軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

209.奪い合いですっ!

ランプの精と助け合いながらピラミッドを進んできたメイ。

六人がたどり着いたのは、美麗な絨毯敷きの部屋。

シルクの垂れ幕が飾られた部屋の台座には、これ見よがしなくぼみがある。

「魔法のランプをここに置けってことかしら」

ランプを乗せてみると、くぼみの形にぴったりとはまる。

すると頭上から、紋様の刻まれた石箱がゆっくりと降りてきた。

石箱が割れると、中には水色の装飾の入った黄金の兜。

「なるほど、魔法のランプのゴールはここってわけか」

ここで使用して黄金の兜に替えるか、そのまま外部に持ち出して使用するか。

そんな特殊アイテムだったようだ。

「さて、こうなると当然問題になってくるよな」

重装剣士がつぶやいた。

「そうね。お宝は一つ、パーティは二つだもの」

魔法騎士も続く。

「一勝負、いっとくか……?」

大盾を持った神官も、楽しそうに笑みを浮かべる。

宝の奪い合い。

それはこれまで起きてきた『ゴールドラッシュ』でも、常に『華』として扱われてきたある種のイベントだ。

「そうね。せっかくイベントらしくなってきたところだし、勝負するのもありだと思うわ」

レンも楽しそうに応える。

「それなら……始めましょう!」

動き出したのは魔法騎士。

レンに狙いを定め、駆け込んでくる。

「魔導士相手なら、距離さえ取られなければいいの!」

雷を宿した片手剣を、華麗に振り回す。

放たれた二連撃をレンがかわしたところで、魔法騎士は剣を振り降ろした。

「そのパターンは……落雷っ!」

光が弾けた瞬間のバックステップ。

予想通り、さっきまでいたところに雷が落ちる。

さらに大きな踏み込みから放つ薙ぎ払いを、レンがかわした瞬間。

「【クイックロール】」

「ッ!!」

雷の軌跡を描く、二連続の高速回転斬りへとつないできた。

これをかがむことで回避し、レンは反撃に出る。

「【フレアストライク】」

【魔剣の御柄】から生まれる、炎の刃。

「ッ!?」

魔導士が突然近接戦を挑んできたことに、虚を突かれる形になった魔法騎士は反応が遅れる。

炎の斬り下ろしに、HPが4割ほど飛ばされた。

「解放」

「ッ!?」

続く炎の開放が、魔法騎士の頬をかすめていく。

「――――近接も嫌いじゃないわ」

ちょっとカッコつけて言うレン。

すると魔法騎士は、ここで足を止めた。

「これは勝ち目ないなぁ。私はここで降りるわ」

両手を上げて降参。

レンは見事に勝利を飾った。

「【電光石火】!」

「くっ! 【シャッターシールド】」

大盾の神官は、ツバメの早い移動からの攻撃を防御する。

盾に防御スキルを重ねることで、早いが軽い攻撃はほとんどダメージなしのところまで軽減されてしまう。

「確かに移動の鋭さは半端じゃない! だがオレの大盾さばきも熟練だぜ! 【ホーリーライト】!」

「【跳躍】」

防御範囲の大きな盾。

その取り回しで見事な戦いを見せる大盾神官は、守りの後にキッチリ聖属性魔法で反撃を狙ってくる。

「【加速】【リブースト】」

「ッ!?」

しかしツバメは、V字移動で盾の隙を突く。

「【サクリファイス】【四連剣舞】」

「はあっ!?」

防御スキルは効いているはずなのにHPが突然7割消し飛び、大盾神官は目を疑う。

「おいおいっ! どういうことだ!?」

「この【デッドライン】は、敵防御スキルなどを貫通します」

「……マジかよ」

ツバメの武器【デッドライン】は、守り固めを許さない。

「【電光石火】!」

続く一撃で、さらに大盾の神官のHPを削ってみせた。

「そういうことか……よし、オレも降参だ!」

すると大盾の神官も、敗北を宣言した。

「おいおい! お前ら早すぎだろ!」

二人の早い降参に、ツッコミを入れる重装剣士。

「よっ、それ!」

しかしこっちも、単純な剣撃で迫るメイに押される一方だ。

「【後方回転】!」

ここで重装剣士は、危機回避用スキルで後転。

見た目はいまいちだが、その隙のなさは優秀だ。

重装剣士は大剣を掲げると、そのまま足元に叩きつける。

「【グランドライズ】!」

直後、地面から突き上がる二連続の衝撃。

「【ラビットジャンプ】」

これをメイは、大きな後方への跳躍で回避。

「……ここで逆転劇を起こすなら、こいつ以外にないよなぁ!」

それを見て、駆け出す重装剣士。

メイは着地と同時に、剣を引く。

「【ソードバッシュ】!」

「イチかバチかだ! 頼むぞランプの精ィィィィ!!」

重装剣士は台座上のランプに触れて叫ぶ。

【ランプの精】を呼び出すシステム自体は、いまだ健在だった。

再び、煙と共に現れる【ランプの精】

「さあここから逆転劇の始まりだ――――えっ?」

メイの【ソードバッシュ】の放つ衝撃波は、かすめただけで重装剣士のHPを6割削り、出てきたばかりのランプの精に直撃。

ランプの精は、そのまま霧散した。

「……わ、わああああーっ!」

まさかの事態に、慌てふためくメイ。

「ランプの精さぁぁぁぁん!!」

基礎スキルの異常な威力と、ランプの精の一撃死で呆然とする重装剣士を前に、大慌てで台座に駆け寄る。

ランプに触れると、煙が広がっていく。

ランプの精は再び、独特の得意げな笑みと共に姿を現した。

「よ……よかったー!」

心の底から安堵するメイ。

「俺も降参するわ」

ランプの精に助太刀させるという、最後の賭けにも失敗。

どうかしてる威力の【ソードバッシュ】まで見せつけられた重装騎士も、白旗を上げたのだった。

「金の兜はお前たちの物だ……」

「まあ、私はそんなに欲しいわけでもないんだけどね」

「わたしもかなっ」

「私も別にです」

「えっ」

重装剣士、意外な展開に驚く。

「……マジか。間違いなく宝の一つだと思うんだが」

「私たちはピラミッドの冒険の方が主な目的だし、装備としても使わないジャンルだから」

さらにメイたちには、【密林の巫女】で『種』を『実』にして売るという金策術もある。

よって売ることが前提になってしまう宝には、あまり興味がないのだった。

「ねえ、それなら代わりにあれを出したらどう?」

すると魔法騎士が、一つの提案をした。

「……その手があったか。なあ、ここに来るまでに見つけた鍵と交換っていうのはどうだ?」

そう言って取り出したのは、一つの鍵。

「おそらくこの先どこかに使う場所があるんだろうと思う。俺たちはいかにもピラミッドって感じの宝探しが目的なんだよ」

「いいんじゃない?」

「いいと思いますっ!」

「私も異存はありません」

こうしてメイたちは、黄金の兜の代わりに『鍵』を手に入れた。

「やったぜ! それじゃあ俺たちは一度街に帰るわ!」

「やっほー! お宝だぜぇ!」

「まずはこれをかぶって遊びましょうよ! インナー装備に金の兜は、いい変態ができあがりそう!」

そう言って、うきうきで帰っていく落下パーティ。

「ふふ、最後は駆け引きになったわね」

「これぞゴールドラッシュです」

「ランプの精さんも無事でよかったぁ」

宝の奪い合いと交換。

まさにゴールドラッシュならではの機会を楽しんだ三人は、さらに深部を目指すのだった。