軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1156.vs女神

「あたしはどーも、心理戦みたいなのが得意じゃなくてさぁ。カードは合わないと思うんだよな」

普段の少しくだけ過ぎた感じではなく、ちょっと可愛く言う金糸雀。

ルーレットの卓に集まったのは、ツバメとマリーカ。

小さく可愛いツバメと、スキルで小さくなるマリーカ。

その組み合わせは、可愛いもの好きな金糸雀にとってはうれしい面子だ。

「ていうか、白目だけど大丈夫か?」

「はい、問題ありません」

ツバメ的には一度遊んでみたかったルーレットに、素直にやって来たのだが、考えてみれば運全振りに近いゲーム。

意識とは別に、本能の方が勝手に白目をむいたようだ。

「……とにかく、遊んでみる」

マリーカが椅子に腰かけると、ツバメと金糸雀も続く。

するとディーラーNPCのお姉さんが、折り目正しく頭を下げた。

それから素敵な笑みで、ルールを確認。

まずは全員で指定の『番号』か、『番号群』、もしくは『色』に賭けたところでルーレットがスタート。

当たれば、その難度に応じた倍率の払い戻しがあるというシンプルなシステムだ。

「まずは軽く、黒か赤かで賭けてみっかな」

金糸雀はそう言って、どうしようかと悩む。

「では、私は黒でいってみます」

するとツバメが黒に決め、手持ちのチップを五枚ほど賭けた。

多くはないが、決して少な過ぎはしないという額だ。

「そんじゃ、あたしも黒にするよ」

「……そういうことなら、赤でいってみる」

ツバメと金糸雀も黒、マリーカは赤で決定。

互いに賭け金は五枚だ。

「始めます」

賭け金が出そろったところで、ディーラーNPCがルーレットを開始。

番号の描かれたルーレット盤が回り出し、銀色のボールが回転を始める。

やがてボールが勢いを失い、ポケットに収まる。

三人の視線が集まった先にあったのは――。

「『5』番の赤となります」

正解はマリーカのみ。

ディーラーは『T』字の木製スティックを使って、全てのチップを回収。

その後マリーカの前に、配当を加えた形で返却した。

「……楽しい」

「いいな! 実際に目の前で見るとワクワクしちまうよ!」

「そうですね。続けていきましょう」

うなずくツバメ。

これでゲームの流れもつかんだ。

「では、私は続けて黒に」

「おっしゃ、あたしもだ」

「……それなら赤でいく」

三人はチップを出し、ルーレットでの勝負を続ける。

「なあ、ツバメんところだと誰が運が良いんだ?」

「やはりメイさんでしょうか。本人の卓越した能力もありますが、笑うとこには福来るといった感じです」

「メイかぁ。確かにあの可愛い笑顔は、それだけでもう幸せだよな」

「……アルトも、割と運はいい」

「いいな! メイとアルトリッテは、並んでるだけで幸せでいっぱいだ!」

それは完全に金糸雀の趣向なのだが、二人はうなずく。

「金糸雀さんのところは、どうなのですか?」

「うちはローランじゃねえかなぁ……なんつーか手堅いんだよな。グラムは欲かいて失敗する感じだな。運自体は結構いいのにさ」

そう言って、楽しそうに笑う金糸雀。

すると、再びルーレットが動きを止めた。

「『16』番の赤となります」

「あちゃー、ダメかぁ」

またも稼ぎをあげたのは、マリーカのみ。

「では、黒を続けます」

「なんだよ、マリーカも強いじゃねえか。でもさすがに次は黒がくるよな。あたしも黒でいくぜ!」

「……赤でいくことにする」

「『34』番の赤となります」

「おいおいマジかよ、三連続とはツイてねえなぁ」

苦笑いの金糸雀。

ツバメはさらに、チップを取り出す。

「次のゲーム、私はもちろん黒を続けます」

「そうだよな、さすがに四連続はねえよなぁ」

「……赤」

しかしすでに、結構稼いでいるマリーカは赤を選択。

その手元に並んだチップに、金糸雀は思わず息を飲んだ。そして。

「あ、あたしも今度は、赤にしてみよっかなぁ……」

ツバメが早くも安心と信頼の連続外しを見せたところで、さすがに金糸雀も、ツバメの不運力を感じ始めたようだ。

マリーカ同様、ここで赤に賭けることにする。

すると、次のルーレットの結果は――。

「『25』番の赤となります」

「よっしゃあ!」

金糸雀が、拳を握って歓喜する。

四度目にしてようやく、賭けたチップが増えて戻ってきた。

「さあ、次はどうするんだ?」

五度目の勝負。

「私は黒でいきます」

「そうなるとツバメは、五連続で黒を選ぶ形だな」

「はい。私には分かっています。ここで赤に賭けた瞬間、必ず黒がくるということを。ですが、運命の女神様にも限界はあります」

「……ツバメ?」

「いくら女神様と言えど、世界による『操作』を感じさせるほどの連続は起こすことができません。安易に奇跡を起こしてしまえば、女神様の介入がバレてしまうからです」

「ツバメ!?」

「よって女神様も必ずいつかは、黒を出さなくてはなりません」

「……なるほど、面白い」

「マリーカ?」

「……ツバメがそこまで言うのなら、私も運命の女神との戦いを見届けようと思う」

そう言ってマリーカは、多くのチップを叩きつける。

再び、赤の枠に。

「この流れだったら黒じゃねえの?」

ツバメと一緒に黒に賭ける勢いで、しれっと赤に賭けるマリーカに感嘆する金糸雀。

「オーケー、それじゃあたしも乗るぜ!」

そう宣言して、そっとチップを赤に賭ける。

回転を始めるルーレット。

二人はツバメの覚悟にあてられたかのように、息を飲む。

転がり、跳ねる銀のボール。

やがて一つのポケットに収まった。

そしてほどなくして、ルーレットの回転が止まる。

「『30』番の赤となります」

「マジかよ……」

「まだ、戦いは続くということですね」

しかしツバメは、まるで動揺していない。

すでに五連続だが、まるでこれくらいは当然といった感じだ。

「失礼しても、よろしいでしょうか」

そこにやって来たのは、静観を心に決めていたが、ついに我慢できなくなった一人のプレイヤー。

その名も、計算君。

「この戦い、僕にも見届けさせてください……っ!」

その熱い口調に、思わず金糸雀は「お、おう」とうなずいた。