軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1313.ルアリアの警備兵

「それにしても、不思議な光景ですね」

「本当だねぇ」

ルアリアの街には、様々な物が浮かんでいる。

そのほとんどがガレキだが、やはり重力関係の技術において一番進んでいた国だけあって、街にも重力の操作装置が走っているのだろう。

地上にあるべき物体が空中に制止している光景は、この国ならではだ。

ツバメと並んでメイも、宙を見ながら街を進む。

ルアリアもテネブラエ同様、大きなクレーターの内部に造られた国。

碁盤目に走る道路が、整然とした雰囲気を生み出している。

「……あれって、魔導鎧かしら」

そんな中、レンが一体の魔導鎧を見つけた。

思わず全員で足を止め、様子をうかがう。

「ほ、本当ですね。でもなんか様子がおかしいような」

まもりの言う通り、先ほどトンネル内で戦った個体とは雰囲気が違う。

装甲が薄く、全体的にマネキンみたいに細い。

「なんか、宇宙戦争の映画に出てくる人型ロボットみたいね」

何やら辺りをきょろきょろしながら、あわあわしている姿は、どこかコメディタッチだ。

「ちょっと話を聞いてくる……!」

「えっ?」

するとそれを見た記憶喪失少女が、魔導鎧の方に駆け出した。

無防備な少女、必然的にメイたちの間に緊張感が走る。

「――――?」

しかし少女が何やら話し出すと、魔導鎧も身振りを交えつつ何かを説明。

一通り聞き終えると、少女が振り返った。

「困ってるみたい」

「これは、クエストの気配ね」

「街の見回り仲間の魔導鎧が、ガレキに埋まって動けなくなってしまってるから助けたいけど、かなりの力仕事になるんだって」

「そういうことなら、おまかせくださいっ!」

どうやら街の警備ロボットらしい、魔導鎧の困りごと。

メイが元気よく手を上げた。

すると少女が、それを細い魔導鎧に説明。

「ついて来て欲しいって」

少女に言われて、魔導鎧の後について行く。

するとそこには、建物が崩落してできたのであろうガレキの山。

「これは……なかなか大変ね」

学校一棟分くらいはありそうな建物が崩れてできたガレキは、なかなかの規模と量だ。

すると魔導鎧は、その額についた魔法石を輝かせた。

「これは……軽重力化ですね」

「なるほど、軽くするから動かしてってことね」

「楽しそうです」

さっそくツバメが、高さ三メートルはあろうかという石造りの建物の残骸を持ち上げる。

「す、すごいですっ!」

するとそれを見たまもりも、大きなガレキを持ち上げてみせた。

「シンプルなクエストなのに、普段とは違う光景が見られるのは月ならではね」

レンは【腕力】が低いため、そう重い物は持てない。

それでも両手で抱える大きさの石を普通に持ち上げることなど、魔導士にはほとんどないため楽しそうだ。そして。

「よいしょっと」

「「「「っ!!」」」」

メイに至ってはもう、二階建ての家一軒くらいの残骸を片手で持ち上げている。

「それっ」

少し進んだ先で残骸を軽く投じると、軽重力範囲を抜け出したガレキはそのまま地面に深く突き刺さって砕けた。

「場合によっては叩いて砕いたり、魔法で壊して持ちやすく。その際に埋まってるであろう魔導鎧を攻撃しないようにってことなんだと思うけど、これなら楽々達成できそうね」

これが地上なら、『いかれた【腕力】極振り集団』と言われるだろう四人は、次々にガレキを退けていく。

少女も重そうな石を、両手投げのボウリングみたいな姿勢で運んで腰をトントン叩いている。

そして、あっという間にガレキの中央部まで掘り進んだところで――。

「「「「っ!?」」」」

突然、魔導鎧が大きく足をフラつかせた。

そして重力を司る魔法石に異変。

不安定になった重力操作は、『通常重力』に戻る。

