作品タイトル不明
386.一対一の魔法対決です!
「メイはー、召喚士だったの?」
「素敵なお姉さんを目指す、普通の女の子ですっ!」
「やっぱり初めて聞くジョブ……後半一気にリードを付けた時はどうやったのー?」
「そ、それは、ええと、む、無我夢中でございましたっ!」
クインフォード魔法学校が誇るホウキレースを、見事三人で達成したメイたちは学生寮塔へ。
メルーナの先導でたどり着いたのは、生徒たちが集まるラウンジだ。
ここも大きなシャンデリアが橙の明かりを灯し、足元は深めの絨毯、そして古いソファやテーブルが並んでいる。
生徒NPCやプレイヤーが自由にくつろげる場所として作られているようだ。
「雰囲気いいわねぇ」
「本当だねぇ」
「ここはー、すごく落ち着ける場所」
四人は並んでソファに腰を下ろして、息をつく。
「ただー、物々しい一面もあるんだ」
そう言ってメルーナが指し示した先には、テーブルを挟んで向かい合わせの四人用ソファ席。
そこには、先ほどホウキレースで対決した青バラお嬢様たちが、横柄な感じで腰を下ろしていた。
「お嬢様に声をかけると対決クエストが始まるんだけどー、これがまたすごく強い」
「対決は、どういう内容なのですか?」
「ええとー、ラウンジの前にある舞台の上でー、魔法を撃ち合うの」
見れば確かに、ラウンジの一角に幅1メートル、長さ15メートルほどの廊下のようなものがせり上がっている。
「フェンシングの魔法版といった感じでしょうか」
「雰囲気としてはー、そんな感じ。ステージアウトしたら負けになるんだ。この勝負で青バラのお嬢様まで全勝できればクエストクリアー。これがもう一つの魔法学校看板クエスト」
どうやらここも、お嬢様三人に勝てば達成という形になっているようだ。
「一対一の魔法対決ねぇ……」
「ここではどのような戦い方ができるのでしょうか」
立ち上がったレンとツバメが舞台に視線を向けると、メルーナがたずねてくる。
「どういう感じの勝負になるかー、見ておいた方がやりやすい?」
「まあ、それはそうね」
レンがそう言うと、メルーナは立ち上がった。
「それならー、まず私が挑戦する。最初の子にも勝てないけどー、雰囲気はつかめると思う」
お嬢様たちのテーブルに足を運び、対決クエストを申し込む。
すると三人のお嬢様NPCたちは「身の程知らずですね」と余裕の笑みを見せた後、舞台へ足を進める。
最初に上がったのはやはり、茶髪のショートカットお嬢様だ。
「杖を構えた状態から始まるのね。その上でこの狭さということは、真正面から走って叩きに行くっていうのは難しいわ」
横幅がなく、縦に長いステージ。
その両端に立った状態から始まる戦い。
杖を向けられた状態で始まるというのは、近接スキル使いにはかなり厳しい形になる。
やはりここは魔法学校。
【魔法】と【知力】のマップだ。
「それでは、始めましょうか」
メルーナが指定のポジションに立つと、銀髪お嬢様が手を振り降ろす。
「用意、スタート!」
「「【ファイアボルト】!」」
二人が放った魔法スキルは、舞台の中央部でぶつかり弾ける。
「「【ファイアボルト】!」」
すぐさま放たれる二発目。
これも弾けて消えるが、リキャストは茶髪お嬢の方が早い。
「「【ファイアボルト】【ファイアボルト】【ファイアボルト】!」」
連発される炎の弾丸に、メルーナは押されていく。
「【ファイアボルト】!」
「ここっ!」
メルーナは思い切って片ヒザを突き、炎の弾丸をギリギリで回避。
「【アクアストライク】!」
即座に中級魔法で反撃をしかける。
「っ! 【フレイムシェル】!」
反撃は同じく中級魔法。
【フレイムシェル】は、茶髪お嬢様の目前で【アクアストライク】とぶつかり弾けた。
「「「惜しいっ!」」」
響く魔法学校住人たちの声。
「「【ファイアボルト】!」」
両者は再び初級魔法を放つ。
「【ファイアボルト】!」
ここで優位を取ったのはやはり、茶髪お嬢様。
中級や上級のように威力の高い魔法なら、直撃しなくても衝撃などでステージアウトを狙うことができるが、初級魔法の方がキャストもリキャストも早い。
そしてお嬢様たちは、このキャスト・リキャストタイムの早さを武器にしているようだ。
「くっ」
これを喰らったメルーナは、後方へ弾かれた。
「【ファイアボルト】【ファイアボルト】【ファイアボルト】!」
すぐに防御に回るも、連射される炎弾に押し込まれていく。
そして、五発目の炎弾を防御したところで――。
「【アクアグレネード!】!」
「【ファイアボルト】!」
五発目と六発目の合間にできるわずかな隙を突き、茶髪お嬢様の頭上目がけて水榴弾を発射。
「「「おおっ!」」」
連射の隙間を突いて放った一撃は炸裂し、見事に茶髪お嬢様を場外へと弾き飛ばした。しかし。
最後の【ファイアボルト】を喰らったメルーナは、すでにステージ外に足を着いていた。
「ああーっ、惜しいっ!」
「残念ー。最後の一歩を我慢できていれば……」
両者共に場外へ出た場合は、先に落ちた方の負けとなるようだ。
そもそもあまり対決クエスト向きではないスキル構成のメルーナは、「残念ー」と息をつく。
「相手になりませんね」
茶髪お嬢様は、それを見て「ふふん」と笑った。
「お前も場外だった癖によく言えんなぁ!」
「ほとんどギリギリじゃねえか! 運が良かっただけで調子に乗りやがってよぉ!」
そして魔法学校住人たちは、そんな茶髪お嬢様に憤る。
これが長らく、クインフォード魔法学校で行われてきた対決クエストの流れのようだ。
銀髪お嬢様は余裕の笑みを浮かべ、青バラのリリーネに至っては興味を見せる素振りすらない。
「こんな感じでー、一対一の対決を続けていくことになるんだ。基本的に残りの二人はさらに魔法威力や攻撃手段が向上、リキャスト速度も上昇してると考えていいー」
「なるほどね……ありがとう。すごく参考になったわ」
「はい。どういう勝負になるのかつかめました」
勝負に敗れてまでクエストの流れを見せてくれたメルーナに、強くうなずいてみせるレンとツバメ。そして。
「あとはおまかせくださいっ!」
メイはそう言って胸を叩くと、にこやかな笑顔を見せた。