
「こ、これは」
「次々バナナを取り出して、ゴリラアームで木を振り回して、さらにドラミングまでしたら、それはもうゴリラそのものだよーっ!」
「そんなことは……」
『ない』とまでは言い切れず、声が小さくなるレン。
これにはツバメも、言葉が見つからない。
「……ありがとう。君たちのおかげでこの島は、大地は守られた」
「本当に助かったよ。属性ブレードの精製ならいつでも請け負わせてもらうぞ!」
「英雄のみなさん、ありがとうっ!」
戦慄するメイを前に、うれしそうに頭を下げる『巫女』たち。
こうして、大型イベントの全行程が終了。
ついでに【雷ブレード】の補充もして、三人はテーラを後にすることにした。
動物たちと戯れながら密林を進み、たどり着いた船着き場。
そのままフロンテラへと戻る船へ、メイたちが乗り込もうとすると――。
イタチがぴょんと、肩を降りた。
そして、帰りゆくメイたちの背をジッと見つめる。
「……なんか、帰りにくいわね」
「本当ですね」
「イタチちゃん……」
道の真ん中にポツンと立ってこちらを見つめる姿に、三人はついつい足を止めてしまう。
陸ガメ探しの時に、メイを見つけて飛び出してきた一匹のイタチ。
その場を動くことなく、ただ三人を見つめ続ける。
「……っ」
思わずメイが近寄って頭をなでると、嬉しそうに身体を震わせた。
「……そういえば、【使い魔の鈴】があったわよね」
「そっか!」
動物や魔獣などを召喚士の様に呼び出し、従魔士のように同行させることもできる『使い魔』
その分戦闘ではアシスト要素が強く、両クラスの中間のような特性となっている。
「……一緒に来る?」
メイが手を伸ばしてたずねると、イタチはその問いかけに応えるように、小さな手をメイの手の上に乗せた。
左手に取り出した【使い魔の鈴】を鳴らす。
すると足元に生まれた魔法陣から魔力の粒子が吹き上がり、やがて陣がほどけていった。
これにて契約成立。
【使い魔の鈴】を使っても、動物との仲が良くなければその距離感は遠いままだ。
その点メイはすでに圧倒的、同じパーティのツバメとレンも動物値が高い。
イタチはうれしそうに、三人の肩を行ったり来たり。
「かわいいです」
「何か名前をつけてもいいかもしれないわね」
「名前かぁ……どんなのがいいのかな?」
「……アウラ」
レンはそう口にして、すぐにハッとする。
「や、やっぱり忘れて! 今のなし!」
自分の上げた案が『風』の『ラテン語』だと思い出し、耳を赤くしながら案を引っ込めた。
「ツ、ツバメはどう?」
「鎌井さん」
「相変わらず独特の感覚ね……かまいたちから取ったのかしら。メイは?」
「いーちゃん!」
「いいですね」
「かわいいじゃない。イタチのいーちゃんって、分かりやすいし」
とてもシンプルなメイの名づけに、ツバメとレンがうなずく。
「それじゃあ命名は『いーちゃん』でいきましょう」
「よろしくね! いーちゃん!」
「よろしくお願いします。いーちゃんさん」
「いーちゃんでいいわよ」
「あはははは」
いーちゃんは、三人の肩を右に左に駆け回る。
新たな仲間を迎えたメイたちは、相変わらずのツバメに笑いながら、いつもの街へと帰っていくのだった。