軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

256.古き氷の洞窟

「静かですね」

「本当だねぇ」

三人がやって来た氷の洞窟は、モンスターが飛び出してきてもおかしくない幅の道が続いている。

それにもかかわらず、何かが襲い掛かってくる気配はなし。

探索に来たメイたちは、付近を注意深く観察しながら奥へと進んでいく。

興味深そうに辺りを駆け回るメイ。

別れ道もない洞窟を真っすぐに進んで行くと、複数人の採掘員NPCが倒れ込んでいた。

「君たちは……冒険者か」

「ギルドのお仕事で来ました! 大丈夫ですか?」

「何があったのですか?」

メイたちがたずねると、採掘員NPCは震える指で奥地を指さした。

「洞窟の奥に氷漬けの竜種がいたんだ。すぐにウェーデンのギルドに報告して、王国にも助けてもらおうって話になったんだが……一人の採掘員が面白がって近づいたんだ」

「目覚めさせてしまった系のモンスターってことかしらね」

「強敵の気配です」

「採掘員たちはここまで逃げ出してきたが……吹雪を喰らっちまって、ウェーデンに報告に行けるような状態じゃねえ……」

「そういうことなら、おまかせくださいっ!」

そう言って胸を叩くメイ。

「まずは行ってみましょうか」

「そうしましょう」

道は地下へと続いている。

三人が進んだ先に広がっていたのは、全面を厚い氷に囲まれた空間。

そこには、全身を氷に包まれた翼を持たない白色の竜が埋まっていた。

「すごーい……」

氷壁に眠る巨竜。

その壮大な光景に、思わず感嘆の息をつくメイ。

すると、氷竜の額の赤い宝石が輝いた。

「「「ッ!!!」」」

空中に生まれたまばゆい氷の砲弾が、高速で飛来する。

「【アクロバット】!」

これをバク転でかわしたメイは、すぐに距離を詰めに行く。

すると氷竜は、氷壁を砕き割ってその姿を現した。

「【ラビットジャンプ】からの【フルスイング】だーっ!」

豪快な一撃が、氷竜のまとった氷鎧を打ちつけ砕く。

しかしHPの減りは僅少。

「物理攻撃には特防ありって感じかしらね! 【フレアバースト】!」

続くレンの放った爆炎はそのまま氷竜に直撃し、大きく燃え上がった。

「全然減ってない……」

予想外の事態に、戸惑う三人。

メイの物理攻撃でも、レンの上級魔法でもダメージらしいダメージを取れていない。

「それならば【ヴェノム・エンチャント】【加速】」

ツバメは即座に『状態異常に弱い』と判断して、氷竜の懐へ。

「【四連剣舞】」

やはり氷竜の動きは遅い。

四連発の剣撃を難なく全て叩き込むと、そのまま二刀流による通常攻撃へ続けて高速移動攻撃へ。

「【電光石火】【投擲】!」

駆け抜けたところで放つは【黒曜石のダガー】

これで毒性値の蓄積は完了。

生まれた隙を、メイは逃さない。

「【ソードバッシュ】!」

衝撃波による追撃で一気に畳みかける。

氷竜は大きく体勢を崩したものの、それでもダメージはわずか。

「っ!」

氷竜の反撃。

宝石の輝きと共に、氷槍の雨が降り注ぐ。

「【バンビステップ】!」

「【加速】!」

慌てて範囲外へと回避するメイとツバメ。

「【フレアストライク】!」

氷竜はやはり、これを回避しない。

直撃を喰らい、身にまとった氷塊がさらに崩れ落ちる。

「攻撃は基本ほとんど当たるけど、氷の鎧でダメージが入りにくい。タンク型の前衛みたいなモンスターね」

メイの攻撃をもってしても微々たるダメージということは、『そういうシステム』になっているということ。

そしておそらく、氷の鎧を落とし切れば勝機が見える。

レンがそう判断した瞬間。

氷竜は突然、額の宝石を強烈に輝かせた。

爆発的に広がっていく、猛烈な氷煙。

「来るわ! 凍結に気をつけて!」

続くのは、空間一帯を薙ぎ払う氷刃の嵐。

メイはこれを【王者のマント】で振り払う。

「くっ!」

「なに、この威力……っ」

大慌てで距離を取ったツバメと、後衛の位置で防御に回ったレン。

それにもかかわらず、8割ものHPを減らされた。

この場にいる以上、完全な回避はほとんど不可能な攻撃。

それにもかかわらず異常に威力が高いことに、驚かずにはいられない。

「あれっ?」

「そういうこと……」

そして予想外の事態に、首をかしげるメイ。

「回復ですか……」

どうにか1割ほど減らしたHPが、完全回復。

そのうえ、氷の鎧も元の状態に戻っていた。

「攻撃がしやすいのにダメージの入りが悪いと思ったら、そういう戦闘だったのね」

「どういうこと?」

「ある程度自由に攻撃できるけど、決まった時間内に一定以上のダメージを与えて氷の鎧をはがさないと、手ひどい反撃を喰らわされる上に回復までされてしまう。そうなったらこっちだけ一方的に消費させられて不利になっていくって感じ」

「めずらしいタイプのモンスターですね」

「ただ闇雲に攻撃スキルを打ち込んでも、合間ができれば反撃を挟まれて時間を稼がれるのよ」

そして時が来れば、大量のプレイヤーを同時に追い込む即死級の反撃がくる。

仮に生き残ったとしても、立て直しにかかる時間がそのまま次の攻撃の時間を減らしてしまう。

先行したパーティが諦めることになったのは、この『壁』を越えられなかったからだ。

「そうなると、狙うべきは――」

レンはこのクエストの参加可能人数が多かった理由を理解する。

そして仮に人数だけが多くても、まとめて反撃で追い込まれてしまう難易度の高さも。

「……いいわ、そういうことなら狙ってみましょうか。ダメージを取り続けられるコンビネーションを……【魔眼開放】!」

氷の鎧を落とす『流れ』をシミュレーションしながら、レンはその右目を金色に輝かせた。