作品タイトル不明
316.投棄場から続く道
「た、助かった……投棄場からの出口はこっちだ」
【恐るべき失敗作】こと、ミドガルズオルムを打倒したメイたち。
【投棄場】の最奥部には道が続いているが、元老院兵はその途中にある鉄扉に足を向けた。
そこにあったのは、四ケタのダイヤル錠。
「ここがまだ研究場だった時に、元老院兵用の通用口になっていたんだ」
「元老院兵の防衛に失敗してたら、遠回りの道を進まされてたっぽいわね」
レンの予想は正しい。
道なりに進んでしまうと、カギの入手や仕掛けといった時間稼ぎの相手をしなくてはいけなくなってしまう。
ここでもメイたちの進んできた道は、最短と言っていいルートだ。
「これも皆さんのおかげですね……どうしたのですか?」
「ああいや、道案内が終わったらとりあえず元老院兵に一撃入れようと思って」
「ええっ!?」
まさかの言葉にメイが驚く。
ひたすらビビって、回避すらろくにしなかった元老院兵。
ブレスやら毒液やらを喰らわされた同行パーティの面々は、武器を手に目をギラギラさせていた。
「ふふ、お嬢様の送迎イベントの時みたいな感じね」
ロマリア到着後に受けたクエストを思い出して、笑うレン。
「この道はもう使われてないんだが、ここを進んでいけば……」
メイたちはいかにも裏道といった風情の、狭い石造りの道を進んでいく。
やがてまた鉄扉が現れ、そこを開くと――。
「ここが新実験場だ」
「またここも薄暗いわねぇ」
岩石層を削り抜いて作られた通路。
新実験場の内部、長い長い通路の途中にメイたちはたどり着いた。
「それじゃ俺はここで帰らせてもらうぜ。こんなところにいたんじゃいくら命があっても足りやしねえ」
スッと、武器を構える同行パーティの面々。
「……もう王都にはいられねえし、故郷に戻って……のんびり生きることにするよ」
またスッと、武器をしまう。
「あれ、どうしたの?」
「放っておいても、故郷まで帰れないと判断したんじゃないかしら」
急に生温かい笑みを浮かべ出した同行パーティの面々に、首と尻尾を傾げるメイ。
『こんなところにいられねえ』からの『故郷に帰る』という二重の死亡フラグを立てた元老院兵に、同行パーティは溜飲を下げたようだ。
そんな状況に、レンはまた苦笑いするのだった。
こうして元老院兵は帰路につき、メイたちは新研究場の奥部へと向かうことにした。
長い一本道の左右には、黒の鉄格子が並んでいる。
グリフォンやワイバーンといった有名な魔獣から、先ほど戦ったキマイラ、見たことのないような獣まで。
そこには一体ずつ、大型の魔獣が詰め込まれていた。
「外の世界から無理やり連れてこられて、ここに閉じ込められているのですね」
「この子たちを狂わせて兵器として戦わせるって、かなり壮大な野望だわ」
「早く助けてあげようねっ」
従魔なのであろう個体などは、メイを見つけて寄ってくる。
メイは頭をそっと撫でると、「待っててね」と声をかけた。
一行は檻の道を進んで行く。
すると格子がなくなり、厚い鉄板にガラスをはめ込んだ小窓が道の左右に点々と並ぶようになった。
「ここも……檻なのですか」
そこはこれまでのものとは大きさがまるで違い、小窓はビルの10階から1階を見下ろすような位置に付けられている。
鋼鉄通路の左右は、岩盤をくりぬいて作られた巨大な檻になっていた。
「と、とんでもねえ光景だな……」
「あの時の巨竜ね」
通路左側の檻には、イベント開始時に王都の一部を破壊したドラゴンの姿がある。
「反対側にいるのは……なんだろう」
こちらに背を向けている魔獣は、何者か分からない。
ただし、こちらも巨竜クラスであることは間違いない。
閉じ込められている、二体の超大型魔獣。
ウェーデンのイベントで最後のボスとして現れたような化物が、二体も並んでいる状況だ。
檻の天井部分に差し込まれた大きな転移結晶は、この両者の移動用だろう。
「「「うおおおお――ッ!?」」」
突然、巨竜の吐いた炎が通路に噴きつけられた。
その迫力に、剣士と侍の前衛組が思わず悲鳴をあげる。
「びっくりしたなぁ、おい」
思わず尻もちを突いた同行パーティの侍が、息をつく。
小窓は炎を通さないオブジェクトになっており、ダメージはない。
王都地下に隠された強大な戦力に、同行パーティは思わず息を飲む。
「あっ、あの子はっ!」
そんな中、メイが指を差す。
檻の並ぶ通路の先は、ホールを交えた丁字路になっている。
王の子が入った檻を引きながらやってきた元老院兵たちは、ホール中央に施された円形の石床に乗った。
震える王の子は、鳴き声をあげるが――。
「うるせえ、静かにしろ!」
檻を蹴って黙らせる。
やがて石床に刻まれた魔法陣に光が灯り、元老院兵たちはそのまま下部へと移動していった。
「ひどいー!」
その光景に、尻尾をベシベシさせて怒るメイ。
「かわいそうです」
ツバメも心配そうな目をする。
「でも、かなり距離を詰めることができたみたいね」
元老院兵の案内によるショートカットもあり、メイたちはこれ以上ないほどの早さで新試験場まで到達した。
「このエレベーターを降った先で、元老院の偉いヤツが待ち構えてるんだろうな」
「間違いないでしょうね」
ゲーム勘のある者たちは皆、ボスが待ち受けている空気を感じて、回復や連携の確認を開始する。
「俺たちはすでに【恐るべき失敗作】戦で、かなり消耗しちまってるからなぁ」
「長くはもたないかもな」
「せめてMPを残して死に戻りなんてことにならないよう、気を付けようぜ」
特に前衛は装備とスキルを念入りに確認し、少しでも長く戦えるよう細かな調整を入れていく。
するとやがて、無人のエレベーターが降りてきた。
「それじゃ、行きましょうか」
「がんばりましょう!」
「「「おうっ!!」」」
メイたち三人と、同行パーティの面々は気合を入れてエレベーターに乗り込む。
「…………」
そんな中、一人辺りをうかがうツバメ。
そしてエレベーターは予想通り、新研究場の最深部へとたどり着いた。