作品タイトル不明
442.打倒巨大スライム!
「ここからが……本番?」
「ていうかこの毒で、なんであんな長時間戦っていられるんだ?」
レンとメイの言葉に、驚きを隠せない観戦者たち。
「通常サイズまで割ったところで一気に殲滅。これでいきましょう! 一匹ずつ倒そうとすると、その時点で合体してもとに戻る可能性があるわ!」
「りょうかいですっ! 【装備変更】!」
ここでメイは頭装備を【鹿角】へと変更。
毒だまりの上でぴょんぴょんと軽く二回跳んで、準備は万端。
レンもそれを見て、杖を構え直して気合を入れる。
「いきますっ! 【バンビステップ】!」
同行組が息を飲む中、メイが走り出す。
「【魔砲術】【フレアバースト】!」
まずはレンが、超巨大スライムの動きをけん制。
爆炎から退避している隙に、メイが一気に距離を詰める。
変形。超大型スライムは太い鞭のような形状になって、付近を薙ぎ払う一撃。
「【ラビットジャンプ】!」
これをメイは、大きな前方への跳躍で回避。
ムチ化からの薙ぎ払いは隙が少なく、スライムは鎌の形に変わり切り裂く攻撃へ移行。
「【魔砲術】【フレアストライク】!」
直後、突き刺さる炎砲弾。
鎌化したスライムが大きく弾かれ、攻撃できないまま元の形状に戻る。
メイは毒液を跳ね上げながら、そんなスライムの前に踏み込んで行く。
「【フルスイング】!」
派手なエフェクトと共に叩き込まれる一撃が、スライムを二分した。
家一軒の巨体から大型トラック大になった2匹のスライムは、その場に立ち止まったままのメイに突撃。
左右から挟み込むような形で、飛び掛かる。
「メイちゃん! あぶないっ!」
思わず叫ぶ同行組。
しかしメイは、2匹のスライムをギリギリまで引き付けたところで――。
「おおきくなーれ!」
【蒼樹の白剣】を【密林の巫女】で延伸させつつ上半身を引く。
「【フルスイング】!」
伸びる白剣による猛烈な薙ぎ払いで、迫る2匹のスライムを斬り飛ばした。
これにはその場にいた観戦者たち全員が、思わず「おおっ!」と声を上げる。
「高速【魔砲術】【連続魔法】【フレアアロー】!」
4匹に分かれ、自動車サイズになったスライム。
ここでレンが閃熱のビームと化した炎矢で『線を引き』、2匹ずつに区切る。
「【バンビステップ】!」
【鹿角】とのコンビネーションでメイは一気に速度を上げ、一足跳びでスライムの懐に入り込んで【フルスイング】
斧のような形状に変化したもう一体のスライムがこの隙を突いて襲い掛かって来るが、メイはこれを大きな側転で回避。
「【ソードバッシュ】!」
すぐさま体勢を整えて、衝撃波の一撃を叩き込む。
これでメイ側に、ビニールプールサイズのスライムが4匹できあがった。
「高速【魔砲術】【フレアバースト】!」
一方レンは、自動車大のスライム2匹を遠距離から足止め。
「高速【魔砲術】【フリーズストライク】! 高速【魔砲術】【フレアストライク】!」
魔法攻撃では分裂しないらしく、怒涛の【魔砲術】でメイへの接近を阻止する。
一方、4匹になったビニールプール大スライムは槍状になってメイを狙う。
放たれる四方向からの突撃。
「よっ、はっ、それーっ!」
これをメイは、踊るようなステップ回避。
即座に走り出して一匹目を剣で叩き、その流れで2匹目を斬りつける。
「【ソードバッシュ】!」
わずかに離れた位置にいたスライムを、衝撃波で飛ばして両断。
飛び掛かって来た4匹目のスライムを斬ると、割れて生まれた通常大スライム2匹のうちの1匹が、あさっての方向に飛んだ。
「【バンビステップ】!」
メイはすぐさまこれを追い、なんと空中のスライムをその手でつかんだ。
「【ゴリラアーム】!」
手にしたスライムを、まさかの投擲。
レンが足止めしていた、2匹の自動車大スライムの片方に叩き込む。
「うおおっ!!」
上がる歓声と共に、割れる自動車大スライム。
この隙に7匹の通常大スライムたちはまきびしのような形に変化し、メイに飛び掛かる。
「はいそこまでっ! 【魔砲術】【連続魔法】【フレアアロー】!」
