軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

390.夜の部スタートです!

「すごーい……」

ひと時の休憩を挟んで再ログインしたメイは、夜の魔法学校に戻ってきた。

そして、広がる光景に思わず辺りを見回す。

学生寮塔のラウンジは、この時間になると大きく雰囲気が変わる。

大きな窓から見えるのは、魔法学校の各所に設置された魔法灯の橙色の輝きと、月に照らされた石造りの塔の並び。

深い絨毯と並んだソファ。

その配置は変わらないが、穏やかな光が照らす空間は、魔法世界のどこか妖しい雰囲気を感じさせる。

「クインフォード魔法学校はー、夜はまた全然違う雰囲気になるんだ」

さっそく駆け寄って来たメルーナが、うれしそうに説明する。

魔法動物塔のミッション攻略から、青バラとの対戦を連勝で片付けるという奇跡。

メイたちがログアウトをした後も「すごかったー!」と、高揚しっぱなしだった。

それは「この時間に戻ってくる」という話をしたうえで一度ログアウトしたにもかかわらず、夜が待ちきれずにラウンジをウロウロしてしまうほど。

長らく停滞していた魔法学校のクエストを進めたメイたちの活躍は、マイペースなメルーナですら興奮してしまうほどに印象的だったようだ。

「夜になるのに合わせて出てくるクエストなんかもー、色々ある」

この時間は、生徒NPCたちも学校のエンブレム入りセーターやパーカーを着たりと、リラックスした格好になっている。

昼間とは違う、夜の学生寮塔らしい雰囲気だ。

「魔法学校の世界観はすごいわねぇ」

「本当です」

「どのクエストも本当に楽しかったね!」

続けてラウンジにやって来たレンたちに、メイが手を振る。

「うぇへへへへ。クインフォードはー、本当に楽しい」

難関クエストを攻略したうえに魔法学院を楽しんでいるメイたちを見たメルーナ、うれしすぎてちょっと気持ち悪い笑い方になる。

「メルーナも早かったわね」

「メイたちとの冒険がー、待ちきれなかった」

相変わらず、集合時間の30分前には集まってしまうメイたち。

メルーナが早くもそわそわしている姿に、レンは思わず笑ってしまう。

「レンちゃんも早く来てたみたいだけど、何をしてたの?」

「私は新しいアイテムを、どんな使い方ができるかの確認も兼ねて試してたの。今回は【変化の杖】なんかも見ておきたかったから」

どうやら、魔法薬塔で手に入れた杖などの効果を確認していたようだ。

「どうだったのですか?」

レンが取り出した【変化の杖】を掲げて使用すると、その姿が変わる。

「……まあ、予想通りの結果よね」

「レンちゃん可愛いーっ!」

そこに現れたのは、一匹の黒猫。

「かわいいです」

「かわいいー」

すぐさま抱き上げにいくメイ。

それに続くツバメとメルーナ。

「やっぱりー、猫はいい」

「……でも、黒である必要はないじゃない。これ色使いは完全にこれまでの装備品とかの嗜好からよね」

「レンちゃん、右と左で目の色が違うよ」

「しかもオッドアイなの!?」

「黒猫の登場で、いよいよ魔法世界の雰囲気が出てきましたね」

「まあ、色々と使い道が思いついたのは良かったけど……色は何とか変えられないかしら……」

猫に姿を変えても『闇の使徒』であったことからは逃れられないレンに、和んでしまうツバメ。

魔法ローブ姿のパーティと一緒だと、黒猫はとてもよく馴染む。

「で、夜間の魔法学校はどんな感じなの?」

もとの姿に戻ったレンが問いかける。

「昼間に出会った人物が意外なクエストを持ってきたりー、ちょっと怖い雰囲気のクエストも多い。でも一番ドキドキするのは『夜間禁止区域』」

「夜間禁止区域?」

メイが首と尻尾を傾げる。

「なぜかー、夜の間は踏み込んではいけない区間があるんだ」

「なにそれ……ワクワクするわね」

「本当だね!」

侵入できないのではなく、禁止されている区域という情報にメイたちは目を輝かせる。

「絶対に何かあるやつです」

「ただそこもー、じっくりと探し物をしたりはできなくなってるんだ。明らかに何かがあるのに見つかってない。これが本当に怪しい」

「楽しそうっ! 色々見て回ってみようよ!」

「夜の魔法学校。メイたちと一緒ならー、絶対に楽しくなる」

目を輝かせながら、うなずき合うメイとメルーナ。

「ドキドキしちゃうね!」

「はい! とても楽しみです!」

さっそく立ち上がったメイとツバメは、そのままレンの腕を取った。

「ちょっと待って。ちょっと怖い雰囲気のところでやるこのシステム、ここでもやるの?」

「はい」

「もちろんですっ!」

「いこー」

「メルーナまで!?」

隣にメイとツバメ。そしてさらに背中にはちゃっかりメルーナ。

メイたちはキャッキャと盛り上がりながら、夜の魔法学院へと踏み出していった。