軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

181.vs大魔導

転移結晶でメイが飛ばされた先は、松明の並ぶ妖しい岩場。

大魔導リザードが金色の豪華な杖を掲げると、昏い輝きが生まれる。

放たれるのは無数の光弾。

その数は、杖の振り一度で数十にも及ぶ。

「わ、すごい」

その威力と、暗闇に輝くたくさんの魔力光に感嘆の声を上げるメイ。

しっかりと距離を見計らって、回避に入る。

「うわっ!?」

しかし大魔導の放った魔法は、緩やかな曲線を描いてメイの肩スレスレを飛んで行った。

「レンちゃんみたいに曲がる魔法だ!」

大魔導は次々に誘導の掛かった光弾を発射する。

その勢いは、もはや弾幕と呼べる量。

絶妙な誘導は、【敏捷】や【耐久】に自信がある者でも苦しむだろう勢いだ。しかし。

「【バンビステップ】!」

メイは的確過ぎる足運びで、かすることすらなく光弾の隙間を抜けていく。

「それっ!」

そのまま難なく大魔導のもとにたどり着き、振り下ろす剣。

するとその姿が突然ぼやけ、姿を消した。

次の瞬間、数メートル横に現れた大魔導は【魔力砲】を発動。

球形に広がる魔力光が大きく炸裂する。

「【ラビットジャンプ】」

これをメイは、大きな後方への跳躍で回避。

着地と同時に再び【バンビステップ】で走り出し、一気に大魔導の懐へ飛び込む。

「やあっ!」

放つ振り払いはまたも、瞬間移動によってかわされる。

離れた位置に現れた大魔導は、再び魔法の弾幕でメイを攻撃する。

「全然当たらない……」

普通であれば敵の魔法を『防御』なり『回避』なりで前衛が引き付けている間に、別の仲間が攻撃に向かうのが基本だ。

単騎での特攻など、誰も予想できなかったに違いない。

「えーと、どうしよう……どうしよう……」

しかし予想もできないといえば、メイはそれ以上。

「……そうだ!」

考えながらも見事な回避を続けていたメイ、はポン! と手を打った。

「【装備変更】!」

頭装備が【狐耳】に替わる。

「こっちも、遠距離攻撃で対抗だーっ! 【投石】!」

メイはここでなんと、ボスモンスターである大魔導リザードに石を投じた。

「えいえいえい! それそれそれーっ!」

すると投げた石に【狐火】が青い炎を灯す。

メイは大魔導リザードの魔法連打に、炎の投石連打で挑み始めた。

「よっ、それ! ほっ、それー!」

敵の魔法をかわし、その隙に続ける【投石】はまさに火の玉ストレート。

前衛が引き付けている間に攻撃という形式を、たった一人で再現してしまう。

猛スピードで飛んで行く石は、一発の威力こそ低いものの一方的にダメージを与えていく。そして。

「えーいっ!」

何とメイはグランダリアの大物モンスター、大魔導リザードのHPを【投石】で半分ほど削り取った。

すると大魔導の方が、先に魔法の連発を止めた。

運営すら予測しえない真正面からのボスとの打ち合いを、投石を使って制したメイ。

「グオオオオ――――ッ!!」

対してまさかの劣勢に追い込まれた大魔導は、咆哮をあげた。

足元に描かれた魔法陣から現れた一体のリザードマンが、禍々しい杖を大魔導に差し出す。

掲げた杖に昏い光が灯り、足元に紫色の液体が広がっていく。

流れ出すおびただしい量の液体は、そのまま辺り一面を浸してしまった。

「これって……毒?」

触れているだけで、HPが削られていく。

それは戦いが続く限りダメージを受け続けるという、嫌らしい仕掛けだ。

召喚されたリザードマンは耐えられず、そのまま倒れて粒子になって消えてしまう。

「もうっ! ダメだってばー!」

またもリザードマンを使い捨てにした大魔導に、尻尾をふくらませて怒るメイ。

大魔導リザードは、手にした禍々しい杖を掲げる。

巻き起こる三本の竜巻。

それらは毒液を吸い込み、メイ目がけて動き出す。

ここに再び始まる、魔法の乱舞。

「わあっ!」

弾ける光弾の起こす衝撃が、毒液を勢いよくまき散らす。

「うわわわわーっ!」

弾け飛ぶ毒飛沫と、飛来する魔力弾。

そこへさらに、三つの毒竜巻も接近してくる。

「おっととと!」

強烈な風に、思わず体勢を崩しかける。

追いすがってくる竜巻は、毒と風の二重攻撃。

