軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

463.トップVS最終兵器

「……いくぞ【フェールシュヴァル】」

「ほう、槍使い同士か」

桜子が取り出したのは、紋様入りの銀の柄に蹄鉄のような形の刃が付いた、やや大きめの戦槍。

本人の清楚な容姿に不釣り合いな、武骨さを持つ武器だ。

「この神槍相手に槍で挑むことになるとは、運がないことだけは確かだな」

そう言ってグラムは「ふん」と笑う。

「そいつはどうかなぁ?」

「見せてやろう。我が神槍の恐ろしさを」

グラムは【神槍グングニル】を手に、余裕の笑みを浮かべる。

「【ラピッドストライド】!」

「ッ!!」

「【ライトニング・スプラッシュ】!」

先手は桜子。

予想以上に長く速い踏み込みから放たれる、豪快な水平の振り払い。

これをグラムはしゃがんでかわし、反撃に移ろうとするが――。

「ッ!?」

わずかに遅れて駆け抜けていく円状のエフェクトが、荒々しい光の飛沫を飛ばす。

「ディレイだと……っ!」

1秒という絶妙な遅れ方で駆け抜けていく一撃が、グラムのHPをわずかに削っていった。

この隙に桜子は再び前進。

「もっかい! 【ライトニング・スプラッシュ】!」

「【ソニックドライブ】!」

続く水平の一撃を後方への移動でかわし、グラムは光の炸裂直後の突撃を狙う。しかし。

「ディレイが……こないっ!?」

遅れて発生するはずの一撃を警戒し足を止めていたが、続くエフェクトが出ない。

「もらったぁ! 【ラピッドストライド】! 【ユニコーン・ピアース】!」

実はディレイの『オン・オフ』が可能なこのスキル。

『オフ』から一気に距離を詰めた桜子は、そのまま高速突きを放つ。

「くっ! 【鬼人の加護】!!」

グラムは物理攻撃ダメージを大幅にカットするスキルで、これを防御。

早くも切り札と言えるスキルを切らされたことに、驚きを見せる。

「まだまだぁ! 【ライトニング・スプラッシュ】!」

桜子の勢いは止まらない。

さらにもう一発、大きな回転撃で二択を迫りにいく。

「なめるなあっ! 【ソニックドライブ】! 【クインビー・アサルト】!」

突きの速度なら、この一撃を超える者などいない。

グラムはディレイ攻撃が来る前に高速突きを差し込み、桜子を撃ちにいく。

「【ポールジャンプ】!」

しかしここで桜子はなんと、『オフ』から槍を地面に突いて跳躍。

棒高跳びのような姿勢でグラムを飛び越え、駆け抜けていく衝撃波もかわしてみせた。

それだけでは終わらない。

異質な跳躍スキル【ポール・ジャンプ】の特性は、空中で姿勢が内側に向くこと。

それは跳び越えた相手の様子を見つつ、着地と同時に動き出せるということだ。

「【ユニコーン・ピアース】!」

「くっ! 【ソニックドライブ】!」

放たれる高速の突き出しを、グラムは後方移動でかわす。

「逃がさねえっ! ラピッドストライ――!」

「【雷煌砲】!」

とっさに放つ轟雷が、付近を駆け抜ける。

「ドドッドドドドォォォォーッ!」

これを桜子はギリギリの緊急停止で、かすめるところで収めてみせた。

「ふぃーあっぶねえー」

額をぬぐって、大きく息をつく。

「初見有利って感じだな! このまま押し切らせてもらうぜ!」

そう言って桜子は「よし!」と槍を器用に回転させて、気合を入れ直す。

「……ふん。確かに悪くないが、このグラムを圧倒するにはまるで足りていないぞ」

まさに初見のスキルに押されている形だが、そこは意地で余裕を見せるグラム。

「そんならこれでどうだい? 【フェールシュヴァル】――――【エピオン】!」

桜子の声一つで、【フェールシュヴァル】の蹄鉄部分が左に寄り、先端に長い刃が伸びる。

その形状は、槍からハルバードへと変化した。

「か、可変型の武器だと!?」

「エピオンって言葉は『次』って意味だからな。もちろんこっちの方が強いんだぜ! 【ラピッドストライド】!」

速い踏みだしから放たれる攻撃は、力強い回転撃。

「【スピントルネード】!」

軌道は普通の振り払いと変わらない。

グラムはこれを下がってかわす。

「な……に……っ!」

しかし巻き起こった暴風は渦を巻き、グラムを風域の内側へと引き込んでいく。

「もっかい! 【スピントルネード】!」

続けざまにもう一発。

すると吹き荒れる風は竜巻に変わり、その凄まじい風力で全てを引きずり込む。

「さあ避けられるもんなら避けてみなぁ! 【ライトニング・スプラッシュ】だーっ!」

「うああああああーっ!」

