作品タイトル不明
195.舞踏会に潜り込みます!
「わあ、キラキラしてるねぇ」
始まった舞踏会に、思わずメイはクルクル回る。
三女の警護として潜り込んだ、豪華な城内ホール。
貴族の集まる光景はとても煌びやかだが、中には怪しい姿の男たちもいる。
ルナイル国を奪おうとする、アサシン教団の者たちだ。
「おねがいします、冒険者の皆さま。ルナイル国の未来は皆さまの手にかかっています」
ネフェルティアは丁寧に頭を下げる。
「おまかせください」
影の薄い者同士ということもあり、気合の入るツバメ。
「がんばりましょー!」
メイも拳を握って応える。
警護として招き入れられた三人も、場にそぐう格好を支給されていた。
「私はまたこれなのね」
レンは貸与されたドレスが完全にゴスロリで息をつく。
対してツバメはスリットの入ったドレスで、動きやすくなっている。
まさに舞踏会に潜り込んだ暗殺者といった感じだ。
「……なんで、ヒョウなのかな」
そしてメイは、肩にまとった毛皮がヒョウ柄なことに首をかしげていた。
「これだけですごく野性味が強いよ……」
このクエストの目的は、国盗りを狙うアサシン教団によって送り込まれたモンスターの討伐。
次女ザーラに化けたモンスターの姿を暴き、アサシン教団の目論見をあぶりだした上で叩けというものだ。
「まずは偽ザーラ姫の居場所を探しましょう」
「りょうかいですっ!」
「はい」
賑やかな舞踏会場。
メイたちはひしめく貴族の間を抜けていく。
「いたよ。あれが偽ザーラ姫だね」
メイはすぐにターゲットを発見。
しかし、その後すぐに。
「あれ?」
「どうしたの?」
「あっちにも偽姫様がいる」
「え?」
意外な展開に、思わずレンは声を上げる。
そんな三人前を通りがかったのが――。
「えええええっ!?」
またもや偽ザーラ姫。
メイは驚きに、偽ザーラたちを繰り返し眺める。
「……なるほど、影武者もいるわけね。メイ、この会場に何人ザーラ姫がいるか分かる?」
レンの言葉に、メイは会場内を注意深く見回し始めた。
「よ、四人もいる……」
「その中から、本物を討てっていうクエストってことよ」
「でも、ドレスの色が違うだけで皆おんなじ顔だよ」
「メイがそう言うってことは、見た目で判断する感じじゃないのね……一度ネフェルティアに聞いてみましょう」
三人は舞踏会でも隅の方でジッとしているネフェルティアのもとに戻る。
「ネフェルティア。偽ザーラは四人も影武者がいるみたいなんだけど」
「四人の影武者……偽物はやはり、ザーラ姉の遊び好きな性格をよく理解していますね。パーティでのこういう趣向、確かに姉さまならやりそうです」
「本物の偽ザーラを見分ける方法ってない?」
どれが本物の偽物か。
偽物の偽物がいるという状況下のため、質問も妙な感じになってしまう。
「……正確には分かりません。ですが偽物は何かと足をパタつかせる癖があります」
「なるほどね。ここで一度散開しましょう。各自偽ザーラを観察して、足をパタパタさせる癖のあるザーラを絞りましょう。おそらく付近をウロウロし過ぎると『怪しまれ』状態とかになるから気を付けて」
「りょうかいですっ!」
「はい!」
こうして三人は散開。
各自ザーラの姿を観察し、再び集まることにした。
◆
「……二人かぁ」
手持ち無沙汰になると足をパタつかせる癖は、二人のザーラが行っていた。
「これで二択……おそらく『解呪の宝珠』は使うと強い光を発したりするわ。お姫さま相手にそんな無礼を働けば当然会場は騒然とするし、アサシン教団は狙いに気づいて動き出す」
しかも残った二人の位置は、会場の端と端だ。
失敗した後に大急ぎでもう一人の偽姫の正体を暴こうとしても、警護のアサシンによる妨害や逃走が先行するだろう。
二択を間違えた時点で、ほぼ失敗が確定すると考えていい。
「イチかバチっていうのはさすがに……他に何かないのかしら」
「やはり、ネフェルティアさんの言葉に何かあるのではないでしょうか」
そんな中、ツバメがつぶやいた。
「まして影が薄く、言葉数の少ない末女のセリフです。何かしら意味があると思います」
「なるほどね」
「……あの花はどうでしょうか」
「花? あの派手目な色のヤツ?」
ツバメが目を付けたのは、偽ザーラが好んで植えさせているという花。
「匂いとか……?」
「ありえますね。花からの連想ですぐに出てくる要素ですから。本物の偽物からは花の香りがするというパターンではないかと」
「長い髪も香りをまといやすかったりするのかしらね。メイ、お願いできる?」
「おまかせくださいっ!」
それは普通なら、アサシンたちの警戒に気を付けつつ肩のぶつかる距離まで接近しないと察知できない香りの要素。
しかしメイは、残った二人から少し離れたところを通るだけでその違いを判別できる。
花の香りがするのは、一人だけ。
振り返ったメイは、うれしそうにピースしてみせた。
「どうやら、当たりみたいね」
「はい」
「それじゃ、いきましょうか」
見事偽ザーラを確定し、動き出す三人。
「……【隠密】」
続く賑やかな舞踏会の中。
暗殺クエストの成功に向けて、ツバメはそっとその姿を消した。