作品タイトル不明
217.勝負をかけます!
死霊術師が呼び出したのは、石灰のような身体を持つドラゴンゾンビ。
咆哮と共に噴出する白紛。
ドラゴンゾンビが爪で足元をひっかくと、空中を舞う白紛が一気に燃え上がった。
「すごーい……っ」
辺り一面を容赦なく吹き飛ばすほどの青緑炎は美しく、だがどこか気味が悪い。
ドラゴンゾンビは、巻き上がる炎を割って飛び掛かってくる。
「【バンビステップ】!」
それを先頭で引き受けたのはメイ。
二度の喰らい付きから尾の叩きつけ。
これを二度のバックステップと側転でかわす。
するとドラゴンゾンビは息を吸い、ブレスを放った。
淡く輝く青緑の粒子を、メイは難なくかわすが――。
「あっ! HPが減ってる!」
滞留する瘴気が、HPを削っていく。
「スリップダメージね! 気を付けて!」
青緑の淡い輝きは、触れているとダメージを受けるようだ。
「すりっぷだめーじ……」
初めて聞く言葉を、メイが復唱していると。
「……ボディプレスがきそう」
「【ハードコンタクト】!」
飛び込んできたアルトリッテが、豪快なタックルでわずかにドラゴンゾンビの体勢を崩した。
「下がるぞメイ! 【ペガサス】!」
「りょうかいですっ! 【ラビットジャンプ】!」
即座に後方へと下がる二人。
するとそのすぐ直後にドラゴンゾンビは倒れ込み、舞い散る白紛と共に猛烈な爆炎が付近を焼き払った。
「ありがとうアルトちゃん!」
「任せておくがいい!」
気持ち良さそうに胸を叩いてみせるアルトリッテ。
「【加速】」
炎が引くのと同時に、ツバメが走り出す。
「【リブースト】」
爪の振り上げを早い動きでかわす。
そのままドラゴンゾンビの斜め後方に抜けると、尾による振り払いが迫る。
「【跳躍】」
ツバメを狙った三連撃。
しかしこれを見事にかわして、目配せ一つ。
すでに走り出していたメイは、ドラゴンゾンビの懐に入り込む。
「【モンキークライム】!」
そのままドラゴンゾンビを駆け上がって跳躍。
「【ラビットジャンプ】からの――――ジャンピング【キャットパンチ】だー!」
落下ダメージを乗せても、ダメージはほどほど。
だがドラゴンゾンビの視線、ターゲットがメイに向いたことで生まれる死角。
そこに再び、アルトリッテが飛び込んでくる。
「最後は【ハードコンタクト】だっ!」
「……ラグビー部」
「誰がタックル専門だー!」
マリーカのつぶやきに、即座に反応するアルトリッテ。
「このくらいのドラゴンなど、武器さえあればどうとでもなるのだぞ!」
「……前を見て」
「む?」
言われて前を向くアルトリッテ。
そこにはすでに体勢を立て直した、ドラゴンゾンビの姿。
「…………」
襲い来る青緑炎の爆発。
「ペ、【ペガサス】ッ!」
その場から慌てて逃げ出そうとするが――。
「ぬはー! 範囲が広いーっ!」
被弾して転がる。HPを3割ほど減らされた。
「【加速】【リブースト】」
消えゆく炎。
ここでツバメはさらに、同一方向への超加速で一気に距離を詰める。
「【紫電】【跳躍】」
「【霊鳥乱舞】」
この動きに即座に続いたのがマリーカ。
放たれた輝く鳥の群れが、硬直したドラゴンゾンビにぶつかり炸裂する。
「【フレアバースト】!」
最後はレンが締め。
見事な連携が決まり、ここでドラゴンゾンビのHPは残り5割ほど。
武器が使えなくとも、最強野生児パーティとトッププレイヤーの連携は、大型モンスターですら華麗に追い詰めていく。
「焦げてる?」
「これは目元の柄だ!」
うっかりタヌキアルトリッテの目元を『焦げ』と勘違いしたレンに、入れるツッコミ。
キツネマリーカも、くすっと笑う。
「来ます!」
HPが半分を割ったドラゴンゾンビは、ブレスを連発し始めた。
