軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1453.オーロラ温泉です!

オーロラが見たい。

そんな願いをかなえるのは、意外と難しい。

現実世界では、天候によって出現の有無が決まってくる。

それは『運』の良し悪しが絡むという事だ。

旅行というには、手間も金銭もかかる距離。

そのため少女は、星屑の世界に来るや否やアイアスラントを目指した。

そこで見たオーロラは、あまりに見事だった。

少女はそのまま、アイアスラントを拠点に選んだ。

「温泉もいつも通り、問題なし」

島自体が火山であるこの土地は、様々な場所に湯が湧く。

温泉システムが始まると、メイたちが楽しむ姿が広報誌に乗ったことで、人気が噴出。

それを見た少女はハウジングを進め、オーロラの見られるラグーンを完成させた。

問題は、まだ呼べる仲間がいないこと。

良いものができはしたが、一人でそれを占有し続けるのは意外と寂しい。

「ついに、この時が……」

なだらかな丘陵に作られたレンガ積みの建物は、ロールケーキのような形状をしている。

その中には暖炉と、木製の柔らかな雰囲気を持つ家具や植物などが置かれていて、照明も橙色。

とても雰囲気が良い。

そんなとっておきの場所が、ついに今日初めてのお客さんを迎える。

メイたちは、星屑の宣伝を現実世界で行うほどの有名プレイヤー。

「あとで遊びに行く」という言葉は、挨拶のようなものであると考えるのが普通だろう。

だが人付き合いの少ない少女は、そんな言葉をしっかり真に受けて、今や遅しと待ち焦がれていたのだった。

「わあーっ! 可愛いお家だねーっ!」

聞こえた元気な声に、思わず安堵の息がもれる。

たどり着いた建物の外観は、好評のようだ。

ただ一つ思い違いは、五月晴れの後ろに掲示板組もちゃっかり付いてきていたことだ。

「……えへへ、来ちゃった」

かわい子ぶる掲示板組剣士の頭を、魔導士がはたく。

「ごめんなさいね。ここの話をしていたら、どうしても見に行きたいって」

苦笑いのレン。

メイたちがオーロラを見ながら温泉に入ると聞いたら、我慢などできなかった掲示板組。

邪魔なら「白い迷彩装備で雪上からのぞくだけでいい」という極まった条件まで出して、追従を懇願。

少女が良ければという話で、一緒にやって来たのだった。

「ど、どうぞ!」

まさかの事態に驚きこそしたが、こんなに賑やかなことはこれまでなかった。

少女はロールケーキ型の建物の中に、全員を案内。

そのまま入口の反対側に付けられた、ガラス戸のもとへと進む。

戸を開くと、そこに広がるのは25メートルのプールを円形にしたような、見事なブルーラグーン。

「すごーい!」

「いいじゃない!」

「「「おおおおお――っ!!」」」

広がる雪渓にあがる、歓喜の声。

美しいコバルトブルーの湯が、もくもくと湯気を上げている。

そしてその先に見えるのは、緩やかな丘の稜線と星の瞬く大きな夜空。

木製の階段を数段ほど降りれば、そこはもう温かな湯の広がる空間だ。

「ああー、たまりません……」

頭にヒヨコちゃんを乗せ、思わず渋い声を上げたツバメに笑う。

インナー装備で適当な場所に腰を降ろせば、心地よい温かさが身体を包む。

やや重たい湯の重みが、何とも心地よい。

「砂煙と溶岩の後に入ると、また格別ぽよー」

「スライムちゃんの入ってるところだけ、お湯に穴が開いてる感じに見える……」

「迷子ちゃん、お湯の中で迷子になるのはさすがにやめてくれよ」

「ぜ、善処します……!」

「インナー装備の使徒長殿……最高だ」

「そういうのは俺たちが言うんだよ」

さっそく楽しそうな掲示板組。

元々半裸の金仮面も、風呂が意外と様になっている。

「プライベート温泉だなんて、面白いこと考えるわねぇ」

「広くて気持ちいいよーっ」

「少し、大きくし過ぎてしまったのですが……」

その心地よさにメイの猫耳が垂れるのを見て、思わず目を奪われてしまうまもり。

のんびりと楽しむメイたちの隣には、少女が恥ずかしそうに笑っている。

「そのおかげで、全員入ることができましたね」

「み、皆さんも楽しそうです……っ」

スリル満点の崩壊と溶岩の後、何の焦りもなく浸かる湯は本当に気持ちが良い。

大の字でプカプカ浮かぶいーちゃんと、鼻から上だけ出ているりーちゃん、そしてパチャパチャと水浴びをするパラス・アテネの姿にも癒される。

思わず並んで息をつくと――。

「あっ! 見えてきました!」

少女が夜空を指差す。

いつも通りの時間。

夜空に広がるオーロラが、はっきりとたなびき出した。

緑から青、そして紫に変わっていく空のカーテンは、思わず見とれてしまうほどだ。

「綺麗だねーっ!」

「天候関係なしっていうのは良いわね。こういう瞬間は、まさにこの世界の醍醐味だわ」

「は、はひっ!」

「とても良いハウジングの使い方ですね」

思わず見とれてしまう、美しさ。

四人ついつい、肩を寄せ合って笑い合う。

それでも全然ツバメの頭から落ちないヒヨコを見て、クスクスと笑うレン。

「これはまた、いいマウントができそうだ……」

「すごい笑顔でまたロクでもない事を」

「あはははは! やっぱり溶岩に沈めておくべきだったなぁ」

掲示板組も空とメイたちを交互に見つめながら、ゆっくりとオーロラを観賞。

楽しそうにする火山クエスト組を見て、少女は嬉しそうな笑みを浮かべる。

最大の危機を乗り越えたアイアスラント。

このクエストに挑んだのがメイたちでなければ、この温泉も溶岩に飲まれていたかもしれない。

賑やかな温泉に、夜空を飾るオーロラ。

少女にとって今日は、忘れられない日になりそうだ。