軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

353.予期せぬ大型クエスト

「……なんでしょう、この人だかり」

王都北ポータルにやって来たメイたちは、たくさんのプレイヤーで賑わう光景に足を止めた。

新マップ情報はものすごい早さで広まり、気合の入った連中が続々と遺跡都市に向けて移動を開始している。

「この急な集まり具合、もしかしてもう一つの装置を別のプレイヤーが起動させたのかもね」

「そういうことですか。情報もないのに、すごいですね」

隠されていたマップの登場。

そこに絶賛注目プレイヤーのメイがいるとの情報とくれば、プレイヤーたちが動くのは当然だ。

さらに掲示板にその情報が載ったことで、それを見ていたプレイヤーたちも続々と集まってきている。

「おおー、これはまた賑やかになりそうだねっ」

「そうね。それは間違いないわ」

そんな光景を見て早くも楽しそうにしているメイに、レンたちもうなずく。

『新しい装備やアイテムが手に入るのではないか』と急いでいるプレイヤーが多い中、メイと楽しく遊べることが一番というレンたちの姿勢は変わらない。

三人は歩いてポータル前に着くと、そのままラプラタへと移動。

青い光の走る、中央層ホールにたどり着いた。

そして下層のホールへと進むと、先行していた考古学者が振り返った。

「待っていたぞ! さあ見ていてくれ! 古代の都市遺跡が開かれる歴史的瞬間だ!」

「お、あれがPVのメイちゃんか」

「この新マップ、メイちゃんたちが見つけてたんだな」

「本当にすごいな……どうやってたどり着いたんだろう」

集まっていたプレイヤーたちは、考古学者と会話するメイを見て感嘆の息をつく。

「……いよいよ始まるぞ」

「やっぱ新マップはワクワクするなぁ」

考古学者が不思議素材のカギを取り出し、集まって来たプレイヤーたちが歓喜の声を上げる。

最奥部の壁にカギを差し込むと、石灰色のブロックたちが動き出し、そこに道が生まれていく。

「わあ、すごーい!」

「雰囲気あるわねぇ」

「これはワクワクします」

やがてブロックが動きを止めると、そこにはいくつもの道が生まれていた。

「これで遺跡内部に入ることができる! 研究の始まりだ!」

期待の雰囲気に、盛り上がっていくホール内。

「慌てて走って行ったから、もしやと思ったんだが……どうやら当たりだったみたいだな」

するとそこに、一人の探検家風の男がやって来た。

「お前は……」

考古学者NPCが嫌そうな顔をする。

「俺もトレジャーハンターとしてこの遺跡には目を付けていてな。調べた限り、この遺跡には『お宝』アイテムがたんまり貯蔵された部屋がある」

「だからなんだ?」

「だがその扉を開けるには、メイン動力を破壊して街自体を完全停止させる必要がある……これはお前も知ってんだろ?」

「お前……まさか」

「そういうことだ。動力部を破壊してラプラタを停止させ、お宝を頂こうってわけだ」

「そんなことさせるものか……っ! ラプラタの歴史を知ることは世界の歴史や未来を知る礎になる! それを宝欲しさに破壊するなんて許されない……!」

始まる、二人のNPCのにらみ合い。

『――――クエストが発生しました』

するとそこに、アナウンスが入ってきた。

「なんだなんだ?」

「ここでクエスト? しかも集まってるプレイヤーにまとめて提示されてるぞ」

『――――動力部を破壊することでラプラタを停止させ、お宝を得る。トレジャーハンター』

『――――動力を守りラプラタを保存する。考古学者』

『――――どちらかの陣営に付き、遺跡都市の行く末を決めてください』

『――――動力部を破壊すればトレジャーハンター組の勝利。宝を得ることができます』

