作品タイトル不明
1421.妖精と村の謎
「メ、メイさんが見つけた妖精はどんな感じだったんですか?」
「小さくて、羽がキラキラしてたよ!」
以前エディンバラで待ち合わせした時に、早く来過ぎてしまったメイは、時間までケツァールでブリテンを見て回っていた。
そんな中で見つけた、緑の綺麗な小さい村。
ティングリーと呼ばれるその村は、何かありそうで何もない。
近くの狩場でレベルを上げるなら、一時的に拠点にするくらいの規模だ。
付随した小さなクエストがいくつかあり、プレイヤーは時々やって来るくらいの状態。
「村を見て回っていたんだけど、そこで妖精を見た気がするんだ」
緑が綺麗で、近くに湖があるという立地だけでご機嫌だったメイ。
見かけた妖精を少し探してはみたものの、見つけられないまま時間切れ。
探索を切り上げて集合場所に向かったというのが、前回の事だ。
「妖精はまだ、見たことがないわね」
「仕事をしてくれる小人のような存在はいましたね。可能性はあると思います」
今回も同じく、エディンバラからケツァールでティングリーを目指す四人。
「あったよ!」
メイの言う通り、緑と共生している村は花も咲いていて美しい。
四人はさっそく、ケツァールに手を振りながら着地。
付近を見て回っていると、村の女性が話しかけてきた。
「うちの娘たちを知らないかい? お昼になっても帰ってこないんだよ」
「探してきましょうか!」
「それじゃ頼もうかね。娘の名前は12歳で姉のエルシーラと、10歳の妹フランシスカだよ。見つけたら連れてきてくれないかい?」
「りょうかいですっ!」
こうしてメイたちは、いかにもなクエストを引き受け、また歩く。
「こういう時はまず、木々のある方かしら」
「そーなの?」
「多くのパターンは森に迷い込んでしまったところを、魔物に追われているパターンですね」
「言われてみれば、そうかも……っ!」
これまでを思い出して、興味深そうにうなずくメイ。
四人は真っすぐ森に向かい、鳥の鳴き声の聞こえる中を進む。
「っ!」
するとメイの猫耳が反応。
尻尾がピンと立った。
「向こうに小さな足音がするよ! このリズムは人間じゃないかな!」
「メイさん、聞き分けがすごいことになっていますね」
感心するツバメにうなずきながらも、一秒でも早く状況を確認しようと駆ける四人。
するとその先に、二人の少女がいた。
「エルシーラ、フランシスカ姉妹ね! お母さんの頼みで探しに来たわ!」
レンが呼びかけると、二人は互いを見合ってからうなずいた。
これで無事合流に成功だ。
「あ、後は魔物ですね……」
念のため、付近を注意しながら歩く四人。
しかしメイもその気配は感じておらず、安定そのもの。
この森はそもそも明るく、あまり危険な気配もない。
「これは、森の中を動く姉妹を見つければよいというクエストなのかもしれません」
「す、すれ違いにだけ気を付ければいいやつですね……」
いよいよ村が近づいてくるも、やはり何もなし。
簡単なクエストだったんだと、安堵の息をついたその時。
「エルシーラちゃん、落し物だよ」
メイが姉の落とし物に気づいて、拾って呼びかける。
「はい」
するとメイの呼びかけに答えたのは妹。
それから慌てて姉が振り返り、ハンカチを受け取った。
「わっ!」
「フランシスカさん、大丈夫ですか」
木の根に足を取られた妹に、声をかけるツバメ。
呼びかけに振り返ったのは姉。
それから少し遅れて、妹が「だ、大丈夫」とうなずいた。
「なんだか少し、会話がかみ合っていませんね」
「そ、そうですね」
迷子になっていたことで疲れて、二人の反応が混乱している。
それか単純に、声が聞き取りにくかった。
そんな風にツバメたちは受け取った。
もう村は目前で、このまま魔物は出なさそうだ。しかし。
「……ねえ、エルシーラ」
不意にレンが、名前を呼んだ。
すると今度はなぜか、二人が同時に振り返った。
それから思い出したかのように、妹が視線をそらした。
姉エルシーラと、妹フランシスカ。
何やら、考えるようにするレン。
足を止めて、姉妹に問いかける。
「もしかして二人って――――入れ替わってる?」
「「っ!!」」
その言葉に姉妹が、ビクッと身体を震わせた。
足を止めたまま、互いを見合う姉妹。
やがて妹の方が、観念したかのようにうなずいた。
「はい……私は姉のエルシーラ。そして『私の身体』にはフランシスカが入っています」
「ええっ!?」
『フリ』をしているのではなく、中身が入れ替わっている。
意外な展開を聞かされて、驚くメイ。
「わ、私たち……入れ替わってるー!? の展開ですね……!」
このクエストは、その事実に気づかず姉妹を連れ帰ればそれで終わり。
気付いて『問えば』、新たな展開を見せることになっているという変わり種だ。
「実は妖精のイタズラで、中身を入れ替えられちゃったんです」
「なるほどね」
「森で遊んでいた時に、急に入れ替わって……びっくりしたけど、家族を驚かせないように黙っていようって、フランシスカと決めたところだったんです」
「お姉ちゃん……」
姉の身体で不安そうな声を出すのは、妹のフランシスカ。
「イタズラ妖精を捕まえれば、元に戻れるのですか?」
「たぶん……冒険者さんたちなら、捕まえられますか?」
「おまかせくださいっ!」
小さなティングリーの村で起きた、不思議な事件。
メイの元気な返事で、クエスト受注が決定した。
「レンちゃん、よく気づいたねー!」
「驚きました。てっきり演出かと思いました」
「す、すごいですっ」
「ちょっと前に、偶然そういう映画を観たのよ。ちなみに二人は、妖精がどこにいるか分かる?」
うなずく姉妹。
「それじゃあ、案内してもらってもいい? どうやらメイの見つけた妖精は、本当にいるみたいよ」
「おおーっ!」
こうして四人は再び、森の中へと引き返すことにしたのだった。