軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

466.混戦Ⅱ

中遠距離攻撃に対する防御スキルを持つ摩訶羅那。

二者の戦いは、わずかに膠着を見せ始めていた。

そんな中、見えてきたのは密林を駆けてくる少女の姿。

「なんと……! これは一転窮地ですな」

「【ラビットジャンプ】!」

木の枝を蹴り、空中で【アクロバット】で一回転。

「よいしょっと!」

華麗な着地で現れたのはテーラ陣営リーダー、メイ。

それでなくても膠着していた戦い。

ローランの中遠距離攻撃に、メイの近接戦闘が加わるとなれば10秒耐える自信もない。

摩訶羅那もこれには、苦笑いを浮かべる

「これではローランさんコーギーを、モフモフできませんな」

「なにそれっ!? わたしもしたいです!」

「ええっ……!? そういうことなら……イベント後になら……」

「やったー!」

「おおっ! なんという僥倖でしょう!」

摩訶羅那も、うれしそうにメガネをキラリと輝かせた。

「……それでは。しっかり勝って楽しませてもらいましょうぞ!」

「ッ!?」

篝火によってできている影のわずかな動きに、メイが視線を上げる。

「ローランちゃん!」

メイの声に、即座に状況を察知。

「【回転跳躍】!」

「【ラビットジャンプ】!」

空から突撃してきたのは、白い飛竜。

そのままの勢いで、メイたち目掛けて長い氷鱗の尾を振り払う。

「「ッ!?」」

二人は白竜突撃を大慌てで回避するも、それは【幻術】

「キュービィちゃんは、こっちでしたぁー! 【首狩り一閃】!」

そんな二人をあざ笑うように、木々の間から飛び出してきたキュービィ。

手にした大鎌を華麗に一回転。

駆け抜けていく半円形の斬撃を、メイたちは慌ててしゃがみ込む。

「つっ!」

しかし白竜の尾を低めのジャンプでかわしたメイと違い、高めに飛んでいたローランは肩にかすめて1割のダメージを受けた。

「さあ一気に攻めましょうぞ! テーラのリーダーが相手なら、もうMPなど尽きても構いませんな!」

【幻術】で二人に増えたキュービィは、メイを狙う。

「【首狩り一閃】!」

「うわっと!」

迫る斬撃をしゃがんでかわす。

するとそこに駆け込んできたもう一人のキュービィが、鎌を振り降ろしてきた。

「うわわっ! 【アクロバット】!」

さらにこれをバク転でかわして視線を上げると、そこに見えたのは白竜。

飛び掛かりから放つのは【凍結噛みつき】だ。

「もう一回【アクロバット】! たぶんこの子が本物だー!」

回避で生まれた隙を突くのが、【幻術】攻撃の基本。

キュービィの連撃がオトリなのだろうと考えたメイは剣を一振り。

白竜はかき消えた。

「あれーっ!?」

白竜が消えて驚くメイのもとに、飛び込んでくるもう一体の白竜。

叩き付けた尾から広がる、氷剣の乱舞。

「ラ、【ラビットジャンプ】ー! どうなってるのー!?」

これにはメイ、いよいよ困惑し始める。

「メイちゃんに見破れないってことは、差異はないってことかな……【ラピッドワン】!」

ローランを狙う摩訶羅那のペンデュラムが、一斉に放つ魔力砲。

これをかわして、再び摩訶羅那の動きに視線を向けたところで驚愕する。

「味方にも【幻術】が使えるの……っ!?」

なんと摩訶羅那が二人に増殖。

【幻術】が従魔やパーティメンバーにも効果を発揮できるようになった時から、キュービィはトップたちの中でも異質の強者となった。

「さあいきますぞ!」

16個に増えたペンデュラムが魔力砲を放つ。

「【ラピッドワン】【回転跳躍】っ!」

ローランは必死の回避を試みるが、入り乱れる閃光を避けるのはあまりに難しい。

「くっ、マズいね……」

回避は間に合わず、HPがドンドン削られていく。

「【バーストアロー】!」

合間を縫って放った攻撃が幻影をかき消し、本物を見つけ出した。

しかし放たれた矢を木の陰に隠れることで回避した摩訶羅那が、再び現れると――。

「木の陰を通った時に、また【幻術】がかけられたってこと……!?」

幻影に戦わせることで全体の把握ができるキュービィは、再度【幻術】を使用。

再び摩訶羅那を二人に増殖させ、メイたちを追い込んでいく。

「いかに速くっても、これじゃ下手に攻撃できないでしょう? 【首狩り一閃】!」