「近づけないぞ!」
溜まっていく青緑の粒子が削る体力。
さらにブレスの粒子が残る中、ドラゴンゾンビは飛び掛かりでメイを狙う。
「【バンビステップ】!」
わずか数センチのところで避けて、反撃は【キャットパンチ】
「爪がくるぞ!」
「りょうかいですっ! 【ラビットジャンプ】!」
アルトリッテの声に、メイは大きく後方へ跳躍。
巻き起こる粉塵爆破から、無事退避した。
「このままでは、時間がかかりそうだな」
前衛三人は見事な回避を見せるものの、攻撃できるのはメイだけの状況。
「……またミイラ」
ここでさらに死霊術師は、全ての魔力を使う形でミイラを一斉召喚。
後衛までをも攻めてくる。
「【霊鳥乱舞】」
これをマリーカは、霊鳥の連射で食い止める。
「……レン、お願い」
「ええ。放っておけばスリップダメージ、本体は暴れ放題。そのうえ後衛にはミイラをけしかける……少し調子に乗り過ぎよ」
攻め手に欠ける状況の中、黒猫レンが右手を伸ばす。
「ツバメ、お願いしてもいい?」
近寄ってくるミイラたちを前に、ツバメに一言。
「わかりました」
肉球をドラゴンゾンビに向けると、【魔眼開放】を発動する。
右目が、黄金に輝き出す。
「メイ、アルトリッテ! 大技で一気に勝負をつけるわ!」
「りょうかいですっ!」
「うむ! 期待しているぞ!」
吹き出す風に、揺れる銀髪。
肉球の先に輝く、漆黒の輝き。
レンのもとに集まる闇の魔力粒子が、きらめきを放ち出す。
「――――暗き瞳の怒れる獅子は、殺意の四肢持つ自動人形。不遜なりし慟哭の子々。重なる死屍を前にして、傀儡となりて懇願せよ。崩壊こそ……安息なり」
「【ダークフレア】! って、なんで急に詠唱したのよーっ!?」
ミイラが迫ってきた場合の掃討を任せたつもりのレン。
「違うのですか?」
ミイラはまだそこまで寄ってきていなかったので、【ダークフレア】用の詠唱が欲しかったのだと勘違いしたツバメ。
すれ違う二人をよそに、収束していく黒の粒子。
強烈な余波を放ちながら炸裂し、ドラゴンゾンビを消し飛ばす。
その身体の4割ほどを消失したドラゴンゾンビは、崩れ落ちるようにして消えていく。
さらに魔法の余波によって、付近のミイラたちも巻き込まれる形で倒れ込んだ。
魔力を使い果たし、崩れ落ちる死霊術師。
シールドを失った敵に、レンは真っすぐ肉球を向ける。
「こ、これで終わりよーっ! 【フレアバースト】!!」
放たれた爆炎によって、死霊術師ミイラは消失した。
「……【ダークフレア】凄まじい威力だった」
「うむ、あれは確かに大技だな」
「……でもすごく中二病」
「まさか詠唱とは」
「それは私がやったんじゃないわよ!」
必死に弁明するレン。
しかし黒づくめの格好で言っても、説得力はまるでなし。
「い、いいから宝を確認しましょう! ちょうど二つだし、パーティごとに一つでいいわね!」
死霊術師の残した二つの宝箱。
「エクスカリバー出てこい! エクスカリバー出てこいっ!」
「……ここではないと思う」
勢いよく宝箱を開けるアルトリッテと、つぶやくマリーカ。
【黄金剣】:失われた王家に伝わる美麗な剣。不死系モンスターに20%の威力向上。攻撃力118。
「ぬはー! エクスカリバーっぽい剣だぁぁぁぁ!」
かなりの業物も、エクスカリバーではないことに悲鳴を上げる。
【雷光閃火】:手持ちの武器を突き刺す一撃。刺した武器は数秒後に爆発を巻き起こす。アサシン教団の秘技の一つ。
一方こちらは、スキルが書かれた古い紙製の巻物。
「一撃の威力が高そうな攻撃です」
「どんなスキルなんだろう……っ」
こうして見事にミイラ死霊術師を打倒した五人は、手に入れたお宝で一喜一憂するのだった。