軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1357.聖教都市へ向かいます!

「それにしても、すごいものを見たわね」

先日の召喚悪魔暗殺を目の当たりにしたレンが、思い出したかのようにつぶやく。

「ほ、本当ですね……!」

「思い出してもワクワクしちゃうよーっ」

「悪魔の暗殺ルートは個人でも進められるものだったのでしょうか、それとも……」

「光の使徒がすっとボケてる可能性もあるし、闇の使徒が濡れ衣を着せてる可能性もあるから、今の時点では何とも言えないわね」

闇の使徒と光の使徒のにらみ合いは、レンの言葉によって一時的に抑えられた。しかし。

「香菜は最後まで疑ってたわねぇ……」

お姉ちゃんには黒幕の可能性が……と、過去幾度となく『自宅でミサ』を開かれた香菜は疑念の眼差しだった。

思い出して、苦笑いのレン。

「とにかく、この問題の解決がなぜか私に回ってくるようなことにならないことを祈るのみね。今回はさすがにないと思うけど。クエストに関わってないし。ただ」

「ただ?」

「また手紙が置かれてたのよ。なんでも聖教都市アルティシアで、天使の降臨祭をするんだって」

「降臨祭ですか」

「お祭りーっ!?」

まさかのクエストに、メイが尻尾をピンと立てる。

「そうなのよ。聖教の威信を見せるためのもので、光の使徒たちがその降臨のクエストを行うみたいなんだけど……もうすでに盛り上がってるみたい」

「は、早いですね」

「五月神社のお祭が盛り上がったことで、街を上げて行う感じになったんじゃないかって話なのよね」

「なるほどー」

先日行われた五月神社のお祭りは大人気で、催事を終えた今もプレイヤーたちの憩いの場所になっている。

それを知った運営は、降臨祭クエストの規模をパワーアップしたようだ。

「さっそく、アルティシアへ行ってみようよ!」

「そうしましょうか」

こうして四人は、ポータルを使って聖教都市へ。

明るく美しい聖教都市アルティシア。

白を基調とした石造りの街並みには、小さな黄色の花がいたる所に咲き、足元の石畳も綺麗に並んでいる。

パルテノン神殿を思わせる神殿や美しい教会が、この街の目印だ。

「おおおおおお――――っ!」

「これは賑やかですね!」

思わずメイとツバメが、辺りを見回して歓声を上げた。

建物と建物をつなぐ形で提げられた長いヒモには、色とりどりの三角旗。

見回りの騎士にも、華やかな装飾がつけられているため、楽しく見える。

さらにゆったりした白布を巻いた商人NPCたちが露店を開き、揃いのエプロンドレスで飲み物などを売り出している。

「い、一体何を売っているのでしょうか……!」

そこに音楽を演奏するNPCたちが陽気な曲を弾き出せば、街は一気に楽しくなる。

「わあー、楽しいねっ」

思わず足取りが跳ねるメイ。

そしてこういう大きな展開には、様々なクエストが付随する。

そのため多くのプレイヤーが集まり、街はとにかく賑やかだ。

「結構雰囲気を変えてきてる……この街をあげてのお祭り感、本当に大きなクエストなのね」

神話の趣すら感じさせる街の、神殿前大通りを進む四人。

すると前から、見覚えのある四人組が歩いてきた。

「あっ、白夜ちゃんたちだよ」

メイが指差したのは、アルティシアの街を並んで歩く白夜と、星野エトワールを中心とした光の使徒数名。

「どう、悪魔狩りの犯人は見つかったの?」

レンが問いかけると、白夜は首を振る。

「いいえ、見つかっていません。そのため闇の使徒たちは、今も大悪魔の打倒を光の使徒の仕業と考えていますわ」

隣りの星野エトワールも、ため息を吐く。

「その通りです。反撃として闇の使徒は、降臨祭の対クエストを進めているようです。すでに各所で小競り合いが起きていますよ。降臨祭の邪魔は必至の状況ですね」

「このまま降臨祭の舞台に上がってきたら、戦わないわけにはいきません」

白夜の憂慮を秘めた視線。

言われてみれば、黒の装備をまとった者が街に意外と見受けられる。

これは対クエストの動きなのかもしれない。

そのため賑やかな降臨祭の中でも、白夜は緊張を切らさずにいるようだ。

「何か、お姉ちゃんが関わっていませんか?」

「香菜!?」

すると、そんな白夜にたずねたのはカナ。

「お祭りあるって聞いて来てみたら、お姉ちゃんを見かけてそっと追いかけてきたの。そしたら今度は降臨祭に暗躍してる人たちがいるって……」

「ムムム」と疑念の目を向けるカナに、白夜は首を振る。

「いえ、今回もレンさんは動きを見せていませんわ」

レン、その言葉に「もっと言って!」と目を輝かせる。

「おそらく悪魔を一撃で倒したあの光の槍の方に、興味があるのですわ。光も闇もその全て力を手中に。全く恐ろしい話です」

「お姉ちゃん!?」

「違います。やめてください」

驚愕を見せるカナに、白目で応えるレン。

「それではわたくしたちは、警備に戻りますわ。多くの闇の使徒が聖教都市に入り込んでいますので、油断はできません」

そう言って白夜たちは、再び大通りを並んで進む。

「降臨祭、大きな展開になってきたけど……どうなるのかしら」

興味深そうに、光の使徒たちを見送るレン。

「そうだ、せっかくだし香菜ちゃんも一緒に見に行こうよっ」

「いいんですか!」

「もちろんだよーっ!」

「やったー!」

一時的だが、天使の降臨を見せるという盛大な祭。

こうしてよろこぶカナと共に、メイたちは降臨祭のイベント見学することにしたのだった。