作品タイトル不明
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「……本当に静かね」
「あれだけ先に進んでいったのに、妙ですね」
たくさんのプレイヤーが先行していったにもかかわらず、静かな道ゆきに首を傾げる。
メイも辺りをキョロキョロと見回しているが、戦いの感じも、プレイヤーが駆け回る感じもない。
「皆まとめて罠にでもかかったのかしら」
途中二本の別れ道があったものの、その先に見えたのはブロックの積まれた行き止まり。
基本は真っすぐに進み、先のホールへと向かう作りになっている。
「足元に水が溜まってる……移動速度が下がるのはやっかいね」
たどり着いた広い空間には、ブロックがランダムに積まれていた。
そして足元には、15センチほどの水が溜まっている。
「とにかく進んでみましょうか」
「うんっ」
水が薄く張られた空間を、並んで進む三人。
その前に、突然ロボット兵が落ちてきた。
「「「ッ!!」」」
振り上げたロボット兵の手には、稲光をまとう魔法石。
レンはすぐさま、その意図に気づく。
「跳んで! 【浮遊】!」
「【ラビットジャンプ】!」
「【跳躍】!」
レンの言葉に反応したメイとツバメは、直上へ跳躍。
すると予想以上の広範囲に、雷光が駆け抜けていった。
「足元の水は、こっちの移動力を下げた上で敵の攻撃範囲を拡張する仕掛けになっているのね」
喰らえば、ダメージに加えて麻痺を受けることもある嫌らしい仕掛け。
「【跳躍】」
ツバメはすぐに近くのブロックに退避。
「【連続投擲】!」
四枚のブレードを放つが、ロボット兵は速い動きでこれをかわす。
そこから腕を振り上げると、ツバメの乗ったブロックの紋様が輝き出し、光の刃が突き上がった。
「【加速】【跳躍】!」
どうやらブロック上も安全ではないようだ。
「ブロック多めなのは水の上かブロックの上か、どっちで戦うか選べってこと。あるいは両方使えってことね」
「【投擲】」
ツバメはブロックから飛び掛かる形でロボット兵を狙い撃つが、これも回避された。
「【ラビットジャンプ】!」
続くメイの跳躍攻撃も、軸足を残した回転でかわしてみせる。
なかなかの回避能力を見せたロボット兵は、振り上げた手を再び水面に突き入れる。
「「ッ!!」」
二人は慌てて、左右に分かれるように跳躍。
「高速【誘導弾】【フレアアロー】!」
この隙に距離を取っていたレンは、魔法で反撃を狙う。
最速の攻撃を見事に着弾させるが、体勢を崩すには至らない。
すぐにその手を伸ばしたロボット兵の魔法石から、光弾が連射。
「マズっ!」
やはり足元の水が邪魔となり、二発ほど弾がかすめていった。
「でも、基本的にはこの戦い方が正攻法みたいね。それにこの状況を利用できるのはこっちも同じ」
ロボット兵はここで、雷光弾を連発。
水面に当たれば広がるその攻撃を前に、メイとツバメはすぐにブロックへ。
「【壁走り】【連続投擲】!」
ツバメがけん制し、そこにメイがブロック上から跳躍。
「大きくなーれ!」
【蒼樹の白剣】を伸ばして叩きつけにいく。
跳ねる大量の水飛沫。
このコンビネーションをロボット兵がどうにかかわしたところに、レンが魔法を叩き込む。
「高速【連続魔法】【誘導弾】【フリーズボルト】!」
回避を続けるロボット兵に見事にヒット。上手にダメージを取った。
見えてきた攻略法。すると。
「今だー! 行けえええーっ!」
「このボスの感じ、やっぱりこの先の部屋がスイッチで間違いないぞ!」
一斉に飛び込んできたお宝奪取組のプレイヤーたちが左右に分かれ、そのままホールの端を駆けていく。
「あれ? どういうこと?」
先に行ったはずのお宝奪取組の登場に、不思議がるメイ。
「やられたわね。ボスがいるうえにギミック有。やっかいなのに気付いて手前の道の積みブロックに隠れてたのよ。私たちが来るのを待って、戦いが始まったらその隙にこのフロアを駆け抜けてスイッチをオフにしようってことね」
「要するに、ボスを押し付けられたということです」
「なるほど……」
メイ、単純に感心する。
ブロックが大雑把に重ねられたこの空間は、ボスと自分の間にブロックを挟む形で走れば、出口にたどり着くことも可能だろう。
「よーし! うまくいったな!」
「このボス、人数いても結構きつそうだもんな!」
「メイちゃんたちの足止めもできたし、こりゃ最後のスイッチは俺たちのもんだ!」
「……うまいこと考えたわねぇ」
見事に作戦が決まって、歓喜しながらホールを駆けていくお宝奪取組。
「でも、そういうことなら容赦はいらないわね」
ここでレンはニヤッと笑い、メイとツバメに作戦を提案。
走る『お宝奪取組』が、ホール中央を通り過ぎたところで――。
「ツバメ! 今よ!」
「はいっ! 【加速】……【リブースト】」
ロボット兵の打撃を誘発させ、それを二段階の加速でかわす。
水による多少の速度低下も見越した、見事な回避だ。
「【フリーズブラスト】!」
生まれた隙を突き、レンが氷魔法で足元の一部を凍結させた。
ロボット兵の動きが、急激に遅くなる。
「さあ、うまくいくかしら?」
そこに飛び込んで行くのはメイ。
「【ゴリラアーム】!」
動きの止められていたロボット兵を、両手でつかむ。
「いきますっ!」
そしてそのまま、その場でグルグルと三回転。
「せーの! それええええーっ!!」
力強いフォームで、ロボット兵を放り投げた。
「…………ん? なんだあれ?」
気づいたお宝奪取組の一人が、まさかの事態に声を上げる。
「ボ、ボスだ! ボスが飛んでくる!」
「は!? そんなことあるわけが……本当に来たぁぁぁぁ――っ!!」
「メイちゃんが、ボスを投げてきたーっ!」
ボスはそのまま着水して転がったものの、壁もなかったため落下ダメージは軽微。
「「「…………」」」
あり得ない事態に、思考が停止するお宝奪取組。
ボスは普通に起き上がると、すぐさまその手に雷光を閃かせた。
「「「うぎゃああああああ――――っ!!」」」
付近一帯の水面をかける雷光が、お宝奪取組に強いダメージを与える。
「こ、こうなったら戦うぞ! 戦うんだ!」
飛んで来たボスは、そのままターゲットを目の前のお宝奪取組の先頭メンバーに変更。
【麻痺】状態になった者も出ている中、さらに魔法石を光らせる。
「【エーテルアロー】!」
「【フレイムショット】!」
「回避うまいなこいつ!」
「特攻が来るぞ! かわせぇぇぇぇ!」
「「「うおおおおおお――――っ!?」」」
始まるボスとお宝奪取組の戦い。
「ふふ。いい作戦だったけど、さすがにボスを投げて『返送』されるとは予想しなかったでしょうね」
「恐ろしい作戦です」
感嘆の息をつくツバメに、笑い返すレン。
「それじゃ、ギミックボスはお宝奪取組に任せて私たちは先に行きましょうか」
「りょうかいですっ!」
こうしてお宝奪取組の足止めに成功したメイたちは、ブロック上を移動して最後のスイッチの部屋へとたどり着いたのだった。