「【ラビットジャンプ】!」

「素直ねぇん。今のは【フェイント】なのん」

「ええええーっ!?」

【フェイント】は対象スキルと全く同じモーションをしながら攻撃判定は出さず、隙は僅少という変わり種スキル。

「今度は本物よぉん! 【首狩り一閃】!」

「わああああーっ!」

着地際を鎌の斬撃に弾かれ、メイは地面を転がる。

【幻術】と【フェイント】の組み合わせは、素直なメイにとって最悪の一手だ。

「どうしようかな……」

片ヒザをつく形で体勢を立て直したメイは、首と尻尾を傾げる。すると。

「……そっか。みんながいたね!」

その目に映ったのは、木々の枝から垂れ下がり、今や遅しと『出番』を待つヘビたちの存在。

「いきますっ! 【バンビステップ】!」

うれしそうに笑って、メイは走り出す。

すると待っていたとばかりに現れた白竜が放った氷砲弾が、メイに直撃。

「メイちゃんッ!」

ローランの悲鳴が上がる中、メイは無傷で駆けていく。

キュービィは次々に【幻術】を使用して、氷砲弾を連射。

「それは偽物っ! これも偽物っ!」

次々に炸裂するが、どれも【幻術】でダメージなし。

ついにキュービィが、鎌を抱えて樹上から跳躍。

豪快なエフェクト共に放たれる降りおろしを、しかしメイは気にもかけない。

「【首狩り一閃】!」

「これも偽物ですっ! だから攻撃はそっち【ソードバッシュ】!」

「ちょっと、どうして分かっちゃうのぉん!? 【流転避行】!」

滑るような動きの瞬間移動スキルで衝撃波を回避したキュービィは、初めての事態に慌てふためく。

「もしかして……ヘビ?」

そんな中ローランは、メイの視線を見てひらめく。

「『星屑』でも、ちゃんと『温度』で生き物を見てるってこと!?」

驚くローランの予想は正解だ。

【幻術】はしっかり音もするが、さすがにいない者には温度が生じない。

キュービィは従魔士でありながら、ヘビが持つ特性を忘れていたようだ。

こうなれば、状況は一転。

「と、とんでもないわねぇん。森の動物たちがお友達って、そんなの本物の野生児ちゃんじゃない……っ!」

旗色の悪さに気づいたキュービィは、ここで一気に攻勢を仕掛けにいく。

「アビヤードちゃん!」

呼びつけた白竜が、キュービィの隣に並ぶ。

するとその口内に輝く、白銀の輝き。

「【極天白雪砲】!」

吐き出したのは付近一帯を丸ごとその攻撃範囲に収める、猛烈な吹雪。

「こんな広範囲の吹雪を……っ」

それは白竜の持つ必殺スキル。

その威力は、並みのプレイヤーならまとめて打倒するほどの高い火力を誇る。

そしてすでに回避ができるような状況ではない。

「防御で防げればいいけど……っ」

祈るような気持ちで防御する、ローランのHPは少ない。

仮に防御できても、その直後にペンデュラムによる攻撃が来れば、キッチリ削り切られてしまうだろう。

しかしそんな中でも、メイには余裕があった。

「おねがいしますっ!」

その言葉に応える形で飛び込んできたのは、一匹のイタチ科。

メイの足から腰、そして肩へと駆け上がって跳躍。

ドン! という強烈な爆発音と共に放つ暴風が、猛吹雪を消し飛ばす。

「うそぉん!?」

さすがにこれには、驚きふためくキュービィ。

「まだだよ、メイちゃんっ!」

「【一斉掃射】【フレアストライク】!」

ここで摩訶羅那が仕掛けるのは、ペンデュラム全弾が放つ上級魔法の同時撃ち。

放たれた八つの炎砲弾が、一つの巨大な炎塊弾となってメイに迫る。

「【装備変更】」

だが、それでもメイは変わらない。

その手に【魔断の棍棒】を握り、大きく振りかぶると――。

「せぇぇぇぇのっ! 【フルスイング】だああああ――――っ!!」

なんとメイは摩訶羅那が放った巨大な炎弾を、キュービィに向けて撃ち返した。

「わ、わたしぃぃぃぃ!?」

攻撃を放った摩訶羅那と、攻撃を打ち返されたキュービィは同時に呆然。

「きゃあんっ!」

大慌てで回避に動くも、爆発に巻き込まれて3割ほどHPを削られた。

この展開には、危機を知らせる声を上げたローランまでもが唖然とする。

そんな中メイは、颯爽と肩に戻ってきたイタチの頭をなでると――。

「助けてくれてありがとーっ!」

ローランやヘビたちにも手と尻尾をブンブン振りながら、うれしそうな笑顔を向けてみせた。