ツバメがガレキを取り落とし、まもりが押しつぶされそうになったところをギリギリで手を離す。

レンも1メートルほどの石塊が手から落ちて、地面にめり込む光景を見て目を見開く。そして。

「メイ!?」

慌てて振り返ると、家並みのガレキを抱えていたはずのメイは――。

「重たーい!」

「「「持ちこたえてる!?」」」

普通にこらえていて、さすがに三人して噴き出す。

「メイ、歩けないならガレキを左に倒せる? そうすれば被害はでないはず」

「りょうかいですっ!」

メイは抱えていた三階建てほどのガレキを、左に倒す。

すると深く地面にめり込んだ石塊が、砕けて散った。

付近のガレキを巻き込むことなく、埋まっているだろう魔導鎧にぶつけてしまうこともなし。

「とんでもない罠を仕掛けてるクエストね……」

上がる砂煙を見ながら、安堵の息をつくレン。

すると今度は少し離れた建物の残骸の中から光が広がり、無数のガレキがゆっくりと浮かび出した。

「もしかして、ガレキに巻き込まれたっていう魔導鎧が……?」

レンの予想は正解だ。

どんどん宙に昇って行く無数のガレキ。

その下にいた太めの魔導鎧が、重力操作の魔法石を発動したようだ。

「持ち上げる効果を持つのは、初めてですね」

ガレキたちが天高く昇っていったのを見送ると、光が消えた。

メイたちは太めの魔導鎧のところに進み、身体を引き起こす。

どうやら無事のようだ。

確認すると、太めの魔導鎧が身振りで何かを言った。

それを少女が、通訳する。

「魔法石の効果が切れてしまったから、さっき昇って行ったガレキが落ちて来るって」

「「「「っ!?」」」」

慌てて上を見ると、隕石のように降ってくる無数のガレキ。

「先に言いなさいよ――ッ!」

まさかの罠に、四人驚愕する。

これはこういう『悪意ない罠』の仕込まれたクエストのようだ。

「レンちゃんとツバメちゃんは、あの子たちがケガをしないようにお願いしますっ!」

「【加速】【リブースト】!」

「【低空高速飛行】!」

二人は最速で、少女と細い魔導鎧のもとへ。

そのまま腕を引く形で、落下ガレキの範囲外へと逃げ出していく。

「まもりちゃん!」

「はひっ! 思いっきりお願いしますっ!」

「ゴ、【ゴリラアーム】」

一方メイはまもりの腕を取り、そのまま一回転してまもりを投擲。

「【バンビステップ】!」

ガレキ落下の範囲から退避させると、そのまま太めの魔導鎧を抱えて走り出す。

いくつかのガレキが、地面に落ちて砕け散る中を猛ダッシュ。

「間に合わないっ! 【裸足の女神】っ!」

しかしメイの逃げた方向は、不運にも大型のガレキが早々に落ちてくるポイント。

直後、大量の重量級ガレキが落下して砂煙を巻き上げた。

「メイっ!」

「メイさんっ!」

黙々と上がる盛大な煙り。

レンは少女を抱えたまま、ツバメは細身のロボットを担いだままメイのもとへ駆け寄る。すると。

「あぶなかったーっ!」

メイは見事、太めの魔導鎧を抱えたまま脱出に成功していた。

「装備を一度外せば大丈夫よ」

「はいっ! 【装備変更】っ!」

今回もしっかり挟まれていた尻尾を、今度は装備解除で対応。

全員無事に、この危機を脱することに成功した。

「よ、良かったです……っ」

起き上がったまもりも、小走りで駆けつけようとして――。

「えっ?」

踏みつけた場所が突然崩落して、落下。

「まもり!」

レンたちが慌てて駆けつけると、まもりは二メートルほど落ちたところで座り込んでいた。

どうやら、ガレキ運びの際に落ちてしまうことを想定した罠の一つのようだ。しかし。

「わ、私って、そんなに重いんですか……?」

すでに重力は『通常』に戻っているため、まもりの重さで地面が崩れたように見えなくもない。

まもりは一人、白目をむいたのだった。