軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

260.救出に向かいます!

「人質は東部の貴族邸にいる」

ヴァイキングの襲来によって占拠された、氷海の小国フィンマルク。

商館に陣取っていた三人のヴァイキングを無力化すると、人質の居場所を聞き出すことができた。

受けた依頼は、さらわれた跡継ぎ息子の救出。

商館オーナーが、街の現状を語り出す。

「突然何の前ぶれもなくヴァイキングが攻めてきたんだ。その手際はとにかく迅速かつ的確。あっという間にフィンマルクの主要部分を抑えられてしまった」

「王国側はどうしてるの?」

「小さな国だからな。王国軍も動き出してはいるが数が少なく、一気に街を占拠したヴァイキングのさらなる進攻を抑えるのに手いっぱいの状況だ」

「それでフットワークの軽いギルドに要請を出したって感じなのね」

商館オーナーの言葉に、レンは状況を確認。

「これ、無力化ミッションに失敗してたら居場所のヒントを探すところからになってたんでしょうね」

「ツバメちゃんのおかげだよっ」

「い、いえ、私は大したことは……」

最後のヴァイキングを危うく倒してしまいそうだったメイがほほ笑むと、ツバメは恥ずかしそうに謙遜する。

「これで次は貴族のお屋敷に忍び込んで、人質を連れ出すってフェーズになるわ」

「さっそく行きましょう!」

「息子を頼む」

「おまかせくださいっ!」

商館の一角に貼られた地図を確認して、ツバメは向かうべき方向を確認。

変わらず救助クエストに前向きなメイを先頭に、三人は商館を後にした。

「ここからは街をこっそり進んで、貴族邸に忍び込むって流れなんだけど……」

街中には、そこかしこにヴァイキングの姿が見える。

辺りを見回しながら歩く者、屋根の上から付近を警戒する者。

敵の目をかい潜りながら街を進むミッションは、なかなかの難易度だ。しかし。

「【投石】っ」

屋根上にいる見張りを、先に見つけたメイが石で倒す。

「あっちとこっちにも【投石】っ!」

「……あの位置にいる見張りを、先に見つけられるのね」

「大トカゲと戦ってる時に、鳥のモンスターに頭を狙われると大変だったから」

そう言って、懐かしそうに笑うメイ。

ジャングルでは、鳥型モンスターを先に見つけて落としておく作業は必須だった。さらに。

「ツバメちゃん、あっち」

「【アサシンピアス】」

近づいてきていたヴァイキングには、その足音を先に感知したメイの指示で素早く対応。

大技を使えば発見されて大騒ぎになってしまうという状況も、アサシンの刺突なら問題なしだ。

「二対一、三対一の状況を作らせないために、ジャングル時代には周りにも常に意識を向けてたって感じ?」

「正解ですっ」

「見張りと哨戒部隊をどっちも先に見つけちゃうって……とんでもないわねぇ」

市街における隠密ミッションも、野生児の【遠視】と【聴覚向上】があれば向かうところ敵なし。

本来コソコソと逃げて隠れて進まないといけないこのクエストを、三人は普段と変わらない歩みで貴族邸へ。

基本に則って、お屋敷の裏手に回る。

予想通り、見張りの数も少ない。

「【加速】【リブースト】【アサシンピアス】」

超高速で迫り、次の瞬間には必殺の刺突攻撃。

音の一つも出さずに、見張りのヴァイキングを倒す。

「ここから直接二階に行けるのが、私たちの強みね」

開いた窓を見つけると、メイとツバメは壁を蹴り上がって邸内へ。

レンも【浮遊】であとに続く。

「こういう場合は、二階の最奥が基本かしら」

広い廊下に高そうな調度品が並ぶ光景は、なんとも貴族らしい。

人質の居場所を予想しながら進むと、二階ホールに詰めていた二人のヴァイキングと鉢合わせた。

「「ッ!!」」

立ち上がり、すぐさま動き出すヴァイキングたち。

室内であることを考えて、ここはツバメが先行する。

「【紫電】」

即座に動きを止めると、そこに詰めて行くのはメイ。

「【装備変更】【キャットパンチ】」

【狐火】によって青い炎をまとった猫パンチで、斧を振り上げたヴァイキングたちを一気に沈めてしまう。

「あっ」

しかしそこに、邸内を見回っていたヴァイキングが偶然やって来てしまった。

何かを手に取る仕草に三人は身構えるが、取り出したのは意外にも角笛。

それは仲間たちに異常を知らせるための行動だ。

このままではやっかいな流れになるのが、目に見えている。

ちょっとだけ、慌て出すメイたち。

「く、【蜘蛛の糸】っ!」

ここでメイがとっさに使用したのは【蜘蛛の糸】

飛んで行った白糸は網のように広がり、今まさに角笛を吹こうとしていたヴァイキングを壁に押し付け拘束した。

三人は思わず互いを見合わせる。

寸前のところで回避した危機。

メイはいつも通り元気にハイタッチをしようとして、ピタリと動きを止めた。

「…………あぶなかったぁ」

そしてあらためて音を鳴らさないよう気遣いつつ、そーっと手を合わせる。

「てへへ」と笑うメイに、緩む緊張感。

レンとツバメは思わず笑い合う。

「へえ、拘束力も結構あるのね」

もがき続けるヴァイキングを、レンは指先で突いてみる。

動きはするものの、外れる気配はない。

「……それじゃ、このヴァイキングはこのままで」

「い、いいのでしょうか」

もがくヴァイキングをそのままに、二階最奥の部屋を開く。

そこには、ビシッと髪を七三に分けたベスト姿の青年が縛られていた。

「ありがとう、僕は大丈夫だ」

拘束用のロープを外すと、跡継ぎ息子は大きく息をつく。

「……君たちの高い能力を見込んで、頼みたいことがある」

そしてすぐさま依頼を持ちかけてきた。

派生クエスト。

メイたちは迅速かつ無傷で、商館の跡継ぎを助け出した。

それによって新たな展開が始まったようだ。

「実はここに連れてこられそうになった時、民間人が数人ほど連れて行かれそうになっていたんだが、偶然見回り中だった王国軍の副官が身代わりを買って出たんだ。彼がいるのといないのでは王国軍の指揮能力が大きく変わってくる。そこでだ……彼を助け出して欲しい」

新たなクエストも、内容は救出。

「おまかせくださいっ!」

早くもメイは、気合を入れ直すのだった。