作品タイトル不明
1139.死闘と闇の肉
スキアの使い魔による【エコー】と、ベリアルの【滅多打ち】による連携。
それは夜のヴァルガデーナを、まばゆく照らした。
「ウゴァァァァァァ――――ッ!!」
残りHPが3割台になり、怒りのマリアが咆哮をあげる。
すると顔部の白仮面が、さらに激しく割れた。
生み出された高さ2メートルほどの人型たちが、一斉に動き出す。
「【フルスイング】!」
「【フレアストライク】!」
すぐさま始める対応。
そんな中で、マリア本体が放つ攻撃は四連の誘導弾。
怪しい桃色の輝きが迫り、スワローがこれをかわす。
軌道を曲げた光弾は、そのまま人型たちに直撃。
輝きと共に、石像へと姿を変えた。
【強制錬金】は、敵を任意の『素材』に変えてしまうというもの。
続けざまに追ってきた人型にぶつかられた石像は倒れ、そのまま粉砕した。
「っ!」
ベリアルも迫る錬金光弾をかわす。
輝きを受けた人型は木に変わり、近くの人型の爆発に巻き込まれて燃え尽きた。
一方、爆発を逃れた個体は木化が解けているようだ。
「短時間の状態異常みたいなものね……っ!」
人型の木化が切れたのを見て、ベリアルはシステムに気づく。
木化や石像化の状態は、割と早く回復する。
しかしマリアはその瞬間を逃さず攻撃を仕掛け、一撃死に戻りを狙ってくるのだろう。
「何か来る……っ!」
マリアの動きに、人型を斬り飛ばしたばかりのワイルドが注意の声を上げる。
足元に生まれる輝きに、誰もが『液状化爆発』を予想。
しかし【足元変化】によって生まれたのは、地面から突き出す無数の金属剣。
長さ3メートルに及ぶ両刃が、入り乱れるような形で突き上がる。
「くっ!」
これを必死にかわしたクルデリス。
しかし目の前から、【錬金光弾】が迫りくる。
腕を弾かれ、左腕から腹部を中心に身体の3割ほどが木化。さらに。
駆け込んできた人型が正面から飛び掛かり、その身体を炎に変えた。
「【かばう】【天雲の盾】!」
ここに飛び込んで来たのは、シールド。
見事な防御で、クルデリスの『炎上』を防ぐことに成功。
「だ、大丈夫ですか……っ?」
「助かっちゃったなァ……こいつは、お礼だァァァァ!」
「っ!?」
驚くシールドに、向けられる刃。
二人の間にわいた人型の背を、クルデリスの短剣が貫いた。
「【降魔連砲】!」
突き立つ大量の刃は、闇を継ぐ者たちを分断した。
『開眼』中のスキアはとにかく急いで敵の位置を把握し、早めの魔法攻撃で身を守るが――。
「しまっ……」
錬金光弾に当り、下半身から右腕に至るまでが石化。
「ここ……までなのか」
そんなスキアに気づいたマリアは、金杖を斜めに振り下ろす。
そしてマリアの一撃が、石化状態のスキアに届こうとしたその瞬間。
「【裸足の女神】っ!」
気付いたワイルドが、高速移動で接近。
その高い【腕力】でスキアを抱え、金杖の一撃をかわしてみせた。
「礼を言うぞ、ワイルド」
「――――どういたしましてだ」
クールな表情で、クールじゃない台詞を口にするワイルド。
「んー?」
自分で言ってしっくりきてない姿に、うっかりスキアは笑いそうになる。
「そうだ、これを使うといい」
そんなワイルドが取り出したのは【原始肉】
「これは?」
「……闇肉だ」
「戦後の闇市で取引されてそうだな。ところでそれは何の肉だ?」
「……や、闇の鶏」
『魔獣』と答えると思ったスキアはこらえられず、笑いながら【原始肉】をかじった。
「っ!」
マリアは狙いを、【強制錬金】が腕にかすめたスワローに変更。
突き立つ金属刃をかわし、人型の飛び掛かりをかわしたところを狙われた。
地を擦り、振り上げられる金の杖。
その先端は鋭く、人型たちが次々に斬り飛ばされていく。
左腕を銀に変えられた状態での的確な回避は難しく、ダメージは必須の状況だ。
「ここです……!」
しかしスワローは、攻撃のできなくなった腕を使い、杖の攻撃を防御。
砂煙をあげながら後方に転がったものの、金属と化した腕を使った防御によって、ダメージの大幅減に成功した。
「うまい……!」
【強制錬金】による状態異常を切り抜けるため、盾にできる民家付近まで下がっていたベリアル。
スワローの防御に思わず声をあげた、その直後。
「っ!?」
その家々が、突然気化して爆発。
思わぬ威力を持つ余波に、転がった。
マリアはここから【錬金爆破】を連発。
突き立った無数の金属刃を、次々に炎上させていく。
「【光刃】【闇刃】!」
迫り来る人型の波に対し、クルデリスは二刀流で対応を続ける。
そんな中を突き進んでくる集団は、一回り動きの速い人型の集団。
「っ!?」
手前の人型を飛び越え、一斉に飛び掛かってきた集団は『液体』に変化。
そのまま豪炎を巻き起こした。
「【シンバル】!」
巻き込まれる形になった爆炎を、シールドが吹き飛ばす。
「【装備変更】! とっつげきー!」
マリア本体は、人型を吹き飛ばしたワイルドを狙って金杖を振り下ろした。
