作品タイトル不明
1240.セフィロト丸・リヴァイブ
「ツバメちゃん! モンスターがいっぱい来るよ!」
巨竜のレーザーを発射寸前で止め、その後方へと駆け抜けた新生セフィロト丸。
その速度は敵勢を置き去りにするほど速く、そして強力。
「セフィロト丸・リヴァイブなら、いけます!」
ツバメは後方から追従してきた敵の群れに対し、船の左側面を見せる形で回り込む。
メイたち三人は砲台に付き、魔力砲弾で次々に敵を撃墜する。
「第二陣、来るわ!」
連発した魔力砲弾は、再充填にわずかに時間が必要。
「船の反対側へ!」
「そういうことね!」
ツバメは一言告げ、その場で速い回転をみせる。
メイたち三人は、いまだ手つかずの右側の魔力砲へ。
「今です!」
「「「了解っ!」」」
再びの連発で、迫り来ていた怪鳥を叩き落とした。
「こんな速度で回転できるって……本当にすごいわね」
「ツバメちゃん! 炎弾が来るよ!」
しかしそんなセフィロト丸を狙って放たれた五発の炎弾は大きく、誘導のおまけ付き。
「下がります!」
ツバメは高速の弧を描く後退で、これに対処。
その速度はすさまじく、炎弾は虚しく外れて消えていく。
「『七時』から、もう一体!」
さらに背後から迫る、四枚羽の恐竜タイプ。
これまで何機もの飛行艇を落とした【体当たり】で迫り来る。
レンはうっかり方向を時計に見立てて告げたことに、伝達方法のミスを危惧したが、ツバメはしっかりと理解。
半円を描くような動きで、突撃を回避する。
「大きくなーれ! 【フルスイング】!」
すれ違っていく際に、メイの放った剣撃が四枚羽を斬り飛ばした。
「……これが、『背中に目がついてるのか?』って言うべき瞬間か」
「ていうか、機体が相当強化されてるぞ!」
「プレイヤーとの戦いだったら、緑の悪魔とか呼ばれるやつだな……」
遠距離からの攻撃は当然のように当たらず、近距離での攻撃は反撃によって即死。
早くも戦況を変え始めたセフィロト丸・リヴァイブに、息を飲む参加プレイヤーたち。
だがツバメは止まらない。
そのまま高速飛行を続けて、編隊飛行による攻撃を狙ってきていた五体のラージワイバーンの前へ。
「撃ちます!」
まもりの撃った魔力砲弾がぶつかり、先頭の個体が止まったところでツバメは飛行を停止して、舳先を敵の方へ。
ここに続くのはレンだ。
「いい角度に止めるわね! 正面ならこれしかないわ! 主砲発射!」
舳先の下に穿たれた穴の中に、輝く魔力光。
次の瞬間放たれた魔力砲が空を駆け炸裂、五体まとめて粒子に変えた。
こうして追従の魔物たちを、あっさりと片付けたセフィロト丸・リヴァイブ。
その圧倒的な動きに、敵陣も一時的に追撃を停止した。
ここで両者が、陣形を立て直す。
「間違いない。あの動きはダブルフロートだ……まさか使いこなせる者がいたとは」
「なるほど。レーザーを受けての大破は、改修強化の流れだったのですね。ですが、まさかこのような形で出てくるとは思いませんでしたわ……痺れるような登場、決まり過ぎていて悔しいですわね」
兵長の言葉に、悔し気に笑みを浮かべる白夜。
「とんでもない登場だな! 本当の戦いは、ここからってわけか!」
ナギは新たに、スティック菓子をパキッとかみ砕く。
「不思議っスね。ここまで何度も戦ったからこそ、敗ける気がしないっスよ」
そしてディアナが、あらためて気合を入れ直す。
集まる視線の中、セフィロト丸は組み直した『ブライト陣営』の先頭へ。
敵陣も最後方の巨竜を中心に、厚い陣を組み直す。
「ギャアアアアアアアアア――――――――ッ!!」
身震いするような魔物の咆哮と共に、仕切り直しの戦いが始まった。
敵はこれまでとは違い、空域に広く展開。
そのまま各船を狙う形で飛んでくる。
「【魔砲術】【誘導弾】【フレアストライク】!」
ここでレンの、誰よりも早い攻撃が活きる。
次々に放たれる炎砲弾が炸裂し、落ちていく魔物たち。
「撃ちます!」
