軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1481.取り返します!

消えていくアイテムたちは、真水の雫のようなスライムによるものだった。

盗んでは『食べて』しまう習性は、街づくり中のメイたちにとって最悪の敵だ。

「待てーっ!」

「待ちやがれーっ!」

メイの発見によって、始まった盛大な鬼ごっこ。

スライムたちは見事な足の速さで、アイテムを引きずり逃げていく。

「待ちなさーい! 【ファイアウィップ・ストーム】!」

【銀のティーポット】を盗まれたローチェは、ムチの高速乱舞でスライムを攻撃。

やはり小型のアイテムを盗んだ個体は、身軽でとにかく速い。

描かれる炎の軌跡は隙間をうかがうことすら許さないが、速度自慢のスライムはわずかな空間を、見事なジグザク走行で通り抜けていく。

「レンちゃん! その子をお願いっ!」

ローチェは可愛く首を傾げながら両手を合わせ、アイテム回収をレンに託す。

年上にもかかわらず、臆さずかわい子ぶる姿にレンも「さすが」と反応。

「了解! 何でも食べるスライムには、ここはご馳走の盛られたテーブルに見えるのかもねっ! 【誘導弾】【連続魔法】【ファイアボルト】!」

だがこのスライム、やはり回避が上手い。

続けざまに放たれる中遠距離攻撃を、見事にかわしていく。

スライムはレンを挑発するように、真横を堂々と抜けて行った。

「そうはさせないわ! 【黒翼】!」

ここまでされて、黙っているわけにはいかない。

黒い羽を散らしながら高く空へ舞い上がったレンは、そのままスライムに向けて一直線。

【フリーズストライク】を込めた【魔剣の御柄】を振り抜きに行く。

「はああああ――っ! 解放!」

放った二連は見事に直撃。

「いまあっ!」

駆けつけたローチェが必死の飛び掛かりで、アイテムにしがみつく。

こうして中遠距離組の二人は、見事な連携で【銀のティーポット】を取り戻してみせた。

あざといウィンクで礼を伝えるローチェに、思わず笑い返すレン。

その足もとをしれっと駆けていくのは、別個体のスライム。

こちらも軽い【豪華なランプ】を取り込み走る。

「そーら、捕まえ――――あれっ!?」

マウント氏の股を抜く形で、余裕の逃走。

「くっ、逃がすかあっ!」

慌てて追いかけようとすると、手ぶらの別スライムがそのまま飛び掛かり。

「うおおっ!?」

マウント氏を転倒させた。

しかしこちらも、連携なら慣れたもの。

「【砲弾跳躍】ぽよーっ!」

【豪華なランプ】を持った個体に、掲示板組スライムが体当たりを決めて吹き飛ばす。

「スライムがスライムにぶつかって、巻き込まれたスライムが吹き飛んだ!?」

その先にいたスライムにぶつかったスライムから、【豪華なランプ】が転がり落ちた。

「【稲妻】! まだです! 【反転】【三日月】!」

転がったランプを奪いに行くスライムを、ツバメが最速で打倒。

するともう一匹のスライムが、目ざとくランプの回収へ。

「メイさんっ!」

「りょうかいですっ!」

二人は残った一匹のスライムを、挟み込むような形で走り出す。

二人と一匹の奪い合いだ。

「【加速】!」

「【バンビステップ】!」

速度を上げると、なんとスライムは二人を引き付けてから急加速。

「な、なんとっ!?」

「ええええっ!?」

スライムはランプを持って駆け抜て、残ったメイとツバメはそのまま抱きしめ合う形になった。

「あはは、ツバメちゃん大丈夫?」

「は、はい……っ」

吐息のかかる距離で見つめてくるメイに、思わず恥ずかしそうに視線をそらすツバメ。

「あっ! 待てーっ!」

メイはあらためて、見つけたスライムを追って走り出す。

