軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1462.次は重鎮石を目指します!

「皆さんおかえりなさい!」

サツキタウンの出入り口前まで戻ってくると、マーちゃんが駆け寄って来た。

「【不腐鉄】鉱石、採ってきたわよ」

「お見事です! すれ違いで情報がお伝え出来なくて心配していたのですが、安全な山の方に向かったんですね!」

「いえ、坑道の方に向かったわ」

「「「っ!?」」」

その言葉にざわつくハウジング勢。

「あの坑道から、初見でこんなに【不腐鉄】鉱石を持ち帰ったのか……」

「すごいすごいと聞いてはいたけど、本当にすごいなぁ」

やはり色々と準備をしたうえでも、厳しい回収が見込まれる洞窟だったようだ。

レベルの高低だけに収まらない難しさもあるため、皆一様に驚きを見せている。

「き、奇妙な敵が多かったです」

「そうなんです。異世界は割と『殺しに来る』という言葉が、普通に使われるような瞬間があるんです」

「影の魔物にも驚いたわ」

「影の魔物……?」

首を傾げるハウジング勢。

「初めて聞きました。この世界では魔物の『行動範囲』がおかしいことが稀にあるので、そう言うタイプの魔物だったのかもしれませんね」

ある程度RPGなどには、『この魔物はここに出る』という範囲が決まっている。

だが異世界では、その枠を超えてやって来ることもあるようだ。

「特定の条件を満たさないと、何度でも復活する敵は結構厳しいわね」

「はい。骨の魔物はルールに気づくまで苦労し続けました」

「よし、数も十分だね。【不腐鉄】鉱石は確かに受け取ったよ。俺たちはさっそく加工に入ろう」

「でも一発でこれを持ち帰るのか……結構レベルの高いパーティと一緒でも複数の犠牲者を出して、この四分の一程度の収穫みたいな状況だったのになぁ」

「だからこそ、今回は希望が持てるんだよ」

鉱石を数えていた加工師たちが、メイたちの働きぶりに気合を入れる。

どうやら【不腐鉄】はコーティングに使うらしく、専用の工程があるようだ。

「ありがとうございました。これで思ったよりだいぶ早く【不腐鉄】が集まりました。次は【重鎮石】ですね」

マーちゃんはそう言って、次の目標地点の説明を始める。

「サツキタウン北部にある山間で多く採れます。ここは採石場特有の風景の中心に銀色の湖がありますので、近くにある置き去りのハンマーで叩いてみてください」

採石場に行くのに、ハンマーで湖を叩けという奇妙な話に首を傾げるレン。

だがここは異世界。

やはり通常世界とは常識が違うのだろう。

「それとレンさん、実はつい先ほど……ご依頼のあれが届きました」

「本当? 助かるわ」

「こちらになります、どうぞ」

「ありがとう。往復の間に調整してみるわね」

そう言ってレンは、肩のパラス・アテネを撫でる。

「さっそく、次の目的地に向かいましょうーっ!」

一方メイは新しい世界の変わった常識が楽しくて、率先して馬に乗る。

空になった荷車を引いて向かう先は、北部にある山間の採石場だ。

「いってきまーす!」

「いってらっしゃいませーっ!」

今回もレンたちは荷車の上。

手を振るマーちゃんに見送られて、四人は北部の採石場を目指す。

「少し右に寄って」

メイはその視野と耳を使って、明確に魔物の類がいる場所を避けてスイスイ進むことが可能。

思ったよりも早い時間で、採石場へ続く山道につくことができた。

鮮やかな紫の葉を付けた奇妙な木に感心しながら、道を進んで行くと――。

「これが、採石場ですか?」

思わずツバメが感嘆の声をあげた。

灰色の岩壁が続く山間部は確かに、現実世界で見る採石場の雰囲気だ。

だがその中心にあるのは、マーちゃんが言う通り銀を溶かした液体がたまっているかのような湖。

その大きさは直径100メートルに届かないほどだが、やはり現実では見ない光景だ。

「すごいねぇ……!」

ここでもメイは、尻尾をブンブンしながら銀の湖を見渡す。

「見たことのないものだらけね、本当に」

「そ、そういえばハンマーがあると言っていましたね」

マーちゃんの言葉通り、岩壁の一部には立てかけられたハンマーが数本あった。

岩を大雑把に削り出して作ったようなそれは、大太鼓に串を刺したような大きさがあり、後衛に振るのは難しい。

「それでは言われた通り、湖を叩いてみましょうか」

「りょうかいですっ!」

メイとツバメは置かれていた大きめのハンマーを手に取り、湖の際まで進む。

「叩いたら派手に飛び散りそうだけど……」

念のため辺りを見回した後、杖を構えるレンと盾を持つまもり。

「それでは、いきますっ!」

「どうせなら思い切っていっちゃって!」

「せええええのっ!!」

メイとツバメは思いっきりハンマーを振り上げると、そのまま後ろに倒れるのではないかというくらい大きく振りかぶる。

「「それええええええええ――――っ!!」」

そして全力で、銀の湖面に向かって振り下ろした。

盛大な衝突音はやはり、水面を叩く音と大きくは変わらない。しかし。

「わっ、わわっ! わああああああ――――っ!!」

ハンマーを叩きつけた個所から、一気に広がる衝撃。

その波紋に合わせて、湖面を作る銀の液体が固体へと姿を変えていく。

銀の湖に広がる灰白の変化は、なかなかに面白い。

「これは凄いですね……!」

「あ、圧巻です!」

「こういう素材、どこかで見たことあるわね。普段は液体だけど、衝撃を受けると固まるって特性を持ったやつ」

その姿と硬度を変えた銀の液体は、灰白の美しい石に変わった。

そしてこれこそが、求めていた【重鎮石】だ。