軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1341.ハウジングクエストとの出会い

「美味しいです」

「はひっ!」

抹茶ミルクティーラテが、『京』で発売すると聞いて駆けつけたまもり。

普段から緑茶などをよく飲むツバメでも、手放しに「美味しい」と言うほどの味に大喜びだ。

「ふふん」

メイに至っては抹茶ティーラテの美味しさだけでなく、『オシャレな入れ物』を持つ姿を見て欲しくて、いつもより足の運びが軽快だ。

「確かにこれは良いわね。本当に飲食システムは、レベルを上げているわ」

京には、そこそこ見識がある四人。

巨大な枝垂れ桜を見ながら、小さな川沿いへ。

するとそこには竹の並びにベンチが置かれていて、涼めるようになっている。

四人は自然と腰を下ろす。

月の冒険も無事終わり、のんびりと清流を眺めていると――。

「わーん!」

聞こえてきた鳴き声。

見ればこちらに、一匹の子狐が駆けてくる。

よほど困っているのか、二足歩行で。

コミカルな走り方に、思わず吹き出しそうになるレン。

「どうしたのー?」

メイがたずねると、子狐は困り顔のまま語り出す。

立ち上がったレッサーパンダのような姿は、とても可愛らしい。

「怨念が……暴れ出しそうなんです!」

「おんねん?」

「かつての京に、鬼童丸という恐ろしい悪鬼がいたのです。京を荒した鬼童丸はやがて猛き武将たちに討たれたのですが、その恐ろしき怨念は、長い時間をかけて鎮守の岩を打ち砕き、再び京を危機に晒そうとしているのです」

「それは、なかなかのピンチですね」

「たまちゃんはどうしたの?」

「実は珠さまは今、神在祭で京を出ておりまして、まさかその間にこんな危機が始まってしまうとは……っ」

小さな狐の見事な毛並みに、我慢できずに尻尾を堪能しながら話を聞く四人。

「その鎮守の岩を破って、出てきたところを討てっていう依頼になるの?」

「いえ」

子狐は首を振る。

「怨念はもはや、剣で切れる類のものではありません。時の流れに消え去っていくのを待つしかないのです。それまでは新たな鎮守を用いて、わき出す不吉な力を抑えて払うしかありません……っ!」

「どうすればいいの?」

レンがたずねると、子狐は小さな手を握る。

「石碑などでは、またいつ割れてしまうか分かりません。そこで……」

「そこで?」

「鎮守の神社を建てるのです!」

「ええっ!? 神社を作るのーっ!?」

まさかの展開にメイが尻尾をピンと立て、ツバメやまもりも意外そうな顔をする。

「神社ほどの規模のものを先に造ってしまえば、怨念が暴れ出しても岩を破壊することはできず、封じ込め続けることが可能でしょう」

「なるほど、今回はハウジング系のクエストなのね」

怨念という形のないものに対しては、魔法等で攻撃して打倒するか、陰陽師をアシストすることで封印を成功させる形だと思っていたレンは、感心する。

「とはいえ、神社を作るとなれば必要なものがいくつもあります。珠さまなら集める事が可能でも、私にそれはとても難しいのです。どうかお力を貸してください! このままでは怨念が広がり、京の町が危険にさらされてしまいます!」

「レンちゃんっ!」

メイはすでに、その目を輝かせている。

「どのような神社になるのか、とても楽しみです」

「は、初めてのタイプのクエストですね……っ」

ツバメやまもりも、可愛いキツネが持ってきた初めてのクエストに興味津々。

それはもちろんレンもだ。

うなずくと、メイは元気よく子狐に返事する。

「このクエスト、受けますっ!」

「本当ですか! ありがとうございますっ!」

歓喜の子狐は、さっそく神社の設置に必要なものを説明する。

「鎮守の中心となる神具は、【剣】【狛犬】【しめ縄】の三つです。でき上がったもののレベルが低いと、怨念を抑える効果は弱く、神社ごと壊されて鎮守に失敗してしまいます」

「素材集めは、シミュレーションの基本ね」

「質の高い素材を手に入れることができれば、後は京の職人さんに頼んで効果の高い神具を作ってもらえます」

「それ以外の要素はどうなってるの? 例えば建物にはどんな木材を使うのか、灯篭は置くのかとかあると思うんだけど」

「建物の素材は取りに行っても良いですが、神具さえ最高の物であれば最悪板張りでも戦えると思います。必要な神具以外は、邪念を抑えるのに若干の効果を生み出してくれるといった感じなので。その辺りの配置についてはお任せします。京の専門店で作ってもいいですし、職人プレイヤーから購入しても構いません」

「……なるほどね。灯篭なんかは店やハウジング系のプレイヤーから選んで買っても良し。そのパターンは自分で選んでいくのね。組み合わせ次第では黄色のビニールヒヨコが狛犬を務める神社ができたりするのかしら」

「最高ではないですか」

レンの冗談に、真面目にうなずくツバメ。

「ど、どんな苦境の波にも沈まず、気ままにプカプカしていそうですね……」

渋い色味の神社に真っ黄色な狛ヒヨコが置かれているのを想像して、笑うまもり。

どうやら基本的には、素材を集めて職人にパターンを依頼。

または好みの物を買って、自由に配置するという形のクエストのようだ。

そうやって、自分好みの神社を建立。

怨念の復活に備えろということらしい。

クエストをクリアするだけなら、掘っ立て小屋のような祠を作って勝負するのでもいいのだろう。

神具の出来が不安なら、その他の神聖なものを集めたりして強化するのもよし。

こだわりたいのなら、もちろん細かく配置したっていい。

その辺りのバランスは、プレイヤー次第だ。

「さっそくやってみようよ!」

「そうね! せっかくならいい神社を作ってみましょう!」

「賛成です」

「はひっ」

早くも尻尾をブンブンさせているメイ。

こうして四人は、初めてのハウジング系クエストに乗り出したのだった。