軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1252.特訓開始です!

荷馬車を持ち出してきた、クエストの男。

「ここだ」

鉱石の採掘と搬出を生業にしているこの男の頼みでやって来たのは、ククルルにある洞窟。

その内部には、手を止めた状態で置かれている掘削場がある。

そして分かりやすく、ピッケルが数本。

「ガンガン掘削して、鉱石を掘りだしてくれ! どこにどの程度の規模の鉱脈があるかは分からないから、とにかく掘ることが大事になる」

「りょうかいですっ!」

「荷車での運搬は、相棒のモンスターに任せるといいぞ。ここではとにかく鉱石を掘って、何度も往復させるんだ。暇にさせないほど堀り出せれば【筋力】がつきそうだな」

育成要素の説明を交えた会話に、なるほどとうなずくメイ。

どうやらとにかく掘って鉱石を出し、リザードに運搬させ続ける事が、そのまま【筋力】の伸びに影響するようだ。

掘れば掘るほどモンスターは全力で往復し、その往復数で成長するという形だろう。

「いくよーっ!」

さっそく近くの壁の前に立って、ピッケルを掲げる。

メイはリザードがうなずいたのを確認して、力いっぱい振り下ろす。

「それそれそれっ! それそれそれそれーっ!」

出だしから、もう早い。

メイの力は、まるで岩壁が豆腐になっているかのようにザクザクと掘り進む。

それに合わせて、ゴロゴロと転がり出る鉱石。

するとそれを見た男が、次々に手押しの荷車に鉱石を積んでいく。

「……このクエスト主は、鉱石の出る速度に合わせて鉱石拾いをするのね」

「そのようですね」

「それそれそれそれーっ!」

メイは掘る。

がむしゃらに掘る。

するとドンドン鉱石がこぼれ出るのだが、その速度が半端ではない。

すぐに手押し車がいっぱいになり、リザードが急いで洞窟の外に運び出す。

この間、男が二つ目の手押し車を用意。

「あっ、ここ一杯取れるかも!」

メイの言葉に、顔を見合わせるレンとツバメ。

鉱脈のポイントにたどり着いたメイが、ここぞとばかりに気合を入れると――。

「おおっ! いい調子だな!」

おいしいポイント発見時用の声を、男が上げた。

「いっぱい取れるよー!」

「いいぞ! もっともっとだ!」

「……メイの速度に合わせてるから、NPCが軽く分身してない?」

「してますね」

「か、必ず『鉱石の出てきた速度に合わせて拾う』設定になっているんですね……!」

手押し車を運ばせた回数で成長が決まるクエストで、『拾い』役が遅れることはありえない。

そのため絶対にプレイヤーの速度に合わせて鉱石を拾うクエスト主の男は、ツバメが認めるほどの速度で、中腰のまま手押し車の準備を続ける。

「このままどんどんいきますっ!」

いよいよピッケル慣れしてきたメイは、さらに洞窟を掘り進む。

すると馬車の荷台に鉱石を移した、リザードが戻ってきた。

「ほら、満タンだ!」

同時に、即座に次の手押し車を押してUターン。

大慌てで、洞窟の外に駆け出していく。

手押し車に乗せた鉱石の分量と、持ち出した回数で経験値が得られるシステムのクエスト。

動物値の低いモンスターの場合、量が多いと働いてくれないという問題がある。しかし。

「よく言うことを聞く、いい子だな!」

「そうなんですっ!」

分身状態のクエスト主の声に、元気に応えるメイ。

このセリフは、よほど動物値が高くないと聞くことができず、またリザードで聞けることはなかなかない。

メイの【腕力】による速い採掘と、高い動物値による最高の作業状態だ。

「反復横跳びの速度では、もう私より速いですね」

その結果によってクエスト主は、分身しながら世間話をするという大変な事態になっている。

手押し車の準備の方が、リザードの往復よりも速くなったことで、次の鉱脈にぶつかるまでの『探し』の時間にも余裕が生まれる。

そのためこのクエストで一番『ムダ』が生じる、モンスターが『鉱石の採掘を待つだけの時間』はゼロ。

リザードは一瞬の待ちもなく、時間の全てを荷車での往復に使用。

最速の育成が、ここに爆誕した。

「な、なんか、とんでもないことになっていますね」

「でもこういうクエストは、大抵……」

「そうですね」

まもりたちが、そんな特訓の様子を見ていると――。

「わあっ!?」

なんと突然付近の岩壁から、大きなモグラの群れが登場。

掘削中のメイを取り囲み、そのまま寄って来る。

レンたちの予想通り、入り始めた邪魔。

これが動物というのが、このクエストのやっかいな点。

判定が魔物でない以上、攻撃での打倒ができない。

よって多くの場合、近づいてきて邪魔になる個体を捕まえて次々に投げ飛ばす。

投げた個体がまた寄ってくるという、ループの邪魔が始まるのだが――。

「皆さん! こちらは工事中ですっ! 回り道をお願いします!」

工事現場の交通誘導のように、メイが一言。

すると『動物枠』であるモグラたちは、大人しく回れ右。

言われるまま散開していく。

「……聞こえてないっ」

そんな中にも、一体はとぼけて寄って来る個体あり。

メイはそのおとぼけモグラを抱きかかえて、レンたちのもとへ。

「この子、お願いしますっ!」

そう言ってツバメに預けた。

ツバメは受け取ったモグラを抱きかかえると、そのまま見学を続行。

「よし、もう納入の時間だ! ここまでにしよう!」

男がそう宣言して、クエストの制限時間が終わる。

「どれくらい取れたか、確認してみよう」

こうしてメイたちは、並んで洞窟の外に出る。すると。

「すごーい!」

「ずいぶん取ったわね……!」

「これは想定以上なのではないでしょうか」

用意してあった荷馬車には、山になるほどの鉱石が積まれていた。

「こいつはいつも以上の納入になるぞ! ありがとう、助かったぜ! また手伝ってくれよな!」

そう言ってクエストの男は、こぼれそうになるほどの鉱石を乗せたまま、馬を走らせ納入へ。

「せっかくだし、ステータスを確認してみたら?」

言われた通り、メイはリザードのステータス値を確認する。

「ええと……上がってるよ! 6だった【筋力】が72になってる!」

「レベル1の仲間を連れて行って、ボスを倒した時くらいの上がり方ね」

「こ、この感じだと、筋力の上がり方は悪くないようですね」

「そういう意味では、全ての数値が平均的という点は悪くない感じかもしれません」

驚きのジャンプアップに、思わず笑ってしまうレン。

「……どうする? 調子良さそうだったし、もう少し繰り返してやってみる? パーティでの育成用の難易度に調整してあると思うんだけど、メイ一人で十二分にできてるし、鉱石掘りに飽きてなければだけど」

「やりますっ!」

たった一回で、驚きの伸びを見せたリザード。

「はいっ!」と高く手を上げるメイをマネして、右手を突き上げる。

「本来は懐きにくく、平均的に弱いから不人気なリザード。でも逆に言えば穴がなく、動物値が高ければ時間はかかるけどしっかり伸びる。運営スターダスト団の人たちが「……あっ」ていう顔をしたのは、動物値が異常に高いメイとは相性が良すぎるって思ったのかもしれないわね」

そんなことを想像するレン。

すると予想通り、クエストの男は「次の便に間に合わせないと……!」と慌てて馬車で戻ってきた。

こうして四人は、とりあえず同じクエストを繰り返してみることに決めたのだった。