軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1253.どんどん鍛えますっ!

「こいつは大量だな! 助かったよ!」

そう言い残して、採掘搬入を仕事にしているクエスト主は、こぼれ落ちんばかりの鉱石を乗せた馬車を走らせ去っていく。

「何気に、あの量の鉱石を乗せた荷車を普通に引いていく馬の脚力は、世界随一なのではないでしょうか」

「た、確かにそうですね……っ」

その背中を見送りながら、ツバメがつぶやく。

これでもう、10回目の鉱石搬出クエストを終了。

「メイ、その子のステータスはどうなった?」

「ちょっと待ってね……【筋力】588だねっ!」

「さ、最初6だったものが、この数時間でいきなり588は反則ですね……っ」

「まあ現状は、『悲しきモンスター』みたいなステータスだけどね」

レンはくすくすと笑う。

リザードの見た目自体は変わらないが、そのステータスは打たれ弱くて足が遅く、不器用だけど異常なまでに怪力という状態だ。

映画なら、狂気の博士が生み出した怪物みたいな感じだろう。

「さすがにステータス値の上がり方が鈍くなってきたし、そろそろ次のクエストでも探してみる?」

「はいっ!」

メイが元気に手をあげると、リザードも一緒に並んで手を上げる。

その姿に、思わず癒されるツバメとまもり。

「ここでお手伝いを止めたら、次に来た時には破産してるとかはないよね……?」

「大丈夫よ」

メイ、7年前の『魔物を全て狩れば村に安全がおとずれるはず』という勘違いを思い出しながらも、一応確認。

レンの答えに安堵の息をつく。

「それだったら、島の西側に行ってみようよ!」

メイはクク・ルル島の中でも、比較的穏やかな西側を指差した。

南部に船着き場、東部に閉じられた断崖、そして北部が魔境というクク・ルル。

四人はメイの言うまま、木々の並ぶ密林を進む。

「メイさんとリザードの並びがとても良いですね」

「は、はひっ」

「ふふっ。師匠と弟子にしては少し楽しそうすぎるわね」

【世界樹の剣】をブンブンしながら、ご機嫌で進むメイの後ろに続くリザード。

その光景は、何とも微笑ましい。

「ここだよーっ!」

メイが走り出す。

レンたちが後に続いて木々の間を駆けていくと、そこには鮮やかな花々が咲き乱れる、花畑のような空間があった。

「とてもきれいですね」

「本当ねぇ……」

「フ、フローリスを思い出しますっ」

赤や黄色といった原色味の強い花々が咲くこの場所は、ぽっかりと木々が隙間を作っていて、特別な雰囲気をしている。

「7年もこの島にいたのに、ほとんど来たことがなかったんだよー」

主に北部の魔境にいたメイは、あらためてこの光景を見て「おおーっ!」と感嘆する。

「フ、フローリスの花より、彩度が高めの感じがしますね」

南国特有の鮮やかさに、目を取られるまもり。

密林の中にある、花畑という特徴的なマップ。

やはりそういう場所には、『何か』があるものだ。

「困った……」

見えたのは、つぶやきながら花畑に寝転がる一人の青年。

「ああ、困った困った」

そう言いながら、こちらにチラチラと視線を向けてくる。

「ああーっ! 困った困った!」

そしてすごく聞き取りやすいボリュームで困り出したところで、苦笑いしながら話を聞いてみる。

「どうしたのよ」

レンがたずねると、青年は待ってましたとばかりに話し始める。

「俺はハニーフルーツを作っているんだけどさ、せっかくつけた実を狙って『ギャングビー』っていう危険な蜂が、群れでやって来ちまって……今じゃ木に近づけないんだ。でもこのまま収穫できないと、熟しすぎて商品にならなくなっちまう。優秀な冒険者でもいてくれたらと思って途方に暮れていたら、どこからどうみても勇敢で勇猛で屈強なアンタたちが現れたってわけだ。俺は思ったよ、君たちは神が遣わした英雄に違いないって」

「えへへ」

どうやらなかなかのお調子者らしい青年に、笑うメイたち。

「それで、どうすればいいの?」

「ハニーフルーツの木は低木で、実がたくさんなるんだ。だから周回するような形で回収できればいいんだけど……攻撃されちまうから、オトリ役と回収役で分けた方がいいと思う」

「なるほどね」

「とにかくたくさん回収してほしいんだ。なかなか大変だと思うが、その数が多ければ……【敏捷】性でも上がるんじゃないか?」

「受けてみる?」

「やりますっ!」

「そいつは良かった! さっそくこっちに来てくれ!」

青年に言われるまま、ハニーフルーツの木のもとへ向かう四人。

そこにあったのは、噴水の水のように広がった低木。

黄金色をしたリンゴのような実が、たくさんなっている。

そしてハニーフルーツの付近を飛び回る、一匹の蜂。

大きさは15センチほど。

鮮やか過ぎると黄色に黒という『危険を知らせる色』が恐ろしい。

「基本はオトリが上手にやれば、問題なく回収できるはずだが、稀に死角からそっと回収者を狙う個体も出てくるだろうから気を付けてくれ」

「りょうかいですっ!」

ハニーフルーツに栄養が行きわたるように、半径二メートルの範囲に植物はなし。

ただしそのすぐ外には草が茂みを作り、木の枝も伸びてきている状態。

「がんばろうねっ」

カゴを背負い、『回収役』の準備を終えたリザードにそう言って、ピョンピョンと準備運動するメイ。

「それじゃ、頼んだぞ!」

「いきますっ!」

メイとリザードは駆け出し、そのままハニーフルーツの木のもとへ。

するとメイたちに気づいたギャングビーが甲高い羽音を鳴らし、仲間を呼び寄せる。

そしてすぐさま、蜂たちが攻撃を仕掛けてきた。