軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1388.復活の魔神と、過去の約束

中央大陸に広がる荒地には、大小切り立った岩山がいくつかせり立ったポイントがある。

飛行艇で通れば、何かの目印にされるようなその場所に、登る三本の光柱。

その下に、一人の少女がたたずんでいた。

地平に消えようとする太陽。

薄藍色の空に一番星が輝き、小さな苔の生えた月が登り出す。

「見事なものね」

やってきたレンが声をかけると、少女はうなずくでもなくその視線を向けてきた。

「これだけのクエストを一人で引っ張ってくるなんて、大したものだわ」

すると少女は、身にまとっていた黒ローブを外して本来の装備に変える。

純白の髪に、赤紫のバラ飾り。

黒の衣装は、俗に言うゴシックロリータの路線だ。

しかしそのところどこに付けられた軍服のような飾りが、彼女を特別なものにしている。

「ついに――――時が来た」

少女はただ一言、そうつぶやいた。

「世界の終りが来た、そういうことでしょうか」

ツバメが問いかけると、少女は首を振る。

それからゆっくりと、その指をレンに向けた。

「時が来た。約束通り聖城レン・ナイトメアは――――私がもらう」

「「「…………」」」

「はああああああああああ――――っ!?」

突然出てきたまさかの言葉に、驚愕の声を上げるレン。

意味が分からずメイたちが困惑する中、レンも唐突な言葉の意図を分からずにいたが――。

あらためて少女の顔を見て、不意に過去の記憶がよみがえる。

それは数年ほど前のこと。

『溺れなさい――――永遠の悪夢に』

『聖城レン・ナイトメア。やはり戦闘における機転が段違い……』

燃え盛る炎と共に訪れた、一つのクエストの終わり。

少女はつぶやき、ジッとレンの決め顔を見つめる。

『でも。いつか必ず世界を変えるほどの大事を成して、我が名を轟かせてみせる』

それは数年前、憧憬を抱く少女がレンに向けて宣言した言葉。

『そしてその時は……私のものになってもらう』

その時のレンが、返した言葉は――。

『ふふ、面白そうじゃない。でも、果たして付いてこられるかしら? 私は私を超える者にしか、この身を預けたりはしないわ』

『……分かった。それならいつか、必ずナイトメアを超えてみせる』

「あ、ああああああああ――――っ!!」

過去の会話を思い出して、レンは唖然とする。

確かに、記憶にある。

中二病ならではの、設定に則って行われた会話。

この後少女は、発足寸前だった闇の使徒に加わることなくソロ活動を開始した。

お互いに、ノリでしたはずの約束。

だが少女は、今も本気のままでいる。

レンを、我がものにする気のようだ。

「聖城レン・ナイトメアを我が片翼として、この世界を闇で覆い尽くす」

目の前の少女にあらためてそう宣言されたところで、レンはいよいよ震え始めた。

「ちょっと待って。これって全部……過去の私の会話から始まった話なの……?」

一方の少女は、変わらず言葉を続ける。

「まずはこの大陸を、我が混沌の力の前にひざまずかせる」

そこまで言って少女は、視線を後方へと向ける。

やって来たのは、黒神リズを先頭にした闇の使徒たち。

そして九条院白夜に率いられた、光の使徒たちだ。

「闇の者など、必要ない」

「闇を超えし者の援護がありながら、機を逸した光の使徒共がよく言う」

腹心の召喚を止められず、遅きに失した両者はここでも火花を散らしている。

もちろん出されたクエストは、魔神の打倒だ。

今回は全ての陣営が、この中央大陸の守護という同じ目標のもとに集まっている。

さらに遅れてたどり着いた飛行艇は、掲示板組紅の翼によるものだ。

多くのプレイヤーを乗せた機体が、始まる戦いに熱い視線を送り始める。

「さあ、始めよう」

居並ぶ使徒たちがメイたちの背後についたところで、少女がそっと右腕を上げる。

すると三本の光の柱の内、左右の二本が光を強め出した。

噴き出す風に、下草が大きく揺れる。

そして光の爆発と共に、大きな二本角を持つ灰色猿の魔物が現れた。

「……っ!」

黄色い目をしたその姿に、闇の使徒の一部が反応する。

それはリズ達が仕留め切れなかった腹心猿。

再登場に合わせて、角には稲光の様に走る雷光。

一回り大きくなった体躯は、さらなる強化をしている。

「やつは……!」

続けて現れたのは、二足のヤギの魔物。

その青い目を、見間違えるはずがない。

エトワールたちが五月晴れと共に戦いながら、止めることができなかった腹心だ。

こちらも一回り大型化し、高まった魔力が足元から風になって吹き荒れる。

「戦いの前に聞かせろ。貴様は一体何者だ?」

「気になりますわね。ぜひご紹介いただけますか? 光か、それとも闇か。はたまた混乱をもたらす悪なのか」

リズと白夜の問いに、少女は淡々と答える。

「光でも闇でも、どちらでもない。至高の力にて終焉を呼ぶ者。それが私――――宵闇ネム・ラグナロク」

「貴様は……っ」

言われてリズも、少女のことを思い出した。

しかし振り返った少女は意に介さず、残った一本の光の柱を前に手を掲げる。

二体の腹心がひざまずき、風が急速に収束していく。

背中を押す猛烈な風に、誰もが思わず足をフラつかせる。

すると砂煙と共に光が増大し、猛烈な雷光が天から落ちた。

「っ!」

夕刻の空を斬り裂いた盛大な輝きに、思わず皆が顔を背ける。

吹き抜ける風の中、それでも視線を前に向けると、そこには巨躯を持つ悪魔のような存在が降臨していた。

思わず、声を失うような迫力。

さすがの使徒たちも、後ずさる。

「見ろ! あそこだ!」

「使徒たちもそろってる! 魔神との戦い、大きな規模になるぞ!」

掲示板組に加えて、別口でクエストを受けてきた者たちも、その激しい輝きに集まってきた。

一人の少女を囲むようにして立つ魔神たち。

凄まじい光景に、誰もが息を飲む。

そんな中、少女は集まった者たちに向けて告げる。

「始めよう。汝らの前に立ち塞がるのは混沌の魔神。そして――――史上最強の魔術師だ」