軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1400.宵闇ネムとナイトメア

「レンちゃんすごーい!」

「メイたちが、道を拓いてくれたからよ」

飛びついてきたメイと共に、帰って行く召喚獣を見送りながら、息をつくレン。

「夜の闇を消してしまうほどの魔法……すごかったです!」

「すばらしい威力でした……!」

今も舞い散る粒子の中で、喜び合う四人。

「カナちゃんも、ありがとーっ!」

「助かりました」

「はひっ! 見事な格闘でした!」

そう言って、観戦用飛行艇に向けて手を振るメイたち。

「すごい……」

【エンジェル・ハイロゥ】は、遠くからでも見えるほどに盛大なエフェクトを誇る。

魔神を葬った聖なる輝きに、特等席のカナは唖然としながら手を振り返した。

「これが国や大陸、世界を守るレベルの戦い……」

トップ勢の中でも群を抜いて『強者』と戦ってきたメイたちを前に、あらためて嘆息してしまう。

「っ!」

そして、聞こえてきた爆発音に思い出す。

魔神の最後の腹心である、竜型の魔物のことを。

真紅のマントをまとい、灰色の身体に赤い目を持つ二足の竜。

迫るは九条院白夜と、黒神リズ・レクイエム。

「【ツインストライク】!」

空から迫るドラゴンが、その爪で放つ一撃を大きなステップでかわす腹心竜。しかし。

「【ライトニングスラスト】【極光乱舞】!」

白夜の刺突が盛大な輝きと共に爆発を起こし、大きく弾かれたところに飛んできたのはリズ。

「これが貴様に送る、葬送のレクイエムだ! 【闇の翼】【暗天の大剣】!」

豪快な大剣の回転斬りが、容赦なく敵を斬り飛ばす。

光と闇の使徒を率いる者の連携に、腹心竜はそのまま光の粒子に変わって消えた。

「勝った……!」

「勝ちましたね!」

思わず声をあげる闇の使徒、光の使徒。

「やむを得ぬ共闘だ……勘違いはするな」

「ふっ、当然ですわ」

レンの前で、格で下回る腹心に長々と時間をかけていたのでは恥ずかしい。

その点では、ギリギリ間に合ったといったところだろう。

二人は当然のように剣を収め、クールな笑みを浮かべながら振り返る。

「……あっ」

するとレンは思い出したように妖しげ笑顔を作り、ゆっくりとした賛辞の拍手を送ってみせる。

「フフッ、楽しませてもらったわ。まだ使徒としての覚悟は……失われていないようね」

「無論だ」

「当然ですわ」

魔神たちの残した魔力の残滓が粒子となって舞う中、三人は笑い合う。そして。

「天使並みの聖なる力ねぇ……五月晴れ、やっぱり危険だなぁ」

見学者たちの出した飛行艇の縁に腰かけ観戦していた刹那が、同じように笑いながらつぶやいたのだった。

魔神から見事な勝利をあげ、中央大陸の崩壊を防いだレンは一人、夜の街を歩く。

足を運んだのは、懐かしい場所。

フランシスにある、とあるクエスト用の廃教会だ。

中には基本、NPCを含めて人がいない。

そのため中二病には、『たまらない』場所になっている。

「……ナイトメア」

そこにやって来たのは、宵闇ネム・ラグナロク。

「来ると思ったわ」

確かこの場所だった。

突然ネムに「私のものになってもらう」と宣言されたのは。

あの時は、互いに全力で中二病の真っただ中。

関わりが多くはなかった二人。

レンは「我が力が欲しければ、私を超えてみせることね」と言った。

中二病ゆえの本気さと、それゆえのお約束。

現実と虚構の隙間で行われた会話。

それがまさか、長い時を経てこんな大きな事件を生み出すとは予想もしなかった。

「私の敗けだよ、ナイトメア」

「言ったでしょう? 私は敗けないって」

笑ってレンは、十字架を見上げる。

「……ただ。私はもう、不用意に自分を賭けるわけにはいかないの」

「どうして」

「今のパーティが大事だから。離れることは考えられない」

そう告げて、一つ息をつく。

「でもリズや白夜やルナなんかと勝負したり、共闘したり。そういうのも正直、楽しいと感じてる」

これであとは、目さえ覚ましてくれれば完璧なのだが。

「だからあなたも……いつでも来なさいよ。歓迎するわ」

「分かった」

素直にうなずくネムに、安堵の息をつくレン。

「それなら……」

ネムは真っ直ぐ、そんなレンの目を見つめた。

「五月晴れごと、ナイトメアを私のものにする」

「…………は?」

まさかの宣言に、硬直するレン。

「ちょ、ちょっと待って! どこでそういう話になったの!? いつでも来なさいって、勝負しにじゃないわよ!? 遊びによ!」

「五月晴れが大事なら、一緒に持って行けばいい。ナイトメアは、必ず私のものにする」

ネムは一人、決意を新たにする。

白銀の髪をなびかせ、夜闇を駆けていたかつてのレン。

リズや刹那に一言で戦況を変えうる一手を示し、危機にあった自分を助けてみせたレンの姿を、あらためて思い出す。

そして、気合も新たに顔を上げると――。

「ナイトメア。次は、負けないから……っ」

これまでからは想像もできないような可愛い笑みを残して、駆け出して行くネム。

「……またね」

「嘘でしょ……?」

レンは残された廃教会で、天井を見上げる。

こうしてまた一人、『一日も早く中二病から目を覚まして欲しい少女』が増えてしまったのだった。