生き残りが射程範囲に入ったところで、まもりが狙い撃ち。
安定した戦いを展開する。
そんな中で、左側の飛行艇を狙って近づくのは大きなハルバードを持った有翼の魔物。
小型の二足ドラゴンが、武器を持ったような個体だ。
思わぬ速さで接近した『ドラゴンウォリアー』は、配下のガーゴイル兵を引きつれ、紅の翼12号艇甲板に着地。
いきなりの振り降ろし攻撃に、巻き起こる衝撃。
「「「うわああああ――――っ!!」」」
場の優劣を確定させるような、強烈な一撃を見舞った。
これに対応したのは、メイとナギ。
甲板を駆けてくる二人に、ドラゴンウォリアーは大型のハルバードを豪快に振り払う。
「【回転跳躍Ⅱ】!」
「【アクロバット】!」
同じ軌道、同じ回転で跳んだ二人は、ハルバードを飛び越えドラゴンウォリアーの頭上へ。
「【フルスイング】!」
「【ノーザンクロス】!」
そのまま手にした武器を同時に振り下ろし、一撃で打倒。
二人の攻撃を同時に受けたドラゴンウォリアーは、甲板に深くめり込んで粒子になった。
「【スピリット・イーグル】!」
同じ船の後方にもう一体。
現れたドラゴンウォリアーに気づいていたディアナは、頭上から落ちてくる鷲の霊による攻撃で先手を打った。
しかしこの個体は魔法系の攻撃に強いらしく、ダメージは僅少。
「それなら……【大狼降臨】!」
狼の霊をその身に宿したディアナは高速ダッシュで接近し、ハルバードの振り降ろしをかわして、先手の拳を叩き込む。
そこから拳打を三発。
回し蹴りを決め、反撃の払いをローリングでかわしたところに――。
「【装備変更】っ!」
メイも参戦。
【狼耳】に【肉球グローブ】をつけて、横に並んだ。
「【キャットパンチ】!」
メイの拳打が唸りを上げ、ドラゴンウォリアーをのけ反らせる。
ようやく防御態勢に入ったところで、【カンガルーキック】で防御を崩す。
ここで再びディアナが続き、拳打を三発決めると残りHPはわずか。
「【ウルフファング】!」
「【虎爪拳】!」
決めの一撃が見事に突き刺さり、二体目のドラゴンウォリアーは後方に弾かれ消えた。
メイは笑い、両手を『爪を立て』て見せるような形にしてみせる。
即座にディアナが応え、二人で「がおー」と決めポーズ。
「…………」
強烈な戦闘能力の後に見せられた可愛さに、思わず唖然としてしまうクループレイヤー。
もちろんこの二人の野生的な連携を、運営が逃すはずがないのだが、この時のメイは楽しさで気づかない。
「くっ!」
そんな中で聞こえてきたのは、飛行を維持したまま戦うガーゴイル軍団に苦戦するクルーたちの声。
得意とする『飛ぶ斬撃』は、連発が可能というやっかいな攻撃だ。
「数が多いな、面倒くせえ……!」
迫るガーゴイルを十字槍の振り払いで叩き落とし、ナギがスティック菓子をかみ砕く。
気付けば甲板全体に降りてきたガーゴイルたちはすでに、船を占拠する勢いだ。
「そういうことならっ! それそれそれーっ!」
ここでメイが投じたのは、【豊樹の種】
それから手を甲板に突き、【グリーンハンド】を発動。
「みんな一緒に、大きくなーれ!」
すると一斉に伸び上がった木々が船を飲み込み、『緑の船』が誕生。
そしてガーゴイル軍団最大の武器である『飛ぶ斬撃』が、大きく弱体化した。
得意の飛行も枝にかかってしまうため、動きが遅くなったことで戦況が一転。
「今だ! 叩けぇぇぇぇ!!」
あっという間に、ガーゴイルは駆られる側に変わった。
「こりゃ生で見るとすげーな。舞台の環境を変えちまうなんて、聞いたことねえよ……!」
「まったくっスね。メイちゃんたちが着いてから、戦局が変わり出してる……っ!」
こうして三人は、本来なら落ちていたであろう紅の翼12号艇を守り抜いた。
さらに数が多くやっかいなガーゴイルを、クルーたちに任せられる状況を作ったことで、次の敵の対応に回ることもできる。
セフィロト丸・リヴァイブの到着は確かに、戦況を大きく変えてみせたのだった。