作品タイトル不明
1358.再び闇を継げ
「メイさんやツバメさん、まもりさんとご一緒できるなんて嬉しいですーっ」
足取りの軽いカナ。
五人は聖教都市の通りを進み、一緒に【ワッフル】を購入。
花咲くアルティシアの美しい風景を眺めながら、ベンチで一休みする。
「まもりさんは本当に、飲食のメニューに詳しいんですね」
カナはイチゴと生クリームの乗ったワッフルに、かじりつく。
「運営の動画でも、まもりさんの食べていた物のお店は人気なんですよ」
「そ、そうなんですか……っ」
ちょっとうれしくなるも、当然のように『両手持ち』をキメてる自分を見てハッとする。
そしてまた地面が崩落を起こさないかと、思わず足元を見つめる。
「ねえ香菜、そんなに警戒しなくても最近の私はもう中二病感あまりなくない? 特に家では」
そんな中、レンが問いかける。
「そうだね。でもお姉ちゃん、言ってたでしょう?」
「何て?」
「普段は普通の少女、その裏では闇に染まる者。これがたどり着くべき場所って」
「過去の私のバカ……っ!」
普段から真っ黒なのではなく、一般人を装って陰で闇をまとう。
それこそが最終地点と語っていたことで、普通にしてても疑われることになったのだと気づいたレンは、憤慨する。
家では普通、映像や広報誌ではしっかり『闇を超えし者』なのだから、むしろ最高の二面性を発揮できている状態だ。
「だからすでに……到達してる可能性があるの」
「ないわよそんなもの」
姉妹の会話に、くすくすと楽しそうに笑うメイたち。
「香菜さんとレンさんは、本当に良い姉妹なんですね」
「本当だねぇ」
「な、仲がいいんですね」
「だからこそ、一日も早く更生して欲しいんです……っ」
とても真摯な目で言うカナに、白目をむくレン。
メイたちがまた笑う。
姉が重度の中二病だったことで、むしろしっかり者になった妹。
本人なりに、レンを心配をしているようだ。
「では、待ち合わせをしているので私はここで。お姉ちゃんをよろしくお願いします」
ワッフルを食べ終えたカナは、そう言って立ち上がった。
「ありがとうございましたーっ!」
「またねーっ!」
丁寧に頭を下げた後、人ごみの中に消えていくカナに、メイたちも手を振って見送る。
すると、その直後。
「……あっ」
レンが、突然硬直した。
「久しいな」
カナと入れ替わるようにしてやって来たのは、黒のフードを深くかぶった魔導士少女。
その特徴は、『閉じたまま』の両眼。
ギリシャ語で『影』を意味する彼女のコードネームは、スキア。
「そうでもないんじゃない? モンスターバトル以来だしさァ」
そしてもう一人。
黒のレオタードの上に、黒の軽鎧と腰巻をまとった魔法剣使いの少女。
耳に付けた長いチェーンには、宝珠のピアス。
ラテン語で『残酷』を意味する彼女のコードネームは、クルデリス。
やってきたのは、かつてクエストで『闇を継ぐ者』を組んでいた黒づくめの二人組だ。
「……ごくり」
レンは冷や汗をかきながら、カナの向かった方をそーっと見る。
そして、安堵の息を一つ。
この二人が来てしまったら、もう言い訳のしようもない。
今回は無事、『闇を継ぐ者』の集まりを見られずに済んだようだ。
「実は一つ、話を持ってきた」
スキアは変わらぬクールな態度で、端的に告げる。
「天使を討つクエストが動いている」
「「「「っ!?」」」」
白夜が危惧していた脅威は、どうやら本当に動いているようだ。
「……手伝えってこと?」
レンが問うと、スキアは首を振った。
「我らが受けたのは、そんな『天使を討つ者を狩るクエスト』だ」
「対クエストの防衛に入るってこと?」
意外な展開。
だが闇を継ぐ者の目的は、あくまで陰から世界の危機を排することだ。
「この祭の中でうごめく野望を、この手で討つ」
「闇を継ぐ者に出てきた、久しぶりのクエスト……もちろん、受けるよねェ?」
「やりたいですっ!」
「腕がなりますね」
メイとツバメは、すぐに了承。
まもりも特に、異存はないようだ。
「さすがにこれだけ大きな展開を、逃す手はないわよね……」
討たれた悪魔、光の使徒の暗躍を疑う闇の者たち。
そして盛大な規模の降臨祭の中を、駆ける展開。
気付けば冷や汗も止まり、レンもワクワクし始めている。
「白夜には月での借りもあるし、動いておきましょうか。もしかしたら聖教都市を賭けた戦いを止められるなんてことも、あるかもしれないし」
「りょうかいですっ!」
こうして四人は、久しぶりに『闇を継ぐ者』のクエストをスキアから受諾。
六人での行動が始まった。
「あ、そうだった! お姉ちゃん!」
「っ!?」
「……お姉ちゃん?」
突然駆け戻って来たのはカナ。
闇を継ぐ者が集まったことで、黒密度が大きく上がったメイたち。
それを見て再び、疑念の目を向ける。
「違うのこれは! 知らない人たちだから!」
慌てて否定するレン。
「ん? なんのことですか?」
「私たちは、通りすがりの魔導士ですにゃ?」
するとこの状況を、『闇を継ぐ者として素性を隠すプレイ』と判断したスキアとクルデリスが見事に対応。
「そ、そうですか……」
ここぞとばかりにキャラ変したスキアたちに、頬を引きつらせるレン。
しかし奇跡の連携は、一応成功。
カナはレンに夕食の時間が少し遅くなることを告げると、疑念の目を向けながらもこれ以上の追及をすることはなく、去って行ったのだった。