これをワイルドは、【鹿角】によるパリィで弾く。
防御のために使ったスキル。
続く攻撃は期待していなかったワイルドだが――。
「【殺到】!」
この隙を見て、駆け出したのはクルデリス。
「【悪鬼羅刹斬】!」
二連続の大型斬撃で、マリアに深い傷を刻み込んだ。
すると大きく下がったマリアは、即座に反撃を開始。
振り払う右腕が全て『血液』に変わり、刃となる。
「ここだァッ!!」
迫る幾筋もの血刃を、クルデリスは全力の集中で回避した。
続く左腕の攻撃は、『払い』ではなく『突き』出し。
血液になった左腕から、発射された散弾のような血液弾が迫る。
回避は不可能と判断、防御を取ったが威力は高く転倒。
受けたダメージによって、HPが3割を切った。
「【加速】【リブースト】」
スワローは、駆け出していた。
その動きに気付いたマリアは、腕を再生するよりも先に大きな人型を三体、縦の並びで生み出し【人壁】とする。
「思った以上に早い、体勢の回復……しかし」
それを見たスワローは、武器を【村雨】に変更。
「クルデリスさんの作った隙は、無駄にしません――――【水月】!」
突き出した水の刃が【村雨】の水系スキル強化によって、大きく延伸。
今まさに生み出された大型を三体まとめて貫き、さらに本体マリアにまで切っ先を届かせた。
人型がまとめて爆発し、巻き起こる大量の爆炎。
引火した付近の人型が、金属の刃が誘爆して消える。
「クルデリス!」
倒れたままの姿を見た、スキアが叫ぶ。
するとクルデリスは、ゆっくりと立ち上がる。
ポタポタとこぼれる血は、頭から。
「キヒヒヒヒ、最高だよ……痺れるねェ、こういう展開さァァァァ!」
笑いながらそう言って、口から出る一筋の血を手首で拭った。
「すごい……っ!」
「はいっ!」
アイテム【血のり】を使って、こぼれる血をものともせず立ち上がる、狂気の戦闘キャラを見事に演出。
ワイルドとスワローが、その目を興奮に輝かせる。
「まったく、芸が細かいわねぇ」
ピンチでも、隙あらばネタを持ち出すクルデリス。
これにはベリアルも苦笑いだ。
「30メートル斬撃も驚いたが、こんな派手な串刺しも初めて見たぞ……!」
「すごすぎる……っ!」
ワイルドたちの常識外れな戦いを前に、「もう狂化してる?」とばかりの興奮を見せる掲示板組。
そんな中マリアは、ゆっくりと体勢を立て直す。
そして両手を開くと、魔法陣が輝き出した。
流れる輝きは、町に残ったたくさんの石像から吸収された魔力。
増強した魔力によって生まれた人型は、これまで以上の凶暴さで迫り来る。
「【アクロバット】!」
「【紫電】!」
ワイルドは見事な回避で敵を翻弄し、剣で斬り払う。
スワローは【紫電】でまとめて動きを止め、クルデリスの回避も援護。
直後、放たれた【腕飛ばし】は液体の量が増え、爆発も豪快なものとなった。
「敵の火力が、これまでとは違うねェ!」
直前の【紫電】が活き、クルデリスは早い動き出しで回避に成功。
しかし、ここで放たれたのは【悲魂の咆哮】
「ボウォオオオオオオオオ――――ッ!!」
「「「ッ!?」」」
さらに範囲と発生を高速化した攻撃に、まとめて動きを止められた。
マリアは腕を巨大化し、【金腕叩きつけ】を放つ。
「ああああああ――――っ!!」
「スキア!」
叩きつけられた巨大な黄金の腕に弾かれ、スキアが転がる。
さらに腕は即座に液体化し、爆発。
「きゃああああ――――っ!!」
「ベリアル!」
巻き込まれたベリアルのHPは5割強。
スキアの残りHPは、2割強にまで減少した。
起き上がりを狙い撃つ一撃は、強力になり加速した【強制錬金】弾。
再びの危機。
しかしスキアは逃げず、杖をマリアに向けた。
「「ッ!?」」
相討ちを狙うのかと、驚きを見せるシールドとスワロー。
【強制錬金】は直撃し、ここで再びの『石化』となるはずだったスキア。だが。
「【万魔の眼光】!」
「なるほど、【原始肉】の効果ね!」
反撃となったスキアの魔力光弾は、マリアを次々にかすめて体勢を崩す。
生み出した隙。
そしてこの流れを予想していたワイルドは、その手を高く上げていた。
「――――それでは、よろしくお願いいたしますっ!」
魔法陣から現れたのは、二本の長剣を手にした暗黒剣士クマ。
華麗に走り出して、跳躍。
満月の輝きに照らされながら、灼眼を解放。
二本の剣に、闇のオーラをまとわせる。
そしてその妖しい輝きが全開になったところで二本まとめて剣を捨て、『グレート・ベアクロー』を叩き込んだ。
暗黒魔導士小クマと共にポーズを決め、クールに去っていく親子グマ。
メイはクールな面持ちのサムズアップで見送った。
「ワイルド、闇肉には助けられたぞ」
「こちらこそだ」
「「――――サンキュー」」
ついに「サンキュー」と、言い出したスキア。
二人が決めた笑顔で視線を合わせれば、それなりに雰囲気は出る。
こうして倒れ込んだマリアは、残りHPが1割を切った。