軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

464.奮戦テーラ陣営!

「まさかテーラ陣営がこんなにやるとはな」

「メイちゃんがいるから侮れないとは思ってたけど……」

「それでも、妖刀を手にしたアンジェラならやれる! あいつならっ!」

「アンジェラってそんなに強いのか?」

「ああ。俺が見てきた中では間違いなく、トップの中でも最上位クラスだと思う」

時はわずかに戻り、グラムと桜子が激しい火花を散らす中。

『巫女』を目指して密林を進む、大量の連合軍プレイヤー。

その視線が、不意に留まる。

「メイちゃんだ!」

「気を付けろ! 防御を固めるんだ!」

夜のジャングルを駆けるメイに、思わず上げる声。

「……あれ?」

連合軍は慌てて守りに入る。

しかしどこからともなくやってきたメイは、いつもより長い耳とフサフサの尻尾で立ち止まった。

高い樹の上に立ち、最後にもう一回手を大きく振ると「これでおしまい!」っと満足そうにうなずく。

「なんだ……?」

「何が終わったんだ?」

視線の集まる中。

メイは口元に手を当て、夜空に浮かんだ月に顔を向けると――。

「大きくなーれっ!」

【密林の巫女】を発動。

するとまき終えた【豊樹の種】たちが、一斉に発芽し始めた。

首都の植物学者から買っていたこの種は、一粒で家一軒を緑で覆い尽くしてしまうほどの伸びを見せる。

「密林が、超密林に……っ!?」

絡み合い、結び合い、いよいよ複雑になるジャングル。

進行の妨げとなる木々の壁を生み出したところで一段落かと思いきや、まだ終わらない。

「それではいきますっ! ウォオオオオオオ――――ッ!!」

響き渡る【遠吠え】

それは広い範囲のモンスターたちの『ターゲット』を全て、自分に集中させる合図のようなスキルだ。

直後、密林がざわめくような感覚。

その正体は、すぐにあらわになる。

さっそく大きな白トラが、紫の毛並みの大猿が、黒い堅鱗をまとった大蛇が集まって来た。

「それでは、戦いに戻りますっ!」

夜に装備することで【敏捷】を大きく上げる【狼耳】で、メイは走り出す。

そして呼び出した本人のメイがいなくなれば、集まってきている大量のモンスターたちは当然――。

「うそだろ……?」

『巫女』奪取に向かう、連合軍プレイヤーに目を付ける。

テーラ陣営の同行組は、『巫女』を引きつれ森を行く。

「『巫女』が奪われたら、また奪い返さなくちゃいけなくなる。俺たちの働きも大事だぞ」

「メイちゃんたちがトップ勢を倒して戻るまで、なんとしても『巫女』を守るんだ」

連合軍が勝利するには、リーダーであるメイの打倒と『巫女』が必要。

リーダーが破れない限り敗北はないが、同行組は慎重に身を隠しつつ戦場から距離を取る。

またメイが【密林の巫女】で木々の密度を上げたため、一部移動力の高い者以外は谷を迂回するという大幅な遠回りを余儀なくされている。

レンとローランの二人が考えた、見事な時間稼ぎだ。

「見つけたぞ!」

しかしアングルとフロンテラの連合軍ともなれば、それを乗り越えてくる者もいる。

現れたのは前衛職で固めた十数人ほどの高機動パーティ。

「さあ、『巫女』を渡してもらおうか」

「さもないと、ここで消えることになるぞ」

そう言って剣を抜く、連合軍パーティ。

「ものすごく悪役っぽいな」

「仕方ないだろ! 『巫女』の女の子をさらいにくる戦士とか、どこから見ても悪役にしかならねえんだって!」

「こうなったらもう、悪に染まるしかねえだろ?」

同行組剣士の言葉に、思わず全力で突っ込んでしまう連合軍戦士。

「とにかく、お前たちにはここで消えてもらうぞ!」

準トップ級の面々が、動き出そうとしたその瞬間。

「【ライトニング・エクスプロード!】」

