軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

416.戦いの終わりに

「メイーっ!」

倒れた悪の大魔法使い。

普段のどこかとぼけた感じを、忘れてしまったかのような勢いでメルーナが抱き着いてくる。

「よかったー! 魔法学校が悪の巣窟にならずにすんだー!」

「やったわね! 【狼耳】のラッシュ、すごかったわ!」

「お見事でした!」

すぐに駆けつけてきたレンとツバメも、そのまま二人に飛びついた。

「す、すげえ……」

「あんな化物みたいなボスを、本当に倒しちまった……!」

「とんでもない戦いだったな! 最後の地盤が突き上がるスキルとかヤバすぎだろ!?」

魔法学校住人たちからすれば、これまで見てきたどのボスよりも強力だった悪の大魔法使い。

それを怒涛の攻勢で翻弄し、その上を超えていったメイに驚きしかない。

そんなメイを見事に補助したツバメやレン、そして同じ魔法学校住人のメルーナ。

四人が抱き合う姿に、興奮が止まらない。

「皆さん、ありがとうございましたーっ!」

そしてうれしそうにブンっ! と、頭を下げたメイに思わず歓声をあげる。

「メイちゃん最高かよぉぉぉぉっ!」

「マジで最強のパーティだなっ!」

「復活した悪の大魔法使いを倒して魔法学校を守るとか……最高のシナリオじゃねえか!」

魔法学校住人たちもハイタッチしたり、拳を突き上げたりと大喜びだ。

「お前もよくやったな!」とバインバイン叩かれているスライムも、「次こそは活躍を!」と意気込んでいる。

「このグレイシアに、土を付けただけのことはありますね」

そんな光景をしり目に、壁に寄りかかったまま息をつくリリーネ。

「――――このまま終わるものか」

そんな大団円の中に、暗い声が聞こえてきた。

「……なんだ?」

崩れた素体から飛び出した、黒い煙の集合体。

鈍い輝きを灯す悪の大魔法使いの魂が、突然暴れ出した。

「貴様でいい! その身体を寄こせぇぇぇぇ!!」

「「「うおおおおおお――――っ!?」」」

そして恐ろしい雄たけびと共に、青バラのリリーネへと襲い掛かる。しかし。

「な、んだと……っ!?」

巻き起こる風と共に現れたのは、魔法学校長。

手にした【封魔の箱】は、猛烈な勢いでアーデンバルドの魂を吸引していく。

「ふ、ふざけるな……っ。このまま、このまま終わって……たまるああああ――――っ!!」

悪の大魔法使いの魂は、怒りの声と共に箱の中に吸い込まれていった。

「君たちのような、向こう見ずな生徒は困るのぉ」

【封魔の箱】を閉じ、封印のカギを新たに施した学校長は、そう言って苦笑いを浮かべた。

「……よくぞ悪の大魔法使いを倒し、クインフォード魔法学校を救ってくれた」

そしてメイたちに向けて、感謝の言葉をかける。

「魔力を使い切った悪の大魔法使いは、これでまた長き眠りを強いられるじゃろう……魔法界最高と呼ばれた魔導士を打ち破る者が、この学校から生まれたことを誇りに思う」

そう言ってほほ笑んだ学校長は、踵を返した。

「最高の魔導士よ、あとで中央塔最上階にある校長室に来るといい」

そんな言葉を残して。

「肝心な時に出てこないけど、いいところを持っていく大物はここでも定番なのね」

その背中に、思わずツッコミを入れるレン。

「校長はメイの戦い方を実際に見てもやっぱり『魔導士』って言うのかしら」

完全にパワーと速さで魔法を打ち破った形のメイを思い出して、くすくすと笑い出す。

「他のセリフが用意されていても、それはそれで笑ってしまいますね」

ツバメもつられて笑う。

「さて、それじゃあそろそろ戻りましょうか!」

「すっかり夜更かしになっちゃったね!」

「でもー、最高に楽しかった!」

「それは間違いありませんね」

魔法学校攻略組はフロアを戻り、旧研究塔の一階へ。

「お疲れさまでしたぁ。楽しい時間をありがとうございます」

すると魔女帽子のお姉さんが、手を振っていつものログアウト場所へと帰っていく。

どうやら、翌日の予定があるにもかかわらず「こんなのやめられない!」状態だったようだ。

「マジで最高の戦いだったな!」

「メイちゃんたちと一緒に駆け回れてよかったよ!」

「本当に物語の主人公みたいだったぜ」

「えへへ、ありがとうございますっ!」

うれしそうに頭をかくメイ。

「魔法学校に、最強の野生児が転校してきたって感じだったよな!」

「野生の部分は忘れてくださーいっ!」

だがそこだけは譲れない。

両手で『バツ』を作って「お忘れくださいっ!」と言って回るメイの姿に、広がる笑い声。

「ふふ、確かにはたから見たらそうにしか見えないわよね」

「その仲間がアサシンだったり、闇の使徒だってのも最高だったな」

「闇の使徒はジョブじゃないし、私はもう卒業してるの!」

一転即座の訂正を入れるレンに、今度はメイとツバメが笑う。

手を振りながら、うれしそうに立ち去って行く魔法学校住人たち。

最後に残ったのはメイたち四人だけ。すると。

ととと、と数歩前に出たメルーナが振り返った。

「ずっとー、ドキドキしっぱなしだった」

トレードマークのオレンジのマフラーを両手で握りながら、ほほ笑む。

「魔法の世界にあこがれて『星屑』を始めてー、死に戻りを繰り返しながらクインフォードにやって来た。それから何年もの時間が過ぎてー……」

メルーナは、これまでの時間を思い出す。

「メイたちとした冒険はー、ずっと忘れない」

クインフォード魔法学校は、夜の部が終わりを迎えるところ。

夜明けと共に、広がっていく陽光の中。

「ありがとうメイ、ツバメ、レン……魔法学校の物語。さいっこうに、楽しかったー!」

笑いながら、物語の終わりを迎えた。

「こちらこそだよーっ!」

思わず抱き合い、笑い合うメイとメルーナ。

こうして四人は、クインフォード魔法学校に潜んでいた最大の難関クエストを、見事に攻略してみせたのだった。