軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1213.セフィロト丸を駆れ

ついにメイたちにも、空賊ウィンディアの飛空艇に使用許可が出た。

「そうだ。ついでに『ネハダ』の方へ行って様子を見てきてくれよ」

イスカが告げる、新たなクエスト。

「あたしたちの活動を支えてくれてるヤツもさ、もう飛行艇を完成させてるはずなんだ。名前はジャルル・アナザー」

「りょうかいですっ!」

どうやら空賊側のフロートの一つを受け取り、自ら飛行艇を作り上げた支援者に会いに行くという話のようだ。

「それでは発進しましょう」

「おーっ!」

パイロットであるツバメの声に、メイが拳を上げて応える。

「ウィンディア三号艇セフィロト丸、ツバメ――――出ます!」

二度目の発進は、もう慣れたもの。

ツバメはエメラルドグリーンが鮮やかな飛空艇を動かし、基地を出る。

今度は滝からの登場もスムーズで、まさに飛沫を跳ねながらの発進となった。

「気持ちいいわね!」

「はひっ!」

「ひ、飛行機での旅行みたいです……!」

見事な発進に、歓喜の声を上げるメイたち。

これにはツバメも、思わず笑みをこぼす。

「本日はウィンディア航空をご利用いただき、ありがとうございます」

「ふふ、飛行機のやつね」

「手荷物は上の棚、または足元にお納めください」

「あるあるっ」

「こ、この後安全のためのビデオを見るんですね」

「ネハダへは10分後の到着を予定しております、それでは快適な空の旅をお楽しみください」

「おおーっ! 雰囲気出てるよーっ」

「……Thank you for flying with Windia Airlines today」

「いや、あるけど」

少し間を空けて英語が続く『あの感じ』を再現するツバメに、笑いながら空を行く。

視界には、ネハダの位置アイコンが見える。

遮るもののない飛行艇での移動は早く、ツバメはここでも細かな飛行のあれこれを試しつつ進行。

スムーズな運転で、セフィロト丸は青空を駆けていく。

「街が見えました」

「何かが近づいてきてるよ」

ネハダまでは、あと1キロほど。

そこまできたところで、メイがこちらに近づいてくる一機の飛行艇を発見。

セフィロト丸を滞空させると、その隣につけるようにしてその飛行艇も滞空。

「キミたちがウィンディアに入ったっていう、超有望な新星だね? 僕はジャルル・アナザーだ」

所々にゴールドをあしらった飛行艇は、メイたちのものよりもスマートな姿形をしている。

ジャルルは銀色の髪を大雑把に流した、たくましい中年の男。

デニムのような素材の細いズボンに、フライトジャケットという格好が『空好き』を感じさせる。

「僕はもともと飛行型の従魔で飛ぶのが大好きでね。今回の飛行艇の話を知った時は、我慢できなかった。思わず自分で一から飛行艇を作り上げてしまったよ」

ジャルルは自らの駆る飛行艇を見上げて、「最高だろう?」と笑う。

「何より僕はずっと、従魔の飛行レースにハマっていたんだ。そこでどうだろう。僕と飛行艇でレースをしてみないか?」

「レース!?」

意外な展開に、驚きの声を上げるメイ。

「もちろん命がけの一面もあるから無理にとは言わないよ。だが空を誰より速く飛ぶ、最速の飛行艇乗りを目指すのは楽しいだろう!」

「おおーっ!」

ジャルルの勢いに、思わず歓声を上げるメイ。

レンたちも「なるほどね」と、うなずき合う。すると。

「……ん?」

メイが視線を外へ向ける。

そこに、一機の飛行艇がやってくるのが見えた。

「あれは、紅の翼ね」

するとジャルルは、こちらに向かってくる紅の翼に向き直る。そして。

「キミたちもどうだい!? 飛行艇レースに参加しないか!?」

意外な提案をし始めた。

「なるほど、そうくるのね」

「レースだって!? 次は速さで勝負しろってことか!?」

しかしナギは、早くも乗り気の笑みを浮かべている。

「どうだろう。このまま三機……いや、六機でレースというのは」

「ろ、六機ですか?」

まもりが首を傾げる。

するとさらに、ウィンディアから一機。

ブルーウィングを駆るイスカがやって来た。

それに合わせるように、兵長の乗った紅の翼の飛行艇もやってくる。

「もちろんいいぜ! こんな面白いクエスト早々ないからな!」

「いいじゃん! 私も乗るっスよ! こういう戦闘能力があまり大きくかかわらなそうなクエストくらいだもんね! メイちゃんたちに勝てる可能性があるとしたら!」

「そういうこと言うなって!」

早くも言い合う二人。

そんな中、最後にやって来たのは――――。

「もちろんわたくしも、参加させていただきますわ!」

「白夜?」

なんと六機目の飛行艇から出てきたのは兵士ではなく、九条院白夜だった。

長い薄金色の髪をなびかせながら、片手をこちらに向けたポーズでの宣言だ。

「奇遇ですわね、レンさん。わたくしもこのクエスト、紅の翼側からたどり着きましたの」

「なるほど、空に覚えありの白夜がそっちにいるのね。楽しいじゃない」

「レンちゃんっ!」

「そうね。こんなクエスト早々ないし、やらない理由はないわ」

四人はうなずき合い、ジャルルに向けて声を掛ける。

「この勝負、乗ったわ」

「乗りますっ!」

「そうでなくては、面白くありませんわね」

これには白夜も、うれしそうに笑う。

「あたしもこういうのやってみたかったんだ。紅の翼には負けないからな」

「ハッ、賊どもが。ブライト王国が誇る紅の翼の力を見せてやろう」

熱く火花を散らし合うイスカと兵長。

こうしてウィンディアと紅の翼による、飛行艇レースが開催されることになった。