「【バンビステップ】!」

さすがに回避に専念するしかないメイ。

だがこの間にも、足に触れている毒液がHPを奪っていく。

それが大魔導戦の恐ろしいところ。

まさに『最悪』と言える戦いだ。しかし。

「……あれ? 思ったより毒、大丈夫かも」

ジャングルにいた頃は、苦労した覚えもある毒。

ただ、今のメイはHPが高すぎる。

そのため大した脅威とはならず、ジャングル時代のことを思い出す程度にとどまってしまうのだった。

「よーし、そういうことならっ!」

毒液のダメージは、気にするほどでもない。

メイは一気に毒沼を駆け、大魔導のもとに迫っていく。

「【ラビットジャンプ】!」

跳び上がったメイは、そのまま剣を振り下ろす。

しかし大魔導はテレポートによる逃避を続行。

竜巻を五つに増やし、一気にメイを潰しにくる。

「うわー! これは大変だーっ!」

グランダリアの大物らしい驚異の攻勢。

「うーん、どうしよう……どうしようかなぁ……」

メイは全体を見渡しながら魔法をかわし、毒の嵐も避け続ける。

激しくなった攻撃を避けながらの【投石】も、できないことはない。

ただ、それでは時間がかかりすぎてしまう。

「早くレンちゃんたちのところに戻りたいのに…………そうだ!」

ここで閃く、一つの妙案。

「【バンビステップ】!」

メイは速い足の運びで、迫る魔法の弾幕をかわして再び敵前へ。

すると大魔導はまたも、ニヤリといやらしい笑みを浮かべて姿を消した。

「いまだっ!」

メイは手にした【蒼樹の白剣】を引く。

「大きくなーれ!」

スキルの発動と同時に、伸長する白剣。

「それーっ!」

放つのは何てことのない『ただの振り回し』だ。しかし。

瞬間移動から出て来たばかりの大魔導に、広範囲の薙ぎ払いがクリーンヒット。

大魔導は、しぶきを上げて毒沼を転がった。

追撃に走るメイ。

すぐさま瞬間移動で逃げる大魔導。

「大きくなーれ!」

メイはここでもう一回転。

再び弾き飛ばされた大魔導は、毒沼を転がる。

こうして残りHPは、いよいよ1割ほどまで減少。

追撃に来るメイから逃げるため、今度は瞬間移動で大きく距離を取る。

「グオオオオ、グオオオオオオ――――ッ!!」

そして、怒りの咆哮をあげた。

さらに竜巻を三つ追加し、放つ魔法の数を増加。

もはや意地でもメイを近づけないつもりだ。

それはグランダリア最大級の大物にふさわしい、怒涛の攻勢と言える。

しかし。

大きく距離を取る瞬間移動を、メイは待っていた。

距離ができれば、魔法が届くまでにそれだけ時間がかかる。

メイはすでに、剣を大きく引いていた。

「いっくよー! 大きくなーれっ!!」

【密林の巫女】発動と同時に、大きく成長する【蒼樹の白剣】

轟音と共に、天井を切り裂きながら振り下ろす。

「これが最大級の……【フルスイング】だああああ――――ッ!!」

それは遠距離からの、叩きつけ【フルスイング】

地面に深くめり込むほどの一撃は、竜巻を消し飛ばし、魔法弾幕もまとめて消滅させる。

直撃を喰らった大魔導は倒れ伏し、動かなくなった。

すると毒液が消え、部屋の隅に設置された結晶が鈍く光りだす。

「早く皆に会いたいなぁ」

戦いを終えて一息。

メイは祈るようにしながら結晶に触れる。

広がっていく緑の光。

たどり着いたのは、その大部分を結晶に飲まれた螺旋状の階段の前だった。

そして目の前には、黒ずくめの少女。

「レンちゃん!」

「メイ……?」

「レンちゃーん!」

同じく戻ってきたばかりのレンに、思いっきり飛びつくメイ。

そのまま二人、抱き合ったままクルクルと回る。

「良かったわ、再会できて」

「うんっ、よかったー!」

大喜びで尻尾を振るメイ。

するとそこへさらに。

「ツバメちゃん!」

ちょうどツバメも転移結晶でやって来た。

「っ!?」

到着するや否や、メイに強く抱きしめられてビックリするツバメ。

「みんな無事だったんだね!」

「まあ、結構大変だったけどね」

「まったくです」

厳しい戦いを思い出して、安堵の息をつくレンとツバメ。

互いにそんな状況を越えてきたことが思いやられて、思わず軽くハイタッチ。

そんな二人を見て、メイは嬉しそうに笑った。

「やっぱり、三人一緒が一番だねっ」