作品タイトル不明
255.氷の洞窟へ向かいます!
「ありがとうございました。追い続けてきたイエティを倒すことができて良かったです」
ソロで50回の死に戻りを繰り返したアニタは、そう言ってうれしそうにほほ笑んだ。
見事イエティを打倒したメイたちは、ウェーデンのギルドに戻って来ていた。
「これからは心残りなく『星屑』を楽しむことができそうです。皆さんとご一緒できて本当に良かった」
アニタは「とても楽しかったです」と、満足そうにログアウトしていった。
発見の難しさと、敵としての強さ。
その二つの要素を乗り越えなくてはならないクエストとあって、ポイントは高めだった。
それでもようやく、順位表の端にパーティ名がもう一度載った程度。
まだまだ上位とは開きがある。
「……このクエスト、気になりますね」
不意にツバメが目を留めたのは『古代の洞窟探索』
ここにきて新たに追加されたクエストは、ウェーデン北部に向かうもののようだ。
「古代の氷の洞窟かぁ……採掘員たちからの連絡が途絶えてるって、なんだかドキドキしちゃうね」
説明書きから感じる不穏な雰囲気に、思わず息を飲むメイ。
「推奨レベル60以上って、結構な難易度ね……」
「しかも受注パーティ数は同時に30まで可能。この大人数で挑む感じ……お使いというわけではなさそうですね」
「行ってみましょうか。何があるのかを見るだけでも楽しそうだし」
「わあ、ワクワクしちゃうよ! 何があるのかなぁ……っ」
さっそく古代洞窟のクエストを受注したメイたちは、期待に胸を膨らませる。
向かうのはウェーデン北部の山々から、氷の張った海へとつながる一帯だ。
今回の移動には犬ぞりを使用。
「よろしくおねがいしますっ」
すっかり仲良くなった暴れ犬と共に向かった洞窟は、全面が氷に囲まれていた。
昼間の時間帯は陽光を含み、青色の輝きが美しい。
「すごいねぇ、ツバメちゃん」
「はい……こんな光景初めて見ました」
「この感じで探索がメインっていうのがいいわね。しかも採掘員が戻ってこない理由は何なのかっていう謎もあるし」
見ればその内部には各所にランプが置かれ、道が照らされている。
人の痕跡があるのに、気配がない。
「はあー、ドキドキしちゃうよぉ」
その妙な光景に、うれしそうにレンに抱き着くメイ。
「はいっ」
ツバメもレンの腕を取る。
「このシステムは変わらず継続なのね。それじゃ行きましょうか」
「うんっ」
「行きましょう」
◆
それは少し前のこと。
ギルド館を出てきたメイたちは、犬ぞりを用意。
そのまま楽しそうに街を駆け抜けていく。
そこにすれ違う、数人のプレイヤー。
「アレはダメだな」
「やめておこうぜ」
「エンドコンテンツよあれは」
ギルド横に続々と集まってくるのは、総勢50人になる大パーティ。
リスポーンを果たした面々は、諦めの言葉を口にする。
「あっ、シオールたちだ」
そして偶然そこにクエストを終えて戻ってきたトッププレイヤー集団、闇の血盟の面々と顔を合わせた。
一斉に集まる視線に、シオールはゆっくりと顔を傾げる。
「どうされたのですかぁ」
変わらぬ穏やかな口調で問いかける、眼鏡のお姉さんシオール。
「この人数で挑んだクエストがかなりの難易度で、全員即座に死に戻りだよ……」
「あらあら、そんな大きなクエストがあるのですねぇ」
「おもしろそうですな」
話を聞いたシオールとなーにゃは、50人という編成に興味深そうにうなずく。
「そのクエストならば、我らを楽しませてくれそうだな」
「次はそれ、いってみちゃおっか」
リズがつぶやくと、さっそくローチェが提案する。
「あ、それなら俺たちも一緒に行きましょうか?」
50人パーティの剣士が問いかける。
するとシオールは、静かに首を振った。
「それでは統制が取れなくなってしまう可能性もありますし、まずは私たちで向かおうと思います」
「は、はい」
「それでも難しそうなら、助けていただけますか?」
そう言って、柔らかく笑うシオール。
「は、はいっ」
そこはトッププレイヤーだけで組んだパーティ。
四人は自信と余裕をもって、クエスト票を探しにギルド内へ。
「下手に数がいるより、少数精鋭の方がよい」
つぶやくリズ。
「あれれ、先行のパーティが一つあるみたいだねぇ」
すでに受注パーティがあることを知ったローチェが、可愛らしく首をかしげる。
「ならば、我らが着くまで生きていられるかが勝負だろうな」
「生きてればポイント、死んじゃってたらゼロだね。がんばって、先行パーティさんっ」
ローチェはそう言って、余裕の笑みを見せる。
闇の血盟の面々は、こうして新たなクエストを受注した。
そしてそれはまさに、先ほどギルド館を出ていったメイたちが選んだクエストなのだった。