軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

191.踊り子になります!

並ぶヤシ科の植物。

壁に描かれた、明るい色使いの紋様。

屋台のタープにも、綺麗な模様の入ったものが目に付く。

どこか淡い色どりの光景の中、売られている果物の原色が見ていて美しい。

「あれは何を売ってるのかな! 向こうは何があるんだろう……っ!」

古い砂漠の都市をイメージしたような街並みに、メイは尻尾をブンブンしながら足を進める。

「いい景色ねえ」

「異文化の古い街並みというのは、飽きませんね」

素早い動きであれこれ見て回っているメイを見ながら、歩を進めるレンとツバメ。

すれ違うNPCたちも、ゆったりした服装が多い。

そんな中、一人の中年男性が辺りをキョロキョロ見回しているのが見えた。

男はメイたちを見つけると、慌てて駆け寄ってくる。

「ああ、君たち! ちょっと助けてくれないか!」

「クエストみたいね」

「そのようです」

「僕はここルナイルでショーパブを経営しているのだが、踊り子が3人急に来れなくなってしまったんだ! 今日は街のお偉いさんが来る大事な日だってのに……っ」

支配人の男はそう言って大きく息をつく。

「そこで……君たちに踊り子に扮してもらいたいんだ。冒険者の動きにはキレがある。僕の目に狂いはないはずだ!」

「いいじゃない、ちょっと楽しそうなクエストだし」

「うんっ! 面白くなりそう!」

「受けてみましょう」

「おお、助かった! さあ来てくれ! お偉方を満足させるには準備が必要だ!」

こうしてメイたちは、歓楽街に建てられた劇場へ向かうことにした。

「レンちゃん似合ってるー!」

NPCの男に楽屋へと連れてこられてたメイたちは、ここで衣装変更。

アラビアの雰囲気を感じさせる、ひらひらとした踊り子衣装を身にまとう。

「……こいつには『とにかく黒を着させとけばいいだろ』みたいなのは、私のこれまでの行動のせいなんでしょうね……」

「メイさん……とてもかわいいです……っ」

妖しい黒のレンに対し、メイはここでも白地に金の衣装。

「ヤシの葉とかでできてなくて、本当に良かったぁ……」

心から安堵の息をつくメイの姿に、悶えるツバメ。

「ツバメは素直に可愛くていいわねぇ」

青の衣装が長い黒髪に映えているツバメを見て、レンはうらやましそうに息をつく。

「これたしか……人気のクエストじゃなかったかしら。踊り子衣装でダンスするっていうミニゲーム系のやつ」

「楽しそうっ!」

「それじゃさっそく舞台に上がってくれ! お偉いさん方の機嫌を損ねないよう頼む!」

「ええっ? いきなり踊るの?」

「大丈夫よ。足元に出てくるガイドを踏みながら、空中に出てくる光球を手で叩いていくっていうリズムゲームのはずだから」

「その指定通りに動けば、ダンスに見えるようになるわけです」

「そういうことかぁ」

三人が壇上に上がると、音楽が鳴りだした。

舞台には演奏NPCたちもいて、すぐに楽しい空気ができあがる。

レンは率先して『こんな感じ』というのを披露する。

足元に出る黄色の輪は左足。緑の輪は右足だ。

合わせて動くと、ゆっくり飛んできた赤い光に右手でタッチ。

そのまま青い光に左手で触れると、自然と一回転することになる。

「レンちゃんすごーい!」

「こういう三次元的に動く的を触ったり踏んだりで踊りに見えるやつは、もうジャンルとして定番になってるのよ」

余裕のレンを前に、見よう見まねで続くメイ。

「ほう……なかなかいいな」

ポイント制のダンスゲームに、街のお偉方も反応を始める。

調子は上々だ。

「みーぎ、ひだり、みーぎ、ひだり」

手を可愛く振って、出てきた新たな光を右手でタッチ。

しっかりポイントを加算すると、メイは少しずつ楽しそうにステップを踏み始める。

「メイ上手ねぇ。身体の動かし方がダイナミックだわ」

「えへへ、楽しいねこのゲーム」

「VRのリズムゲームにハマる人が多いのもうなずけるでしょう?」

「うんっ! 【アクロバット】!」

ここでメイはくるっと一回転。

意外な動きでポイントを取ってみせると、そのまま尻尾で光球をタッチする。

「おい、あの子たちすげーな」

「なんだあれ、このミニゲームあんな動きもありなのか?」

「しかもかわいい」

可愛い三人の少女が楽しそうに踊っているのを見て、プレイヤーたちも集まって来る。

レンは元々リズムゲーム好きなこともあり、指定通りの踊りを見事にこなす。

メイは「そこの光球そう叩く!?」というアクロバティックな動きが入り出し、オリジナルの動きで見学プレイヤーたちを盛り上げる。

「……あの子は、一体」

そんな中ツバメは――。

「ミギミギヒダリ、ミギ、ヒダリ」

しっかりポイントを稼いでいる。

しっかりとポイントは稼げているのだが、その動きはロボット。

「いいぞいいぞ!」

「素晴らしいじゃないか! 支配人!」

それでも、光球にはしっかり触れているため観客NPCたちは盛り上がり、偶然居合わせたプレイヤーたちも拍手をし始める。

踊り子クエストは見事、最大の盛況を巻き起こしたまま幕を閉じた。

「助かったよ君たち! お偉方は満足して帰っていった!」

ミニゲームを終えたメイたちの前に、支配人NPCが駆けつけて来る。

「素晴らしい踊りを見せてくれた君たちには、この【ラクダの乗用券】を――――」

こうして見事クエストを乗り越えたメイたちがアイテムをもらおうとしたところで、商人らしきNPCが駆け込んできた。

「……なに、キャラバンがまだ着いてない? モンスターに襲われた可能性があるだと?」

ここで少し、話が変わってくる。

「なるほどね。オリジナリティの高い動きを見せた上でポイントをしっかり取ると話が続くってところかしら」

衣装チェンジありのリズムゲーム。

何度でも遊べる人気クエストだけあって、ポイントで規定を越える者は多い。

だが派生のクエストを起こすには、NPCにオリジナリティの高さも認められる必要があるようだ。

「……すまない。もう少しだけ助けてもらえないだろうか」

「もちろんですっ!」

まだ気分が高ぶったままのメイは、ぴょんと跳ねて応える。

「構わないわよ」

余裕の笑みで応えるレン。

「おまかせください」

そしてツバメも、ロボットみたいな動きでうなずいてみせた。