軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

182.最終日と最下層

「大きな転移結晶の工房があった?」

「はい」

レンの問いかけに、ツバメがうなずく。

合流した三人が話し始めたのは、散開していた時に見たものについてだ。

「私が見たのは、貢物っぽい宝石と食べ物らしきものだったんだけど……」

「わたしのところは、神殿みたいな道が作られてたよ」

「それであの大魔導リザードと戦ったのよね?」

「うん」

「ということは、大魔導リザードはここの最終ボスじゃない……」

そう言ってレンは、今まさに降りている岩の螺旋階段から足元をのぞき込む。

「この感じだと、23階で別れた後、24、25、26に一人ずつ飛ばされてたって考えられるわね。おそらくメイがいたのが26階だわ。そしてここは27階」

「私のところには、地図が一枚ありました」

「見たことない階層の地図だね」

「分かるのは……大きな結晶があるってことくらいね」

フロア二つ分ほどの長い螺旋階段を降りきると、頑丈な鉄製の扉。

大きく重い扉を開くと、そこは広大な空間だった。

岩塊が転がる岩場の最奥にあるのは、巨大な穴と祭壇。

置かれた灯篭に、一つずつ炎が灯っていく。

三人が祭壇の前にたどり着くと、ゆらりと空間がにじむ。

現れたのは、ボロボロになった大魔導リザード。

尋常ではないその姿に、思わず三人硬直する。

「……そう言えば、倒した後に消えなかった」

メイの【フルスイング】に倒れた大魔導はその時、粒子になって消えるという手順を踏んでいなかったことを思い出す。

大魔導は狂ったように笑い出すと、祭壇の上に置かれた貢物らしき物品を次々に叩き飛ばしていく。

大穴に落ちていく宝石、食物の数々。

そして大魔導が得意げに両手を広げると、地面が震え出した。

「レンちゃん……ツバメちゃん」

最初に気づいたのはメイ。

すぐに聞こえ出す不吉な音。

次の瞬間、大穴の中から黒く巨大な生物が飛び出してきた。

「…………こ、これはっ!?」

大魔導の目前に降り立ったその化物の姿を見て、メイは愕然とする。

「トカ……ゲ?」

漆黒の身体。

その各所に金色のラインが走った、四足の大型モンスター。

トカゲのような外見をしているが、頭部に生えた二本の鋭い角と堅甲な鱗、そして長い牙と爪は――。

『リザードドラゴン』

それこそがこのグランダリアの最奥に棲まう、未知にして最強のモンスター。

通常のドラゴンとの違いはなんといっても、手や尾などに生えた無数の結晶だろう。

二本の角も、見るからに堅甲な結晶体でできている。

「リザードマンたちはこのドラゴンを信奉して食べ物や宝を運んでたってわけね。そして大魔導の狙いは、転移結晶で外の世界に連れ出して進攻することみたいな感じ?」

「なるほどぉ……」

リザードマンたちが運んでいた卵や宝石、結晶造り、そして大魔導の狙いが分かって「うんうん」と大きくうなずくメイ。

リザードドラゴンは、のし掛かり一つでパーティを潰してしまえそうな巨躯を誇る。

大魔導は勝利を確信したかのように、嫌らしい笑みを浮かべた。

「ですが一度敗けた魔導士が、得意げに化け物をお披露目する展開は基本……」

「まあそうね」

「基本……どうなるの?」

メイは首と尻尾を傾げる。

するとツバメの言葉に応えるかのように、リザードドラゴンは鋭い結晶爪のついた腕を振り上げた。

振るわれる巨碗が、一撃で大魔導を叩き潰す。

「わあ……」

大魔導は愕然としたまま、今度こそ粒子になって消えていった。

「当然こうなるわよねぇ。化け物を飼いならして使うつもりが、全然できてなかったと」

こうして、グランダリアに住む手の付けられない化け物だけがこの場に残されてしまった。

「さて、これでグランダリアの最終ボスが確定したわね」

「合宿最終日、最後の大物です」

「そうなるわ」

「レンちゃん、ツバメちゃん。みんなで一緒に帰ろうね!」

「もちろんよ! 合宿のトリにちょうどいいわ!」

「はいっ! 大洞窟踏破で、気持ちよく合宿を終わりましょう!」

大魔導を一撃のもとに消し飛ばした、黒金の巨竜。

その瞳が、ゆっくりとメイたちに向けられる。

メイたちもいつも通り、楽し気な笑みと共に武器を構えた。