軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

160.ツバメ無双

「こうはんせんっ、こうはんせんっ」

メイは鼻歌を口ずさみながら、10階の岩場を軽快に進んで行く。

「もうすっかりいつも通りね」

「はいっ、その節はご迷惑おかけしましたっ」

お腹いっぱいメイは「てへへ」と後頭部をかく。

「ふふ、お母さんも香菜も一緒になってよろこんでたし、こっちがお礼を言わなきゃいけないくらいよ」

終始楽しそうに夕食をとっていたメイ。

星城家での夜は、いつも以上に賑やかなものとなった。

「さて、それじゃいきましょうか」

「はいっ!」

「初日後半戦ですね」

普段は楚々とした歩みのツバメも足が弾む。

現実世界は夜の21時半。

楽しくなってくる時間帯だ。

「10階は問題なさそうね」

落とし穴から落ちる形でやって来た10階は、マップ片手に難なく踏破。

11階は、再び森が広がっていた。

レンはさっそく、もらったばかりの地図に目を向ける。

「なるほど。神官の子が言ってた11階の面倒なボスモンスターって、こういうことなのね」

「どう大変なのですか?」

「距離を詰めさせてくれない感じのモンスターって感じ。とにかく遠距離からちまちま攻撃を当ててくるみたい」

敵は狼の獣人。

武器は炎の弓矢で、逃げ隠れに特化したタイプのようだ。

「動き回って戦うっていう事は、当然他のモンスターたちにも遭遇することになるのよね」

そうなれば最悪、大量のモンスターに追われることになり、パーティは崩壊してしまう。

「それですと、メイさんに追ってもらう形でしょうか」

「それでもいいんだけど……逃げ隠れっていうのが嫌らしいのよ」

せっかくメイがボスのもとに向かっても、その度に隠れられてしまってはらちが明かない。

「でも、問題ないわ」

聞くからに厄介そうな状況。

しかしレンは、大した問題とは感じていないようだ。

「何せ今回のボスには、大きな弱点があるから」

「弱点……?」

「ええ」

「レンちゃーん……見つけたよぉ……」

そうささやきながら、メイが木の上からそーっと降りてくる。

「……あっちの岩、その陰の辺りに狼型のモンスターがいる」

「ふふ。そんな小声にしなくても、この位置なら聞こえないわよ」

歩き方まで『警戒している猫』みたいになっているメイに、笑うレン。

「かわいいです……」

尻尾まで緊張させているメイに、ツバメも夢中になる。

「こうやって居場所を先に見つけてしまったら、やるべきことは一つだけ」

「……そういうことですか」

ツバメは理解したとばかりに【隠密】を発動し、姿を消した。

「いってきます」

「……がんばってねぇ」

小さく手を振りながら、やっぱり小声になってしまうメイに笑いながらツバメは進む。

罠にだけ気をつけながら、辺りに視線を走らせている狼の獣人のもとへ。

そしてその目前に来たところで――。

「【アサシンピアス】」

【グランブルー】を突き刺した。

敵に認知されていない状態、そのうえで弱点を突いた場合、特効が乗ったその威力は間違いなく一撃必殺。

11階を守るやっかいなボスモンスターは、得意の戦法を披露することなく消えていった。

「11階ボス最大の弱点は、この辺りに出るって地図に書かれてたことね」

仕事を終えて戻ってきたツバメに、レンが笑みを見せた。

場所さえ分かれば、メイの【遠視】が先行して敵を発見してくれる。

あとは【隠密】で近づいて【アサシンピアス】を刺すのみだ。

「さすがツバメちゃんだねぇ」

メイは尻尾をフリフリ、ツバメにほほ笑みかける。

「ありがとうございます」

ツバメは嬉しいやら恥ずかしいやら。

「……これが恐ろしい話なんだけどね」

そんな中、続くレンの言葉にメイが首と尻尾を傾げる。

「12階のボスはプレイヤーを麻痺させる霧を、広範囲に噴霧するかなり面倒なボスみたいなの」

「そうなんだぁ」

「それは大変そうですね」

「でも」

「でも……?」

「マーちゃんからバラでもらった地図で、これも大体の居場所が分かってる」

「「……なるほど」」

三人は12階に着くと、即座に地図を確認。

メイが【帰巣本能】で、13階へ降りるポイントを把握する。

そしてボスはその手前付近に生息しているという情報をもとに、メイが【遠視】で目をこらす。

「【隠密】」

先に見つけてしまえば、あとはツバメに託すのみ。

「【アサシンピアス】」

見事12階のボス、アイアンワームを一刺しにしてみせた。

「こんなあっさりでいいのでしょうか」

若干の困惑を見せるツバメ。

しかし、消えない。

12階のボスのやっかいさは、痺れる霧だけではなかった。

スキル【食いしばり】は、ごくごく僅少のHPを残して一度だけ生き残るという効果を持つ。

「ッ!!」

巨大な身体を持つ芋虫は、【食いしばり】発動と同時に怒り狂う。

木々をなぎ倒し、地面に軌跡を残しながら容赦なくツバメを追ってくる。

その怒涛の勢いに、観念したかのようにツバメは足を止めた。

アイアンワームがその身体を持ち上げ、渾身のボディプレスを仕掛けてきたところで――――。

「【跳躍】」

後方へ跳躍。

ツバメの後ろにあったのは、地面に描かれた【設置魔法】の陣。

直後、吹き上がった炎の砲弾によって12階のボス・アイアンワームは消滅した。

「……恐ろしい連携だわ」

「……とても非情です」

炎を見ながら、思わずつぶやくツバメ。

「これが……アサシンの戦い方なんだね……っ」

11階12階と、戦闘らしい戦闘を行わずに連続踏破。

そのすさまじいペースと恐ろしい威力に、メイは思わずゴクリとノドを鳴らしたのだった。