軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

118.ミッションが始まります

「あの爆発、やったか!?」

グラムは欄干から身を乗り出し、ニヤリと笑みを浮かべる。

「……いえ、どうやら返り討ちにあったようです」

「なんだと?」

「あのワイバーンを落としちゃうなんて、すごいね」

「へえ、マジでやるじゃねーか」

「……ふん、思ったよりはやるようだな」

度重なる刺客の敗北。

グラムもわずかに違和感を覚え出す。

「城内に隠れて防衛するだけなら強力。みたいなスキルでも持っているんだろうな……だが」

そこに流れ出す、運営のアナウンス。

『――――ヤマト天地争乱。現時刻をもって両将軍にミッションが与えられます』

『ミッションには制限時間があり、達成できない場合は敗北となりますので、くれぐれもご注意ください』

「どうやらその運の良さも、ここまでのようだな。わっはっは!」

告げられる最初のミッション。

将軍自らが街に出て来てくるとなれば、そこを突かない理由はない。

「よーし全軍準備に動け! 慣れないミッションに苦しんでいるところを叩くのだ!」

「グラムはどうするの?」

「金糸雀と数人のプレイヤーだけ連れてミッションをこなしてくる。ローランはここで指示に回れ」

「うん、行ってらっしゃい」

こうしてグラムは、堂々と天軍城を下りて行った。

「いよいよミッションが始まるんだね」

動き出す展開に、メイはワクワクドキドキとせわしない。

『ヤマトにあふれ出した妖気を封じるため、両将軍には指定のお社へ『宝珠』を運んでいただきます』

『ただし宝珠は強力な毒性を持つため、他プレイヤーが持てば即死。半径5メートル内の自軍プレイヤーの体力も早い速度で失われます』

「……将軍の周りをとにかくプレイヤーで固めて移動ってやり方はできないわけね」

「固まって進むのは、四年前に不評だったんです」

マーちゃんは苦笑いを浮かべる。

「行き先のお社は、各軍の『地図』に表示されています」

そう言って指さしたのは、将軍の間に張られたヤマトの地図。

城から持ち出した宝珠を収めるお社までのルートが一目で分かる。

「なるほど。『どこで戦わせたいか』よく分かるわねぇ」

地図を見て、レンは息をつく。

「どうしましょうか。地軍プレイヤーに露払いをさせつつ進むか、敵軍にはこちらの行き先が分からないことを利用するなら、全く違う方向にプレイヤーを向かわせて注目を集め、その隙に少数精鋭で静かに進むか……」

「安全っていう意味では、メイが自由に動ける状況が一番だと思うのよね」

「メイさんの機動性を考えれば、一気に駆け抜けてしまう方が良さそうです」

「それは……どういう……?」

「あさっての方向に地軍プレイヤーを向かわせて、その隙に将軍が一気にミッションを片付けるって形ね。ただ、そうなると護衛がついて来られないのよ」

「まさか、護衛なしですか……?」

「そこはツバメに先行してもらうわ。一応準備もしてあるし」

「な、なるほど。では私は敵の引き付けをしておきます」

「お願いするわね。敵の武器は何より数の多さでしょうから」

「は、はいっ」

慌てて階段を下りて行ったマーちゃんは、地軍プレイヤーと共に街へと先行。

「私も続きます」

ツバメも屋根を下りて行く。

「私はいつも通り【浮遊】で追いかけるわね」

「りょうかいですっ!」

メイは将軍の間におかれた宝珠を取ると、少し遅れて地軍城を出た。

そのまま通りへ出て、辺りを見回しながら街を目指して駆けていく。

「青の腕章がいっぱいだ……」

マーちゃんが地軍プレイヤーと共に天軍の一部を引き付けてもなお、この密度。

やはり、兵力差は尋常ではないようだ。

「いたぞ!! 地軍将だっ!!」

「わあ! もう見つかっちゃった!」

哨戒に当たっていた天軍プレイヤーが声をあげ、メイは慌てて走り出す。

「橋を塞げ! おそらく地軍の社は橋を越えた先にある! そこさえ詰めちまえば一気に優位が取れるはずだ!」

イベント慣れした天軍プレイヤーの言葉に、集まってくる仲間たち。

天軍は即座に有利な状況を作り出していく。

「……あれ、あの子は確か」

そんな中、一人のプレイヤーが声をあげた。

「お、おい待て! その子に橋の有無は関係ないっ!」

いなり寿司競争に参加していた彼は、メイの偉業を知っている。

しかし、わずかに気づくのが遅かった。

「そーれっ!」

メイはそのまま川に向けて跳躍。

「【アメンボステップ】!」

橋の上で呆然とするプレイヤーたちを置き去りに、あっさり向こう岸へ。

「川を……走ってる」

一方、橋の上で呆然としていた天軍のもとには――。

「うわああああああ――――ッ!!」

【魔砲術】が、猛烈な爆炎を叩き込んだ。

「よいしょっ!」

見事に川をショートカットしたメイは、【アクロバット】で華麗に着地。

「……あ、ど、どうも」

その姿をじっと見つめていた青年と、目が合った。

「しょ……将軍だああああーっ!?」

バッタリ出くわした単騎の敵軍将に、驚きの声をあげる天軍プレイヤー。

それはちょうど橋へ向かおうとしていた、援軍の一団だった。

「う、撃て! 撃てぇぇぇぇ!!」

即座に矢と魔法が、メイに向けて放たれる。

「ええっ!? これ全部天軍なのっ!?」

圧倒的な人数を誇る天軍の規模に、さすがに驚くメイ。

「うわわわわーっ! 【バンビステップ】!」

ここで戦いを始めてしまえば、絶えることなく援軍がやってきてしまう。

メイは慌ててヤマトの街中へと駆け込んでいく。

「追え! 追えー!」

当然天軍プレイヤーたちは、勢い勇んで後を追う。

「メイさん、こっちです」

「ツバメちゃんっ」

逃げるメイの前に現れたのは、先行していたツバメ。

屋根の上から『ポイント』を指定する。

「お願いします」

「おおきくなーれっ」

今回ツバメが選んだのは、竹とシダ。

ヤマトの街並みに合った植物の並びに、違和感なし。

「えいっ」

生まれた茂みに潜り込んだメイを、完全に覆い隠してしまう。

「ちっ、足の速いやつめ! 追え! とにかく追うんだー!」

そうとは知らず、天軍プレイヤーたちはメイの前を駆け抜けて行った。

「……撒かれた種がそこにありさえすれば、【密林の巫女】で育つ。レンさんの狙い通りですね」

「へへー、ドキドキしちゃったよぉ」

シダの上からひょこっと顔を出したメイは、屋根の上のツバメに「ありがとー」と手を振ってみせた。