作品タイトル不明
1401.星城姉妹と駅中事変
「香菜……?」
学校帰りに、駅近くで見かけたのは妹の香菜だった。
「可憐姉、今帰り?」
「そうだけど、香菜はどうして駅前に?」
「本を買いに来たの。あと、広告をまた見たいなと思って」
「……そ、そう」
先行する香菜に続く形で、幹線駅の大型広告の前に向かう制服姿の星城姉妹。
そこには変わらず、五月晴れ四人のポスターが飾られている。
「メイちゃん可愛い!」
「ツバメちゃんは、今回も決まってたな!」
「まもりちゃんの懸命な防御が熱いんだよ!」
見に来たプレイヤー陣が盛り上がる中、レンの広告前は案の定真っ黒。
見事に使徒たちが集まっていた。
先日の魔神討伐の件もあり、使徒勢はさらにその意気をあげているようだ。
「だから、なんで私のところだけ……」
放課後ということもあり、むしろ先日より増えている闇の使徒。
恐ろしいことに、大学生やそれ以上なのではないかと目される子までいる。
レンの広告前に静かにヒザを突いた闇の使徒は、語り出す。
「聖教都市で行われた我らとの戦いは、力を試すためのものだったと言われている」
「っ!?」
レン、驚愕。
どうやら聖教都市で闇を継ぐ者として使徒たちと戦う際に告げた、「使徒の力を見られることを楽しみにしている」という言葉を、未来を見据えた試験だったのだと解釈したらしい。
「そして闇であることに溺れていた我らを、戒めてくださった。これは――――ジ・ハードの到来を予期するものだと言われている」
「誰が言ってるのよそれ!?」
「来たるべき審判の日に、我らが大いなる意志の力を超えられるかどうか……闇を超えし者はその時、光と闇の二つを掲げて立ち向かうのだという……」
「なんかついに、予言みたいなことを言い出したんだけど……!?」
ふくらみ続ける設定に、いよいよ白目をむくレン。
「……お姉ちゃん、今日って学校に行って来ただけだよね?」
「それ以外に何があるのよ」
「現実でも、闇の使徒集会が開かれてるんだけど……関わってないよね?」
「初耳なんだけど!?」
「そこで……お姉ちゃんが祭られてるんだけど」
「初耳なんだけどぉぉぉぉーっ!!」
香菜の学校では今まさに新人の中二病勢が、レンを大物として見て崇めている。
その事実を目の当たりにしたことで、香菜はここ数日特に疑惑を強めていたようだ。
「もしお姉ちゃんがもう実施より布教に動いてる段階なんだったら、最悪……身体を張ってでもお姉ちゃんを止めないといけないと思って」
「香菜の中の私は、どうなってるのよ」
「自分で儀式をしなくなったのかなと思ったら、儀式をさせる側になってたって感じ」
「……そもそも私はもう、卒業してるのよ」
「本当に?」
「本当よ!」
不審そうな目を向ける香菜に、必死の弁明を続けるレン。
「まあ、確かに最近は目立つ服は買ってないし、儀式自体をしているところは見てないけど……」
「そうでしょう!? そうなのよ!」
メイたちと楽しそうにしているところを見ると、その疑念は忘れてもいいのかなと思ったのも事実だ。
五月晴れの時のレンは、とても自然なように見える。
「それでは、失礼いたします」
闇の使徒たちは勤めを終えたのか、一度深く頭を下げると、広告前から立ち去っていく。
「っ!」
するとその前からやって来たのは、白の服に身を包んだ少女たち。
自然と闇の使徒たちと、すれ違うことになる。
走り出す緊張に、思わず可憐が息を飲む。
しかし両者は、明らかに互いを意識しながらも、ぶつかることなく静かにすれ違っていった。
「……さすがに、ここでのぶつかり合いはなかったみたいね」
安堵の息をつく星城姉妹。
すると光の使徒たちは、やはりレンのポスターの前でその足を止めた。
「仕組まれた光と闇のぶつかり合い。その中で道を指し示し、魔神を討つことで大陸を守ってみせた」
「聖城レン・ナイトメア」
「すでにあなたは――――『光と闇を超えし者』と呼ばれています」
「はあっ!?」
まさかの事実に、驚愕しながら自分の口を押さえる可憐。
『闇を超えし者』からの、まさかのランクアップを知らされる。
「天使の輝きを放つ神のごとき一撃……光と闇を掲げ、一体どこへ向かうのか。あなたのこれからの動向は、さらに注意深く見させていただきます」
「……それでは」
光の使徒たちも、一礼してポスターの前を離れる。
振り返って歩き出すと、視界に入ったのは美少女姉妹。
どこか見覚えがあるが、思い出せない。
光の使徒たちはそのまま美しい立ち姿で、綺麗な列を崩すことなく立ち去っていった。
「……可憐姉」
「……なに?」
「助けに来てくれた時はカッコ良かったけど……やっぱり疑惑の解消は保留で」
「なんでよ!?」
確かに一見、可憐は普通の少女のように見える。
「だって、結果としては名声をあげてるし。これが全部計算通りなら……」
「そんなわけないでしょ!」
聖城レン・ナイトメアは、むしろその影響力を光の勢力にまで伸ばした。
今や中二病少女たちに儀式を行わせる側となった可憐はまた、香菜の鋭い視線に震えるのだった。