軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1360.お仕事開始です!

始まる、人気パイ店の営業クエスト。

さっそくスキアとレンが、内容を確認する。

「対クエストが動いているのなら、【魔法石】の入手が目的になっているはずだ」

「営業時間は決して長くはないわ。その中で【魔法石】を持ち帰るのが、『向こう』の狙いになるわけね」

「怪しい人物を見つけて追う。店の回転や移動能力を考えると、追跡者は私かクルデリスさん、続いてレンさんの優先順でしょうか」

「りょうかいですっ。一定額以上のオーダーでもらえるプレゼントに、【魔宝石】を選んだ人には要注意だね!」

「はひっ」

流れを確認して、うなずき合う六人。

「「「入店だああああああ――っ!!」」」

早い段階で運良くメイたちを見つけたプレイヤーは、店の解放と同時に競争状態で席を確保しに行く。

「怪しい人物は、早い段階で格好を見て分かる可能性も高い。多少お客さんが多くてもいけるはずよ」

レンはそう考えるが――。

「いらっしゃいませーっ!」

スキアが通した新規客が全員黒づくめで、白目をむく。

考えてみれば、レンがいることで怪しい人物も普通に入店してくる。

そもそもメイが闇の使徒勢にも普通に「可愛い……」と言われてる時点で、格好だけでの判断は難しそうだ。

こうして第一陣が、席を埋めたところで――。

「提供が間に合わないようなら、こちらから店員を出すことになるからね」

「なるほどね。一定時間以内に届かないとNPC店員が相手をするから、肝心の【魔宝石】を選んだ客を見逃しちゃう可能性が出てくるのね」

遅ければ罰則あり。

そんなペナルティの中、メイが告げる。

「それでは……オーダースタートですっ!」

その瞬間、一斉に上がる手。

「ミートパイください!」

「こっちはベーコンポテトのパイ!」

「かぼちゃパイを一つ! 飲み物はクランベリーティーで!」

視界の端に席の番号とオーダーが、次々に並んでいく。

こうして、クエストが始まった。

このタイプのクエストは慣れているメイたちは、後衛組にキッチンから近い席の提供を任せる形を選択。

「こ、こちらアップルパイです! そ、それとこっちはクリームキノコパイですっ!」

「おおっ、これうまいな!」

「盾子ちゃん、新しいパイを手に取る度に「いい匂い……」って顔するの楽しいな」

「す、すみませんっ!」

恥ずかしそうに戻っていくまもりに、笑いがあふれる。

「はい6番テーブルね、ミートパイ四つです」

「「「「ありがたき幸せ……」」」」

「やめなさいよ! 普通でいいからっ!」

よりによって届け先が黒づくめ集団で、感激されてしまったレンは赤面。

すると同じく魔導士のスキアも、キッチン近くの席にパイを運んでいく。

レンはちょっと心配しながら、様子をうかがうが――。

「おっ、メイちゃんたちと一緒にクエストできるとか羨ましいなぁ」

「はいっ。五月晴れの皆さんとお店のクエストをするのが夢だったんですっ」

「……プロなんだけど」

両目を閉じたまま、元気な店員をやり切るスキアに思わず引きつり笑いだ。

「こちら、シーフードパイとアイスティーですにゃっ」

今回はテイクアウトという形式もあり、提供場所をずらしているのが意外なポイント。

だが近接組のクルデリスがしっかり対応して、時間切れを防ぐ。

「メイちゃんと新人ちゃん、二人とも元気でいいね」

「「ありがとうございますっ」」

メイとスキアは、さっと並んで笑顔を向ける。

「さすがだな、ワイルド」

「スキアちゃんこそ」

そして二人はつぶやき合い、『闇を継ぐ者』という素性を隠してるプレイを満喫する。

見事な店の回しぶりで、客をさばいていく六人。

メイたちの店クエストはいつも楽しく、今回はスキアとクルデリスも人気だ。

「それじゃ【召喚の宝珠】で」

「は、はひっ」

「【瞬間移動の羽】をもらうよ」

「了解しました」

さらに賞品付きとなれば、客が客を呼ぶ状態。

自然と難易度も、本来より高くなっていく。

「テイクアウト、入るねっ!」

メイがテイクアウトに入り、四つのパイを同時に持ち出してくる。

「次のお客さま、こちらの席にどうぞですにゃっ!」

そこでメイの代わりにクルデリスが、客席に案内。

こうした埋め合いは、かつて共に戦ったことが効いているのか非常に見事だ。しかし。

それによって、一つのオーダーを見過ごしたままになっていた。

そのオーダーはまさに、端にある離れた席。

キッチンから見づらい位置にある。

ぽっかり空いた隙間、時間だけが過ぎて行く。

そして、その席の制限時間が目前まで迫ったところで――。

「待って! ツバメ最奥席に最速でお願いっ!」

「はいっ! 【加速】!」

ちょくちょく全体を確認するようにしていたレンがギリギリで気づき、近くにいたツバメに依頼。

ツバメは両手にパイを持って、高速移動。

もちろんテーブルには客が詰め、今も出入りも行われている。

「【跳躍】!」

「「「っ!?」」」

そのためツバメは、空中を進む。

「【エアリアル】!」

誰もが驚きに目を見開く中、二段ジャンプで目標テーブルを越えての着地を狙う。

「……マズいです!」

だが、この感じだとわずかに間に合わない。

そこでツバメは、一秒でも早く『オーダーを置ける』ようスキルを発動。

「【反転】! こちらカボチャのパイと、チキンポットパイです!」

「……おおっ!?」

空中で振り返っておくことで、わずかだが時間を稼ぐ。

結果残り1秒を切ったところで、ギリギリ間に合わせることに成功した。

「「「おおおおおお――っ!」」」

その手際と見事な身体さばきに、思わず拍手があがる。

「さすがですっ」

「五月晴れは、こういうクエストも上手だにゃっ」

スキアとクルデリスが、メイたちの見事な連携に『キャラ』のまま拍手を送る。

盛り上がり、勢いの止まらない店内。

ある程度の客入りはNPCを使って確保されるのだが、メイたちの場合は想定以上の入りなので、NPC客の入る余地はない。

それでも――。

「きゃああっ! 止まってーっ!!」

クエストNPCの従魔が、腹を空かせて店に侵入してきた。