『――――動力部を守り抜けば考古学者組の勝利。遺跡都市を保存することができます』

「なんだ、このクエスト……」

「二派に分かれるのか、イベントみたいだな」

思わぬ展開に、驚くプレイヤーたち。

視界に現れたウィンドウには、早くもどちらに付くかの二択が表示されている。

「なんだか騒がしかったから来てみたけど……あはは、こりゃラッキーだね」

そんな中、聞こえてきた声。

「おい、あれって……」

「……蘭とすみれだ」

気が付けば、下手なイベントを超えるほどのプレイヤーが集まっていたラプラタ。

すでにホール外にまで並んでいる大量の参加者たちを割るようにして、二人組がやって来た。

「良い武器一つでトップにだってなれるんだ。宝があるなら取りにいくに決まってるよなぁ。遺跡なんか宝探し以外に用はないんだから無くなったっていい」

先頭を行くのは、紺の鎧に二本の大剣を持った少女。

大雑把に結んだ茶髪の少女は、強気の笑みを浮かべたまま『トレジャーハンター』側に付くことを宣言。

「悪いけど、一番の宝はあたしがもらうよ」

そう宣言して、考古学者と隣り合うメイたちにも挑発的な笑みを向けると、集まったプレイヤーたちを差し置き奥部へと進んで行く。

「あ、あのっ、ごめんなさいっ。後から来てこんな勝手なことを……」

身長はメイと同じくらい。

肩口で切りそろえられた髪は黒く艶やか。

鮮やかな鞘の日本刀を提げた可憐な少女が、メイたちの前に来てぺこぺこと頭を下げる。

「いえいえー」

しかしメイは、にこやかに返す。

「新しいマップ楽しみですねっ! がんばりましょうっ!」

どこか自信がなさそうな少女は、メイに明るい笑顔を向けられてちょっと頬を赤くする。

「は、はいっ……ありがとございますっ」

そして大きくもう一度頭を下げると、不器用な感じでほほ笑み返した。

「おーい、なにやってんのさ。早く行くよ」

「あ、お姉ちゃん待って……っ」

それからもう一度頭を下げて、重装剣士の後を追いかけて行った。

「姉がとにかく強くて好戦的だからか、妹ちゃんはずっとあの感じだな」

「まあ基本、妹ちゃんは姉の後を追いかけてるだけだからなぁ」

「今、姉はレベルのトップランカーとかだろ」

「しかも普通にクエストに割り込んでくるタイプだからな、気を付けよう」

傍若無人系の姉と、気弱な妹の有名高レベルコンビ。

姉の『蘭』はクエストに割り込んできて、その強さで圧倒。

全てを独り占めにして去って行くことも多く、恐れられているようだ。

「でも実際、宝がもらえないなら遺跡を残しておいても意味ないよなぁ」

「それはそうだな」

そんな会話が各所で行われ、新マップ目当てのプレイヤーたちは次々に『トレジャーハンター』側に付くことを決めていく。

「わたしたちはどうしよっか」

「私は保全派ね」

「私もです」

メイがたずねると、レンとツバメは悩むことなく応えた。

「遺跡の動力が止まるってことは、各所の魔力充填ができなくなるんでしょう?」

レンがたずねると、考古学者は静かにうなずいた。

「それって、あの植物園ロボットが動かなくなるってことじゃない?」

「え……」

メイ、愕然とする。

「そ、そんなの嫌だよーっ!」

砂地になった植物園を、一緒に取り戻したロボットのことを思い出してブンブンと首を振る。

「きっと何年、いえ何百年と同じ道を往復して、一人で植物の手入れをしていたのだと思います」

ツバメも『一人きりで続けていた』という点に、深く共感しているようだ。

「あの子のことを考えると、遺跡を止めろとは言えないのよね」

「レンちゃんツバメちゃん。わたしも遺跡を、ロボットちゃんを守りたいですっ!」

尻尾をピンと立てて、気合を入れるメイ。

こうしてメイたちは考古学者側に付き、遺跡を守ることに決めたのだった。