軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

253.イエティ競争です!

「情報だとこの辺りですねぇ」

メガネのお姉さん、シオールがつぶやく。

闇の血盟の四人は、イエティを探しにウェーデンの雪原にやって来ていた。

シオールたちはウェーデンで馬を借り、リズは自前の黒馬になーにゃを乗せる形だ。

「いやいや助かりますなぁ。この子がいてくれてよかったよ」

「我が黒馬シャドウには、この程度たやすいものだ」

そう言ってリズは、スキルを発動する。

「シャドウ、【索敵】を開始するぞ」

たどり着いたのは、雪原の一角。

一見何もなさそうな光景が続いているが、リズの黒馬は付近の敵性動物や痕跡を感知するスキルを持つ。

「向こうだな」

「そんじゃ、行こっか」

相変わらずの軽いノリで言うローチェ。

四人は再び動き出す。

その方向には、狙い通りイエティが待ち受けている。

ケツァールに乗ったメイたちは、雪原の中に降り立った。

すでにイエティ探しに動き出している闇の血盟のこともあり、弓術師少女アニタは少し慌てて付近を駆け回る。

「この辺です……あ、そこに足跡があります!」

「なるほど、この大きな足跡を追うクエストなのね」

「イエティとビッグフットの特徴が混じった感じでしょうか。その辺りがクエストを追うためのヒントなのですね」

「……ちょっと待って、これ消えていってない?」

「はい。情報も少なめなのですが、足跡が雪に消えていくことで発見難易度が高くなっているようなんです。しかも毛皮が白いので一層見つけにくいみたいで」

消えていく痕跡、雪に隠れる白い毛皮。

これまで見つかってなかった理由がよく分かる。

「結構強いんでしょう?」

「はい、私がソロなのもありますがボス級です」

「一人だと、かなり時間がかかりそうですね」

「はい、4、5時間は覚悟して挑んでました。矢を撃って隠れて、追いかけて撃って隠れてっていう戦い方をするんです」

アニタは弓術師のため、必然的にヒットアンドアウェーの展開となる。

もちろんその分、敵のHPを減らすのに時間がかかってしまう。

「50回の試行錯誤、しかも他の人が気づいてないクエスト……やはりここでトップの方々にあっさり取られてしまうというのは寂しいですね」

ツバメはそう言って、深くうなずく。

ずっとソロだったこともあり、アニタの気持ちはよく分かる。

「よしっ、少し高いところから見てみるねっ」

それを聞いたメイは木に登り、枝をひょいひょい跳びながら辺りを見回す。

「すごいスキルですね……」

「どうですか、メイさん?」

驚くアニタ。

最後尾のツバメが問いかけた瞬間。

「ツバメちゃんっ!」

「【加速】!」

メイの叫び声を聞いたツバメは、その声色で『危機』を知らせるものだと即座に感知した。

状況を確認する前に移動スキルを発動。

するとその直後、さっきまで立っていたところに大きな拳を叩き込む白い毛皮のモンスター。

三メートルに迫る体躯と、舞い上がる雪片。

「出ました! イエティです!」

叫ぶアニタ。

駆け出したイエティは、そのままジャンプ一つで付近の木にあがる。

数本の木を渡り、程よい太さの枝を発見すると折って即席の棍棒を作成。

そして再び大ジャンプ。

ツバメに襲い掛かる。

「【加速】!」

強烈な叩きつけをかわすツバメ。

「【連続魔法】【ファイアボルト】!」

そこにレンが炎の弾丸を打ち込んだ。

対してイエティは、速い棍棒の振り回しで炎弾四つを全てかき消した。

そして空いた手で大きな石をひろうと、そのまま投擲。

「ッ!?」

後方にいたレンは、近くの樹木に身を隠す。

幹に直撃した石は外皮を大きく削り取り、木はメキメキと音を立てて倒れていく。

「シンプルな力技を使ってくるわね!」

イエティの速いステップは、ほとんど止まることがない。

走り続けに近い状態だ。

そのため追うのも魔法を当てるのも難しい。

イエティは加速し、助走をつけてハイジャンプ。

メイに飛び掛かり、そのまま棍棒を叩きつけにいく。

当然、そんな単純な攻撃はわずかな動きで回避するメイだが――。

「うわっ!?」

雪上に叩きつけた枝から生まれた衝撃波が駆け抜けて、真横を通り過ぎていった。

「「…………」」

「なんでかな、このモンスター……すごく親近感がある」

舞い上がる雪の中、メイのつぶやきに口をつぐむレンとツバメ。

「さ、さあ! なんとなく方向性は分かったし、アニタのフォローをしながら討ち取ってやりましょう!」

レンは目標を『これまでイエティを追い続けてきたアニタを中心にした戦い』を経た勝利に定める。

「はい! がんばりましょう!」

「……うーん、なんでだろう」

首を傾げるメイ。

多くを口にしないレンたちは、いつもより少し大きな声で気合を入れ直したのだった。