威力を上げた振り払いがグラムを斬り、遅れて広がる光の飛沫が大きく弾き飛ばす。

この一撃で派手に転がったグラム目がけて、桜子は追撃に向かう。

「【ユニコーン・ピアース】!」

「くっ!」

直撃は避けたものの、槍部が肩を斬る。

そして高速突きの起こした衝撃波が、グラムを木に叩き付けた。

「うぐっ!」

一連の攻撃で、HPは5割強まで減少。

「へへっ、どーよ」

「…………言うだけのことはある」

この戦いには格好よく勝つと決めていたグラムは、予想よりも遥かに強い桜子に「ぷんすか」と、分かりやすく頬をふくらませる。

どうやら陣営リーダーに選ばれた実力は、ダテではないようだ。

「神槍のグラムと言えど、さすがに少しはビビったろ?」

黒髪清楚少女が鼻を擦りながら「へへっ」と笑う。

「……あ、ああ。ほ、褒めてやろう」

「よせやいっ」

頬をピキピキさせながら、そう言ったグラム。

「……よろこぶがいい。このグラム様に本気を出させたのは……お前が大体2、3人目だ」

怒りに燃える目を、桜子に向ける。

「【ソニックドライブ】!」

「ッ!!」

グラムが右手に持った槍を引く。

「【ポールジャンプ】!」

それを見た桜子は跳躍で逃避。

しかしグラムは何もせず停止、ただシンプルに振り返る。

「【雷煌砲】!」

「しまっ……!!」

槍を使う動きから、空いた左手による魔法攻撃。

轟雷に弾き飛ばされた桜子は慌てて身体を起こし、【フェールシュヴァル】を構えるが――。

「【ソニックドライブ】!」

「【ラピッドストライド】!」

槍か魔法か。迷った桜子は後方への高速移動を選択。

「【グングニル】」

「しまっ……っ!」

しかしグラムの選択は投擲。

投じられた神槍が、頬をかすめていく。

直撃が避けられたことに、桜子は安堵の息をつくが――。

「【ソニックドライブ】【雷煌震砲】!」

「なっ!?」

武器を手放してなお、グラムは攻めてくる。

「【ラピッドストライド】!」

腕を弾く轟雷。

桜子はさらに後方への回避を選択し、とにかく距離を取ろうと試みる。

「【ソニックドライブ】!」

だがグラムは止まらない。

雷撃の余波を切り裂くように、前へ前へと怒涛の勢いで攻めてくる。

戻ってきた神槍をつかむとそのまま、スキルを発動。

「【斬空閃花】!」

それは回避するのも難しい、高速広範囲の六連撃。

「くううううっ!」

とっさの防御で、どうにかダメージを軽減。

防御からの立て直しと、スキル使用硬直からの開放。

そのタイミングはほとんど同時だ。

「【クインビー・アサルト】!」

だがここで放つは速い突き。

「わああああああ――――っ!」

高速移動からその都度違うスキルを使うことで的を絞らせず、一気に畳みかけていく。

止めようのないその勢いは、まさにトッププレイヤーの攻勢。

「終わりだ! 【ソニックドライブ】!」

衝撃波に吹き飛ばされた桜子に対し、グラムは勝負を付けにいく。

「……ここだ」

残りHPは4割を切った。

だが桜子も、ただ逃げているだけではない。

防戦一方の状況を逆転する大技の隙を、同時に狙っていた。

「【ラファール・エクラ】!!」

全力の斬り上げは、円環状の派手なエフェクトを生み出す二重の風刃。

全てを切り裂く一撃は、喰らえば大ダメージに加えて転倒。

守っても体勢を大きく崩され、追撃必至という反則技だ。

「な、にっ!?」

「その速い移動スキルは、急な妨害に弱いはずだあーっ!」

常に真っすぐ迫ってくるグラムの【ソニックドライブ】は、攻撃を『置かれたら』防ぎようがない。

そう確信した桜子は見事に、一撃必殺のスキルをグラムの進行方向に置きにきた。

それは見事なカウンターにして、逆転の一手。

「――――【強制転回】!」

しかしグラムは、砂煙を上げながら方向転換。

「マジ……かよッ!?」

ここまでの動きに桜子は、グラムの高速移動は『直線のみ』と信じ込まされていた。

V字移動からの反転。

槍を引いたグラムが放つのは、最終奥義。

「終わりだ――――【神槍雷破】!」

収束するエネルギーエフェクト。

それが弾けた瞬間、投じられた神槍は轟音を響かせる。

神槍のグラムが放つ、超火力の一撃。

「う……うわあああああああ――――っ!!」

響き渡る悲鳴。

グラムはもう、残りHPの確認などしない。

大きな爆発と共に消し飛ばされた桜子に背を向け、神槍を一振り。

「これがテーラの…………最終兵器だ」

そうつぶやいて、静かに目を閉じた。

しかしうっかり、口元に出てしまうニヤつき。

どうやらこの呼び名、陣営リーダーでなかったグラムはかなり気に入っているようだ。