軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

194.王宮見学に行きます!

「おお、ありがたい。無事キャラバンは助かり、商売は滞りなく進みそうだ!」

キャラバン隊をブラックアリゲーターの襲撃から守り、劇場へと戻ってきたメイたち。

支配人は満足そうに、何度もうなずいた。

「ところで、君たちはこれからどこへ行くつもりなんだ」

「王宮見学ですっ」

「ほう、王宮に行くつもりなのか。それなら商人用のパスを渡そう。これがあれば出入りの業者として、一部だが王宮の中まで見学できるぞ」

「やったー! ありがとうございますっ!」

両手を「ばんざーい!」とあげて喜ぶメイ。

「それではさっそく行ってきますっ!」

支配人にブンブンと手を振りながら劇場を出ていく三人。

「……あれ、ラクダ券はもらえなかったわね」

「確かにそうですね」

最初の報酬はラクダ移動用のチケットだったことを思い出して、レンが首を傾げる。

「レンちゃんツバメちゃん見て見てー! 王宮……すっごく大きいよー!」

たどり着いた王宮を見てさっそく「すごいすごい」とはしゃぐメイ。

淡い水色と金の装飾が各所に散りばめられた宮殿。

陽光に照らされる噴水がまぶしい。

「塔の天辺が半球状になってるのが特徴的ね」

「はっ!」

そんな中、ツバメが突然その動きを止めた。

「どうしたの?」

「猫がいます!」

王宮の出入り口のところにいた一匹の猫。

「本当だー!」

メイとツバメはさっそく駆け寄ってみる。

レンもちょっと足早だ。

すると少し大型の高貴そうな猫は、一鳴きしてそのまま王宮の中へ。

「あの猫がプレイヤーの相手するの初めて見た」

それを見た通りすがりの観光プレイヤーが、意外そうな声を上げた。

「行ってみましょう!」

すでに猫に夢中のツバメは、王宮へと足を踏み入れる。

支配人からもらったパスのおかげで、警備兵たちに止められることもない。

「王宮にそのまま入って行った……何者なんだあの子たち……」

そんな三人に、観光プレイヤーたちはいよいよ驚かされるのだった。

「わあ、すごーい……」

王宮内は豪華な作りをしている。

立ち並ぶ衛兵たち。足元には豪華な絨毯。

何よりの特徴は、各所に咲いた花だろう。

「どこに行くのかな」

三人楽しそうに猫の後を追って行く。

たどり着いた先は、二階バルコニー。

その陰に、本を手にした少女の姿があった。

黒髪のショートカットにティアラ、物静かな雰囲気をしている。

「そのパス……もしや冒険者様では。あの支配人がお認めになったとは……実力者に違いありません」

少女はメイを見るなり、驚くように顔を上げた。

「……私はこの国の第三姫、ネフェルティアです」

「メイです! よろしくおねがいしますっ!」

ぺこっと元気に頭を下げるメイ。

「冒険者様……話を聞いていただけませんか?」

「これは、面白いクエストが始まりそうね」

もちろんこれを逃す三人ではない。

さっそく話を聞くことにする。

「ルナイルには三人の姫がいます。問題はこの姉妹の次女、ザーラなのです」

「お姉さんね。そのザーラがどうしたの?」

「実は……」

「あらぁ、そこにいるのはネフェルティア?」

「っ!」

突然呼び止められ、思わず身体を硬直させるネフェルティア。

目につくのは、足元まである艶やかな黒髪。

スラリとした美女が、四人の前にやって来た。

「またこんなところで一人、本を読んでたのぉ? たまには外に出た方がいいわよぉ」

そう言って笑うと、メイたちに視線を向ける。

「あなた達からも、言ってあげてちょうだいねぇ」

次女ザーラは植えられた花の香りをかぐと、クスクスと笑いながら城内へと戻って行った。

「今のは?」

「今この王宮でザーラと呼ばれている……モンスターです」

「……化けてる。そんなところ?」

レンの推理に、ネフェルティアはこくりとうなずいた。

「本物のザーラはどうしたの?」

「本物のザーラ姉は、そこにいる猫です」

メイたちを連れて来た猫が、一鳴きして応える。

「城内の者にこの異変を伝えたりもしたのですが、偽物とはいえザーラ自身は存在しますし、その言動は姉の特徴をよくとらえていて見分けるのは難しい」

ネフェルティアは「それと」と小さく息をつく。

「まして私は姉妹の中でも影が薄く本ばかり読んでいたので、モンスターがザーラに化けていると言っても、妄想だと思われ誰にも信じてもらえません」

「なるほどねぇ、でも誰がそんなことを?」

「アサシン教団」

「アサシンですか……」

「今夜、舞踏会が開かれます。その最後に偽のザーラは、アサシン教団幹部との婚約を発表するというのです。そうなれば教団は構成員たちを自由に城に連れ込むことができるようになり、やがてルナイル国は……乗っ取られてしまいます」

「た、たいへんだぁ……っ」

「私たちはどうすればいいのですか?」

「今夜の舞踏会でモンスターの正体を暴き、可能であれば暗殺して欲しいのです」

「思ったより過激な依頼ねぇ」

「……やります」

応えたのはツバメ。

「これは『解呪の宝珠』です。この魔法の光を当てれば、モンスターはその正体を現します」

そう言ってネフェルティアは、咲いた橙色の花を見つめる。

「あの花はモンスターが持ち込んできたもの。まるでこの国に少しずつ勢力を広げていくアサシン教団のように生息範囲を広げています」

猫ザーラをそっと撫でて、ネフェルティアは顔を上げる。

「今夜の舞踏会には、皆さんを私の警護役としてお招きさせていただきます。貴族や隣国の者たちが集まる中でモンスターたちの正体を暴き出し、この国を……お守りください……」

「おまかせください!」

誰よりも強い返事に、「おおー」と感心するメイとレン。

影の薄い仲間の危機に、いつもより気合の入っているツバメなのだった。