軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

347.荒れ地に緑を!

機械兵を倒して入り込んだパーツ倉庫。

そこには、板チョコレートの表面のような造りの白いロッカーが並んでいた。

各パーツの図が分かりやすく描かれたロッカーの中から、脚部パーツを取り出す。

あとはまた、人のいない都市遺跡を戻るだけだ。

「ただ今戻りましたー!」

メイが元気にロボット待機所に戻ると、『ロボットの破損部分を新しい部品に交換する』という文字が分かりやすく表示された。

決行すると、ロボットの目になっている部分が緑にチカチカと瞬いた。

「なんか、よろこんでるみたいだね」

メイもうれしそうに笑う。

すると脚部が直ったロボットは、以前よりも軽快な動きで外へ向かって歩き出した。

「付いていってみようよ」

三人は並んで待機所を出る。

メイはロボットの周りを行ったり来たり、回ったりしながら後を追う。

脚が直ったロボットは階段を降りることが可能になり、その途中にあった扉を開く……が開かない。

どうやら魔法石を用いた機械が壊れており、扉の開閉ができなくなってしまっているようだ。

「ここを通りたいんだね」

そこでメイは、上下開きの扉の下部にある出っ張りに指をかけ、力を込める。

「よいしょっ!」

すると扉は、あっさり持ち上がった。

「本来は協力して【腕力】の合計値で開けるタイプの仕掛けなんでしょうね」

「三人パーティでも、メイさんがいれば問題なしですね」

扉から続く道は、作業用通路を思わせる。

配管などがむき出しになっている道をロボットに続いて進み、たどり着いたのは制御室らしき小部屋。

並んだレバー、その中から下がっているものを見つけてロボットが上げる。

「何だろう、この音……」

ロボットは来た道を戻り、再び乾いた土の階層へ戻っていく。

そして地面から出た、円形のハンドルを回す。

すると少しの時間を開けて、地面を走る金属パイプから一斉に水が吹き上がった。

「わあーっ! すごーい!」

空にかかる虹を見ながら、ぴょんぴょんと跳び回るメイ。

「水の供給が止まっちゃってたけど、足が壊れてて直しに行けなかったのね」

「だから配管からこぼれていた水を集めて、生き残りの植物に与えていたのですか……」

しみじみとロボットを見つめるツバメ。

だがその足は止まらない。

砂にしか見えなかった土が柔らかさを取り戻したのを確認して、今度は待機所近くの小屋へ。

そこにはまた板チョコレートの表面のようなロッカーが並び、様々な植物の絵が描かれている。

ロボットがスイッチを押すと、取り出し口からたくさんの種があふれ出してきた。

「わっ、いっぱい出てきた!」

その量はとにかく多く、あふれ出した種でロボットが埋まってしまう。

「なんだか愛嬌のある子ねぇ……」

「放っておけない感じですね」

「この種の量。手伝って種まきを終わらせろってことかしら」

レンは倒れたロボットを起こして、種をインベントリに入れてみる。

すると大雑把に『種』というアイテムが99個ずつに分けられて、アイテム欄に表示された。

「お手伝いしましょうっ!」

「はい、広い面積をこの子だけでは大変です」

ロボットの速度は決して速くない。

レンたちはそう判断して、種を得て小屋の外へ。

「それじゃ、私も試させてもらおうかしら」

【浮遊】を発動すると、いつもよりスムーズな離陸を果たす。

【夜風のローブ】によって飛行性能を上げたレンは、そのまま空を舞う。

「いいじゃない。これなら回避にも使えそうだわ」

空を自由自在とはまではいかないものの、弓術師に的にされてしまうことはないだろう。

レンはスイスイと空を行き、持ってきた種を空中から土に蒔いていく。

「おおーっ! レンちゃんいよいよ魔法使いって感じだね!」

「ぜひ箒にも乗ってみてもらいたいです」

「……箒があれば、中二病より魔女っぽさが先に立つかしら」

そんなことを考えながら空を行くレンに手を振りつつ、メイは身軽な動きで種を撒き、ツバメも速い移動で散布を開始。

高層は下層に比べれば面積が狭いものの、見渡すほどの広さがある。

「これ、人数が少ない上に移動力のないパーティだったら時間かかるわねぇ」

「ゆっくりとしたクエストなんでしょうね」

それでも三人の手伝いによって、種はしっかりと迅速にまき終わった。

「さて、こうなったら最後にやることはもう一つだけよね」

「そうですね」

ロボットも十分種が撒かれたと判断したのか、待機所前で広がる光景を眺めている。

それを確認して、二人はメイを見る。

「それではメイさん」

「お願いね」

「おまかせくださいっ! 大きくなーれっ!」

メイが【密林の巫女】を発動すると、近くの種たちが一気に芽を出し葉を伸ばす。

「大きくなーれっ!」

メイは踊るように進み、クルクル回りながら【密林の巫女】を発動。

三人とロボット一体で蒔いた種は次々に発芽し、緑の面積を広げていく。

「大きくなーれっ、大きくなーあれっ!」

「戦いの中ではなく、穏やかな状況での【密林の巫女】……メイさん本当に自然を司る巫女のようです」

「こういうのは、元気なメイがよく似合うわね」

ステップを踏む度に、両手を上げる度に、伸びゆく緑。

レンもツバメも、メイのそんな姿をじっと見つめる。

メイはわずか数分で、枯れ土層を緑の大地に変えてみせた。

「ここはまだ都市だった頃に、植物園として使われていたのかもね」

広がる風景には憩いの場としての雰囲気があり、レンはほっと息をつく。

「わっ、ツバメちゃん見て見て!」

するとそんな緑の続く光景を見て、ロボットが両腕をグルグル回して目を緑にピカピカさせ始めた。

「やる気十分といった感じですね。なんだか可愛いです」

「あはは、本当だねっ」

そう言ってメイも同じにように手を回し、尻尾をブンブン振り回す。

「……なんだか新鮮な感じねぇ。こういう荒れた土地を修復するなんてクエスト」

レンは植物園層の外壁に腰を下ろし、遠く海まで続く風景を眺める。

石灰色の遺跡都市、抜けるような南方の青空、そして無人の遺跡という光景はなかなか見られない。

「こういうのもいいですね……三人一緒だと最高です」

静かな遺跡都市。

隣に立ったツバメがつぶやく。

「本当だね。このクエスト受けて良かったよ」

背中に抱き着いてきたメイに、思わずドキドキしてしまうツバメ。

その背後では、ロボットがうれしそうに駆け回っている。

「やりがいのあるクエストだったわね」

「うんっ、すっごく楽しかった!」

水はなく、土も乾いて、わずかな草花を残すのみ。

管理人のロボットは破損であまり動けない。

そのうえ、本来なら植物たちがしっかりと伸びるまでにある程度の時間もかかる。

そんな荒廃した無人の植物園層クエストを、メイたちは一緒に乗り越えたのだった。