「「「いいものを見た……」」」

一方一部の掲示板組は、ちょっとスライムに感謝するのだった。

「もう返してもらうよっ! 【重ね着】【バンビステップ】【アクロバット】!」

作り掛けの石壁を飛び回り、逃げるスライムに対して、メイも華麗な跳躍で応戦。

【鹿角】と【猫耳】の連携による移動力は、あまり見事だ。

スライムが逃げ込んだ先には、シオールと迷子の姿あり。

「これ、いけるかもっ! シオールさん、迷子ちゃんっ!」

二人は逃げ込んできたスライムに、即座に反応。

「【爆炎正拳突き】!」

豪快な炎と共に繰り出す右の拳を、スライムが速い移動でかわす。

「続きます! 【ジェット・ナックル】!」

かわしたところを狙い撃つのは、武骨なガントレットをつけたメイド少女、迷子。

蒸気を噴き出しながら迫る一撃を、なんとスライムは続けて回避する。

こうして二つの拳撃を、見事な身のこなしですり抜けてみせた。

「構わないよ、だって本命は――」

「メイさんですからっ!」

「お任せくださいっ! 【装備変更】【裸足の女神】!」

あくまで本命は、メイの一撃。

一瞬でスライムを射程範囲に収めたメイは頭装備を【狐耳】に、武器を【肉球グローブ】に変更。

「【虎爪拳】だああああ――っ!」

二度の回避を成功させたスライムは、さすがに体勢を変えることができない。

炎を上げる爪の一撃で見事、打倒することに成功。

シオールが【豪華なランプ】を回収するのを確認して、両手で「コンコン」と狐ポーズを決めるメイ。

「さっすがメイちゃん!」

「お見事でしたーっ!」

メイを抱きしめるシオールと、それに混ざっていく迷子。

これで小型のアイテムを『持つ』高速スライムはあと一匹のみだ。

「待つのですな!」

【銀鉱石】を持つスライムを見つけたのは、なーにゃ。

三体のドールで一斉攻撃に入る。

「アルカナちゃん【ソニックアサルト】!」

「スワローちゃん【二連空閃】!」

これを見事な移動でかわした先にいたのは、盾を持つヘルメス。

「ヘルメスちゃん! 【シールドバスター】!」

前衛二人を抜かれては、やはり厳しい。

盾の大きな振り回しを、発動する前にスライムが突然跳躍。

「なっ!?」

ヘルメスの盾にバウンドするような形で大きく跳躍して、空中に逃走。

「しまったですな!」

「い、いきますっ!」

しかしそこに駆けてきたのは、重いアイテムを盗んで遅くなっていたスライムを狩っていたまもり。

「【チャリオット】【エクスプロード・ランス】!」

空中のスライムに向けて、ランスを突き出し炸裂させる。

空中での範囲攻撃には、さすがに避ける術もなし。

スライムは砕け散り、【銀鉱石】も、無事に回収となった。

「助かったですな!」

「い、いえいえ……っ」

間に合って良かったと、安堵の息をつくまもり。

「これで、大方のアイテムは取り戻せたんじゃない?」

「そうですね。それにこれ以上の窃盗は、こちら側の警戒が強まったので不可能でしょう」

慌てて逃げていくスライムたち。

見た限り、アイテムを持っている個体は見当たらない。

こうしてスライムたちによる集団窃盗事件は、収束へと向かっていく。しかし。

「なあ、もしかしてあれが……スライムたちのリーダーか?」

逃げるスライムたちの行き先は、皆同じ。

どうやらこのスライムたちは、元々一匹のスライムだったものが分身として繰り出されたもののようだ。

次々に一つに集まっていくと、背景が濃く歪んで見えるほど濃厚なものになった。

そしてその揺らぎはどこか、邪に見えなくもない。

「こ、ここからは、力づくで奪いにくるということでしょうか」

思わずつぶやくまもり。

その言葉を肯定するかのように、スライムが大きく一度飛び跳ねた。