しかし即座に攻撃対象を入れ替えたレンに、炸裂の炎矢でまとめて転がされた。
メイはレンが止めていたもう一匹の自動車サイズを斬り、4匹になったビニールプール大の四連続『鎌化振り回し』攻撃を飛び込み前転でかわす。
「はい【ゴリラアーム】! からの……おっとっと! もう一回【ゴリラアーム】!」
そして飛び込み先のスライムをつかんで投擲してぶつけ、すぐさま次のスライムをつかんで、軽く手をすべらせてお手玉。
あらためてつかみ直したところで投擲。
ぶつかり合ったスライムは分裂し、これで毒スライムは通常サイズのものが16匹になった。
すると全てのスライムがメイを取り囲み、同時に強く輝き出す。
「来るわ! 大技よっ!」
16匹が同時に放つ一斉攻撃は、ドンッ! という砲台のような爆発音から。
1匹1メートルほどのスライムが、砲弾のような勢いで飛び込んでくる状況に回避法などない。
仮にこの場を離れることに成功したとしても、今度は『再合体』してくるだろう。
一人で受けろというのは、あまりに厳しい攻撃だ。
「……っ!」
誰もが息を飲む、緊迫の状況。
しかしメイは、慌てない。
「【装備変更】」
その言葉が聞こえた直後、16匹の怒涛の突撃にメイが飲み込まれた。
目前の悲惨な光景に、思わず唖然とする観戦者たち。
「……ん?」
直後、一本の剣が空を飛んだ。
毒だまりに突き刺さったのは、【王蜥蜴の剣】
【トカゲの尻尾切り】によって16匹同時特攻を潜り抜けたメイは、再びその手に【蒼樹の白剣】を握る。
「いきますっ!」
16匹全てが一斉にメイを狙ったために、1匹残らず一か所に固まってしまっている状態。
スライムたちは慌てて再合体しようと動き出すが、時すでに遅し。
「みんなまとめてー! 【ソードバッシュ】だああああ――――っ!!」
振り降ろされる剣から放たれる、猛烈な衝撃波。
毒液を吹き飛ばしながら進み、スライムたちに炸裂。
消し飛ばされた16匹のスライムは、そのまま粒子になって消えていった。
「やったー!」
「さすがメイね! 最後の16匹同時攻撃を普通にかわすなんて!」
「レンちゃんと一緒だったおかげだよ!」
【王蜥蜴の剣】を回収したメイは【輝石】を手にすると、そのままレンたちのもとに駆け戻ってきてハイタッチ。
「残りHPはどのくらい?」
「3/4くらいかな」
「「「っ!?」」」
その言葉に、目を見開く観戦者たち。
「HP……どうなってんだよ……」
スライム相手には、攻撃をもらっていないメイ。
毒による凄まじいスリップダメージも、そのHPの高さなら問題なし。
余裕を残しての勝利となった。
「ここ、おそらく毒の効果を薄めるクエストが別にあるんでしょうね」
レンの予想は正解だ。
本来は別クエストのボスになるはずだった巨大スライムを、弱体化なしでの勝利。
これで早くも【輝石】が二つそろった。
「……行くぞ」
それにもかかわらず、アングル陣営は【輝石】を狙おうとはしない。
メイのすさまじさを目前にして、スライムマップから急いで立ち去って行ったのだった。
◆
「まーた先を越されちゃったってこと?」
「そう……みたいっすね」
わずかに遅れての到着。
【輝石】を難なくそろえたメイたちを見つけて、いよいよ困惑するキングマン。
探索型プレイヤーよりも早い発見を繰り返しているメイに、翔二郎も驚きを隠せない。
「……あれが噂の野生児か」
そこにやって来たのは、大剣を担いだ深蒼鎧の女性剣士。
七新星の一人、アルマーダ。
「アルマさん。今ならHPも減ってるはずだし、【輝石】も二つそろうっすよ」
翔二郎は三人がかりでの襲撃を提案。
「ふむ……私は遺跡の発見に動いていたのだが、すでにフロンテラ陣営のプレイヤーたちを遺跡前に集めている段階だ。攻めるのならそこで一気にいくべきだろう」
「【輝石】が二つあっても、遺跡に納めない限りは意味ないもんねぇ」
「持っているだけで狙われる【輝石】は彼女たちに運んでもらい、遺跡で叩く。フロンテラ陣営と我らが共に戦えば、確実に奪うことができるはずだ」
「なるほど、了解っす」
こうして七新星の三人は毒だまりを離れ、急ぎ足で遺跡へと向かうのだった。