高速で飛来した閃光が炸裂し、連合軍の先頭にいたアサシンが吹き飛ばされる。

「【ウィンドカッター】!」

続くのは疾風の刃。

「【ファストステップ】【ブレイドローリング】!」

続く魔法の連携で陣が崩れたところに飛び込んでいくのは剣士。

回転斬撃で、一気に敵を斬り飛ばす。

「【ピアスシューター】!」

この連携で倒されたアサシンの真横を通り過ぎ、放たれる細剣の一撃。

「【シールドディフェンス】!」

これをしっかり受け止めると、即座に同行組二列目が攻撃体勢に入る。

「【波光砲】!」

「【ソードストライク】!」

「【ストーンバレット】!」

魔力砲で敵を崩し、剣で高いダメージを与え、トドメを魔法で刺す。

見事な連携だ。

「こいつら、思った以上にやるぞ!!」

キュービィ親衛隊とやり合った経験が、しっかりコンビネーションを構築。

レベルの高い敵プレイヤーたちも、前衛後衛の見事な連携を崩すことができない。

「くっ、しかたない」

「狙いより少し早いが……今だ、やれっ!」

あがる声に呼ばれるようにして木陰から現れたのは、三人の敵プレイヤー。

「伏兵かよッ!?」

まさかの登場に、完全に裏をかかれる形になった。

どうやら最初から戦いが激しくなったところで、別動隊が『巫女』を奪う算段で動いていたようだ。

これにはテーラ組の誰もが驚愕する。

「きゃあっ!」

フロンテラの騎士に腕をつかまれ、悲鳴を上げる『巫女』

同行組もすぐに『巫女』を助けに向かおうとするが、敵プレイヤーたちとの位置関係は最悪だ。

「ここは通さねえぞ」

立ちふさがる敵陣営を超えて助けに行くことは、あまりに難しい。

戦う力を持たない『巫女』は、騎士たちにそのまま連れ去れて木々の中へと消えていく。

「間に合った……ぽよォォォォ――ッ!!」

「ッ!?」

強烈な体当たりで騎士を弾き飛ばしたのは、バスガイドが持っていそうな緑のハタを身体に突き刺した一体のスライム。

「なんだこいつ!?」

「なんでスライムが『巫女』を取り返しに来るんだよ!?」

「いいからやれ! スライム一匹くらいすぐに片付く!」

敵陣三人組は、すぐさまスライムに襲い掛かる。

「「「オラァァァァ――ッ」」」

「【硬化】!」

しかし三者の武器は、一瞬で硬くなったスライムの表面を叩いて跳ね返される。

すかさず身体の一部を伸ばし、最前の魔法剣士を突き飛ばしたスライムは変形。

「【大回転】!」

そのまま身体をムチのように伸ばして強烈な一回転を放つ。

「「うおおっ!?」」

残りの二人をまとめて弾き飛ばすと、魔法剣士が起き上がる。

「【スパークボール】!」

その手から放つのは、雷撃の光弾だ。

「【帯電】ぽよーっ!」

しめた! とばかりに喰らった電撃を、スライムはそのまま身にまとう。

帯電状態で放つのは、必殺の突撃スキル。

「【砲弾跳躍】!」

大きく跳ねてから、弾丸のような速度で飛び掛かる。

「「うおおおおっ!?」」

電撃を乗せた激しい体当たりが、二人をまとめて転がした。

「ここで新技の出番ぽよーっ! 【飛び跳ね】からの【巨大化Ⅰ】そして【硬化】っ!」

スライムはこの隙を逃さない。

バイン! と跳ねて空中へ舞い上がると、そのサイズを三倍ほどに拡大し【硬化】

「【ボディプレス】ぽよォォォォ!!」

「「「う、うおおおおおおおお――――っ!?」」」

とどめの一撃で見事、伏兵三人組を叩きのめしてみせた。

「……スライムちゃん、普通に強くなってんじゃねえか!」

これにはテーラ陣営掲示板派の剣士も、驚きの声を上げたのだった。

残された敵陣営は同行組とスライム。そして。

「ここはどこなんでしょう……」

遅れてきた迷子ちゃんに挟まれる形になる。

こうなればもう、同行組の勝利に時間はかからなかった。